聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

山田みかん

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ちょっと正義のヒーローをやってみる

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「‥‥‥‥おにいちゃん、こわいよう」

 しがみついてか細い声で泣く妹を、落ち着かせるように撫でるが、状況は絶望的であった。
 ほんの数日前までは、普通の村で野菜などを育てながら細々と暮らしていた。
 俺と妹はそんな両親の手伝いで、薬草を摘みに村の外に出ていたのだ。
  そこでアイツらに襲われた。
 妹は視力が弱かった。まったく光が見えない訳ではないが、物を判別できるほどではない。自然と家にこもりがちになるが、気分転換しようと自分が連れ出した。
 後悔で自然と涙が出る。俺が連れ出さなければ、妹は両親の元に居れたのに。
 
 俺は殺されると思ったが、コレでも需要があるとかで、一緒に拉致された。
  押し込められた場所には他にも女の人達や子供達もいて、数日のうちに更に増えた。

  俺達を救助するためか、冒険者達の集団と戦闘になったが、そこに現れたのは魔獣を引き連れた神官と思われる男だった。
 あいつは布教の旅をしていると村に現れた奴だ。
 たまたま外にいた妹に触れようとして、俺が連れ戻した。

───そのあと怪しい奴だと村人から追い出されたのに、こんなところにいるなんて。 

  奴は、魔獣を操り、冒険者達を笑いながら絶滅させた。
 
  反抗する意思を無くす為だろう、俺達は地獄絵図を見せられている。
 薄気味悪い顔でこちらを見て笑っていた。

 今奴らは宴会に夢中だ、俺達に気を払っていない。しなくても、周りは魔獣だらけで動くに動けないのだが、戦闘の名残で冒険者の剣が自分達の近くに落ちている。なんとかそれを手に入れようとしていた。なんとしても妹を守る────「あ、ちょっ!」

 俺は、見えない壁にぶち当たって目を回した。



 捕まっている人達がいる所に遠回りながら近付いていくと、そこには女の人と年端も行かない少年、そして子供達。
 うわ~テンプレ過ぎて引く。
 この世界もそういうのがあるのね~。みんな気力がないのか、暗い顔で座り込んでいる 

「え~と取り合えず、『隠蔽結界』────あっちょと!」
 
 ゴインッと一人の少年が結界にぶつかってしまった。
 
「ゴメンね少年。まさか飛び出そうとしてるとは思わなかった」

 突然現れた自分達に、ビクつく女の人達。ゴメンね~こわくないよ~。あ、シロ君が怖いのかなって思ってたら、賢いシロ君はピシっとした姿勢でお座りした。フサフサ尻尾をパタパタされているのはポイント高いぞ。

 「向こうからは見えないから、大丈夫よ」

 にわかに信じられないのか、警戒心が強い。どうしよっかな?そうだ、とりあえず壁にぶちあたった少年を分かり易く治療しよう。

 『治癒』とワザと声を出して、キラキラエフェクト付きで、おでこに出来た見事なたんこぶを治す。目を覚ました少年は、妹と思われる子に抱きつかれてびっくりしてる。
 その様子に、少し警戒心を解いてくれたらしい気配を感じて、再び大人の人達に話しかける。

「私たちは通りすがりの者だけど、貴方たちはアイツらに捕まってるて認識でいい?」

   向こうからは見えないから、動いても大丈夫だよ。と伝えると、戸惑いながらも皆無言で肯定した。

「帰りたいんだよね?」

 その一言で、皆ザワッとこちらを見るが、男たちを気にして声に出さないが、皆がうなづく。

「‥‥‥‥ちょっと待ってくれ」

 女の人達の中で、寝転んでいた人が体を起こす。この女の人ともう一人は、他の人達と服装が違った。冒険者ってやつかな?しかも二人だけ、やけに傷だらけで痛々しい。

「親切心で言ってくれるのはありがたいが、私ら含め逆らった者は腱
 フォンっと今度はエフェクト無しで『治癒』を広範囲に展開した。
 ぶわっと風が通り過ぎたと思ったら、傷ついた跡がないことに皆、驚愕する。
 ついでに気力も追加しました。ふふん、『桃ちゃん』無しでもこれぐらいはできるようになったのだ。

「‥‥‥‥こんなヒール見たことない」

 確認は後にして、取り合えず移動しましょうや。と同意を得ると、今度は宴会場の男たちが騒ぎたした。身構える女の人達だが、騒ぎの元はこちらではなく、駆け込んできた下っ端のようだ。

「頭っ!大変だっ!砦の騎士団が俺等の討伐に出やがった!」

 にわかに騒めき立つ男等の中で、ローブを着た男が突然立ち上がる。

「都から放逐された騎士団など恐るるに足りずっ!───何といっても我は『アンへ・ファータ』様の下部なのだからなっ!!」

 ─────ああ゛ん?あっそう。ほ~ん、そっかそっか(ぴきっ) 
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