聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!

山田みかん

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ちょっ!待てよ!

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 あの後土にめり込んだ二人共々、突然現れた母さんフェンリルに、しこたま怒られた。
 自分達がめり込んだ穴の中で、二人揃って正座での説教タイム。
 不必要に森を荒らすとは何ぞや!、穴をボコボコと開けすぎだ!と延々と言われた。
 そして母さんフェンリルの説教には必ず「 雑 !」「 美しくない! 」がもれなく付いてくる。
 蚊帳の外であるシロ君はだらけていた姿はどこへやら、いつの間にかキリリンっ!と座り直しているし、おっさんは唖然とした様子でこちらを凝視しているが、三つ子ちゃん達に制覇する山のごとく、よじよじと体を登られている。
 ‥‥‥‥ナニソレちょっと羨ましいんですけど‥‥‥‥そしてママ‥‥そろそろ足が限界なんですけど‥‥‥‥。  

「派手にやったがまあ、不測の事態に対応したのは良しとしよう」

─────やった!お説教が終わりそう! と腹の中で歓喜を上げた次の瞬間、かわいい特大爆弾が投下された。

『きゃう!きゃうきゃうきゃう(かあたま!ぼく、この人にちゅいていっていい?)』

「 え 」

「 ええっ! 」

「───── へ、何? いや、ちょっと待てゃ!」

 いつの間にかよじ登ってきた小さなモフモフ毛玉に翻弄されていたアルヴァレスは、再びリオに強襲された。

 元騎士団長としてのワシは、人より濃い密度の経験をしてきたと自負していたのだが、世の中にはまだまだ経験しえない事柄があるものだと、目の前の光景を眺めながら思った。
 いや、引退後の今の方が密度が濃いのではないのだろうか‥‥‥‥。
 片足が無くなってしまった時には、これまでかと諦めに似た境地だったが、嬢ちゃんに足を生やされ、今まで欲しくとも手に入れられなかった従魔が現れ、名も知らない高位の神の姿も見た。 そして今現在、伝説であろうフェンリルの子供にもて遊ばれ、人語を話すフェンリルが目の前にいる。
 この歳になって経験した事がない事が、立て続けに続くのう。‥‥‥‥しかし。

「のう、シロ兄者よ。お主の母親はリオより強いのか?」

「─────わふ!(当然だ!)」

 何があったのかはここから距離があるので詳細は解らないが、異国から来たであろう規格外の人物は、シロの母親であろうフェンリルの前足の下に、踏まれていた。
 そしてアルヴァレスの方は母親フェンリルに眼前まで詰め寄られ、ジロジロと全身を隈なく検分されている様子。
 頭にチビっ子フェンリルが一匹乗っかったままの姿で、アルヴァレスの奴は硬直したままだ。さぞかし今のあ奴は生きた心地がしないのであろうなぁ‥‥‥‥。
 あの場にいるのが自分でなくて良かった、と心から思える光景だ。

  そしてその緊張感を邪魔するかのごとく、両手両足をうごうごさせているリオのその姿は‥‥‥‥。

「なんじゃか、アレの様じゃのう‥‥‥‥」

「‥‥‥‥わふ」

「いやぁぁ~!ママぁ!そいつ殴らせてよ~」

 ─────リオの叫び声が森に響き渡った。
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