「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」

星井 悠里

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47.すっぽり。

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 たまにコーヒーを飲む時に動くだけで、オレは読書、瑛士さんはパソコンと、たまにスマホ。
 お互いには特に構わずに、しばらく無言でずっと過ごした。

 疲れた、と思って、コーヒーを飲み干す。もうすっかり冷たい。淹れなおそうかなと、瑛士さんの方を見ると。すぐ気づいた瑛士さんが、オレを見て、ふ、と目を細める。

「――」

 なんだかマジマジと見つめてしまう。綺麗すぎだなぁ、この人。人の見た目なんて関係ないと、基本的に思ってるのに、オレ。ダントツで良すぎて、なんかこの人だけ、異色の存在すぎて、すごい。――この顔で、そんな風に、優しく見つめちゃうのは、ほんと、良くないと思うくらい。勘違いする人、多発しちゃうよね。

「……コーヒー、おかわりします?」
「うん」
「お仕事しててください」
「――ありがとう」

 また微笑む瑛士さん。
 瑛士さんのマグカップも持って、キッチンへ。淹れなおす準備をしていると、瑛士さんの電話が鳴った。

「ああ、京也さん。――ん。あーそっか。うん。分かった。じゃあそれでいいよ。ありがと。よろしく。あ、今、凛太の方にいるから」

 あ、楠さん、また来るのかな。
 電話を切ると、そのまま、瑛士さんは、パソコンに向かってる。

 大きな窓から空が目に入る。なんか、色、綺麗だ。

 コーヒーメーカーをセットしてから、窓を開けて、ベランダに出た。風が中に入りそうなので静かに窓をしめて、手すりに手をかける。

 この建物が一番高くて、ここが最上階だから、視界を遮る建物が無い。
 空が広い、だけなら、田舎に行けば広いと思うけど。――ここから見る景色はちょっと違う。すっごく上から、下の世界を見てる感じがする。なんならちょっと、異世界だ。
 
 ――なんか。この、景色だけでも。
 瑛士さんとは、住む世界が違うなあって、思う。

 風が強い。そりゃこんな高層階だから、当たり前。寒いな。入ろうかな。
 でも、少し陽が落ちて――綺麗だなあ。紫色と黄色が混ざったような。紫、かぁ……。

 また、びゅう、と、音を立てて、冷たい風が吹き抜けていった。髪が乱れて、着ていたシャツが波打つみたいに音を立てる。わぁ。高いとこんな風に風が吹くんだ。と思った瞬間だった。

 ふわ、と肩に暖かいものがかかって、包まれた。

「え」
 振り向くと、瑛士さん。オレにブランケットを掛けたまま、肩に手を置いて押さえてくれてる。ソファに置いてあったやつだ。

「あ。ありがとうございます――」

 言った瞬間、風が強く吹く。ぎゅ、と胸の前でブランケットを合わせて押さえた。

「窓開けたの気づかなかった? 驚いた顔してた」
「風が強くて」
「ブランケットも飛んじゃいそうだね」
「ですね、中、入りましょ」

 瑛士さんがクスッと笑ったと思ったら――後ろから、ブランケットを巻いたままのオレを、ぎゅーと、抱き締めた。
 体格差、すごく感じる。完全にすっぽりで、もう絶対飛ばなそうだし、風もガードされてて、なんだかすごく暖かい。

「――戻ってもいいんだけど、綺麗だから、少しだけ」
「――」

 耳元で、笑みを含んで、囁く声。
 なんだか、胸が、きゅ、と縮んだ。


「――??」
「どした?」
「あ、いや……なんか……痛くて」
「痛いの? どこが?」
「あ、いえ……大丈夫、みたいです」

 なんだろ。胸と言うか、胃かな? なんか、体の真ん中あたり。

「――あっちが海だよ」

 指さされた方を見て、目を凝らすけど。

「んー……ここからだとわかんないですね……」
「そうだね……今度、海、行こうね。夕方とか夜の海、綺麗だから」
「瑛士さんが、忙しくない時に」
「凛太も忙しくない時?」
「……二人とも暇な日、ありますかね?」
「時間作って、行こうね。往復二時間くらいあれば、いいし」
「――はい」

 オレは手すりによりかかってる。瑛士さんは後ろから、ブランケット越しに、ぎゅうってしてくれてる。オレの胸の前あたりに回ってる腕が、やたらあったかい。

「瑛士さんて……暖かいですね。やっぱり、筋肉って、熱、ありますよね」
「……凛太は、なんか、冷たいなぁ……もうちょっと太ろうね。筋トレもさ、緩いのしようよ」
「ふふ。はい」

 頷くと、「ほんと細くて冷たいなぁ……」と、抱き締められる。
 ……わぁぁ。なんか。おっきいし、なんか、なんともいえない感じ。瑛士さんて、オレのこと、子供だと絶対思ってるに違いない。

「なんか……もうすっぽり埋まっちゃいますね……」
「そうだね、オレ、でっかいからね。凛太、ちっちゃいし」
「いや、あの……オレ、百六十八くらいはあるのですけど」
「百八十ちょいかな……」
「絶対瑛士さんが、大きすぎるんですよー」
「ん」

 耳元でクスクス笑う瑛士さん。
 なんかちょっとくすぐったく思いながら。

 目の前の夕陽が綺麗で、目を細めてしまう。

 
「夕日の色――すごく綺麗ですよね」
「ん? ――ああ、そうだね」

 ――紫。瑛士さんの瞳みたい。
 そう思ったけど。なんとなく、言わなかった。



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