28 / 30
初夜の翌朝隣を見たらもぬけの殻だった攻めの話
3-6
しおりを挟む
「色々言いたいことはあるけど……」
俺はそこで言葉を途切れさせた。直巳が着ているジャケットが、俺があげたものだと気づいたからだった。
ソファの端っこで小さくなっている直巳の隣に座ると、怯えたように彼の肩が跳ねる。
怯えるなという方が無理な話だ。そう仕向けたのも俺。分かっている。それでも、直巳にだけは拒絶されたくなかった。
「こっち向いて、直巳」
聞きたいことはたくさんある。
いつから計画していたの。もしかして結婚式を頑なに拒否していたのはそのせい? 婚約者だった頃の7年間、君は何を考えていたの。
「どうして、俺の前からいなくなったの」
それなのに、俺の口から出てきたのは、途方に暮れたような頼りない声だった。
直巳の瞳が大きく見開かれる。薄い唇が、音もなく俺の名前を形どった。
俺があげたものをまだ着てくれている憎らしくて可愛い子、俺はまだ、期待してもいいの。
「俺のこと嫌いになった?」
「きら、い」
試すようなことを言ったのは敢えてだった。好きだと言ってくれなくてもいいから、せめて嫌いじゃないと言って欲しかったのだ。
俺は祈るような気持ちで直巳を見た。限界まで見開かれた瞳に薄らと膜が張る。あ、と思った次の瞬間、大粒の涙が一粒こぼれて俺はギョッと目を見開いた。
直巳はズボンに作ったシミを呆然と見ている。その間にも涙はとめどなく流れていて、俺はオロオロと周囲に視線を走らせた。
「ああ、泣かないで、なお」
泣く子のあやし方なんて知らない。とりあえず背中を撫でると、直巳は背中を丸め、声を上げてさらに泣き出してしまう。
ますますどうしたらいいか分からなくなった俺は、直巳の両脇に腕を差し込むと腕の中に抱いた。昔、こうやって小さい子があやされていたのを見たことがあった。恐る恐る背中を撫でると、直巳はぐずぐずと鼻を鳴らしながら俺の肩口に顔を埋めた。俺に身体を委ねるようなその仕草に、空っぽの器が満たされていくような気がした。
ちゃんと教えて。嫌だったことも、どうして泣いているのかも。俺は君をちゃんと愛したい。俺は直巳の頭を撫でながら、そっと囁いた。
「め、恵さんが好きな子がいるってえっ……!」
「……、………………俺ッ?!」
今ならちゃんと受け入れられると思ってそう言ったのに、直巳の口から出てきたのは予想外の言葉で、俺は思わず直巳の肩を掴んで顔を覗き込んでしまった。
直巳はきょとんとした顔で俺を見ている。その顔に嘘をついている様子はない。というか、そもそも直巳は俺に隠し事はしても嘘はつかない。
彼の着ているジャケットを見た時からもたげていた期待が、徐々に確信に変わっていく。
俺のことが好きだと泣く愛しい子に、許されたような気がした。
「好きだよ、直巳」
だから全部、やり直そう。
俺はそこで言葉を途切れさせた。直巳が着ているジャケットが、俺があげたものだと気づいたからだった。
ソファの端っこで小さくなっている直巳の隣に座ると、怯えたように彼の肩が跳ねる。
怯えるなという方が無理な話だ。そう仕向けたのも俺。分かっている。それでも、直巳にだけは拒絶されたくなかった。
「こっち向いて、直巳」
聞きたいことはたくさんある。
いつから計画していたの。もしかして結婚式を頑なに拒否していたのはそのせい? 婚約者だった頃の7年間、君は何を考えていたの。
「どうして、俺の前からいなくなったの」
それなのに、俺の口から出てきたのは、途方に暮れたような頼りない声だった。
直巳の瞳が大きく見開かれる。薄い唇が、音もなく俺の名前を形どった。
俺があげたものをまだ着てくれている憎らしくて可愛い子、俺はまだ、期待してもいいの。
「俺のこと嫌いになった?」
「きら、い」
試すようなことを言ったのは敢えてだった。好きだと言ってくれなくてもいいから、せめて嫌いじゃないと言って欲しかったのだ。
俺は祈るような気持ちで直巳を見た。限界まで見開かれた瞳に薄らと膜が張る。あ、と思った次の瞬間、大粒の涙が一粒こぼれて俺はギョッと目を見開いた。
直巳はズボンに作ったシミを呆然と見ている。その間にも涙はとめどなく流れていて、俺はオロオロと周囲に視線を走らせた。
「ああ、泣かないで、なお」
泣く子のあやし方なんて知らない。とりあえず背中を撫でると、直巳は背中を丸め、声を上げてさらに泣き出してしまう。
ますますどうしたらいいか分からなくなった俺は、直巳の両脇に腕を差し込むと腕の中に抱いた。昔、こうやって小さい子があやされていたのを見たことがあった。恐る恐る背中を撫でると、直巳はぐずぐずと鼻を鳴らしながら俺の肩口に顔を埋めた。俺に身体を委ねるようなその仕草に、空っぽの器が満たされていくような気がした。
ちゃんと教えて。嫌だったことも、どうして泣いているのかも。俺は君をちゃんと愛したい。俺は直巳の頭を撫でながら、そっと囁いた。
「め、恵さんが好きな子がいるってえっ……!」
「……、………………俺ッ?!」
今ならちゃんと受け入れられると思ってそう言ったのに、直巳の口から出てきたのは予想外の言葉で、俺は思わず直巳の肩を掴んで顔を覗き込んでしまった。
直巳はきょとんとした顔で俺を見ている。その顔に嘘をついている様子はない。というか、そもそも直巳は俺に隠し事はしても嘘はつかない。
彼の着ているジャケットを見た時からもたげていた期待が、徐々に確信に変わっていく。
俺のことが好きだと泣く愛しい子に、許されたような気がした。
「好きだよ、直巳」
だから全部、やり直そう。
417
あなたにおすすめの小説
帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。
志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。
美形×平凡。
乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。
崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。
転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。
そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。
え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる