49 / 142
49.子供?
しおりを挟む「でも、なんでそんなに真っ赤?」
すり、と頬を撫でられて、オレの頬よりは冷たい手が、ちょっと気持ちいい。
「なんか……離さなかった、とか……ちょっと恥ずかしいなって思って」
「寝てたんだから気にしなくていいよ。つか、可愛かったし」
クスクス笑う瑛士さんは、また目を細めてオレを見つめる。その手首をがしっと掴むと、つかつかとテーブルの方に行き、楠さんは瑛士さんを座らせた。
「――とりあえず仕事の話をしましょう」
「……どーぞ」
「やる気出してください」
「……はい、どうぞ」
変なやり取りをした後、苦笑してから二人は、仕事の話を始めた。
でももう結構良い時間。オレは、コーヒーを飲みつつ、夕飯の準備を始めることに。
鍋に昆布と水を入れて、出汁をとる準備と、お米を研いで、炊飯器をセットした。
今日は瑛士さんのリクエストで、だし巻き卵と、鯖の味噌煮、キュウリの浅漬けと、おみそ汁を作ることになったから……。
先に浅漬けのみりん。火でアルコールを飛ばして粗熱を取る。その間にキュウリに塩を振って、まな板でコロコロしてから乱切り。調味料とキュウリを入れて、モミモミする。ごま油ちょっと多めが好き……で、冷蔵庫へ。
サバは切れ目を入れて湯通して水をふき取っておく。二十分位あれば焼けるからこのままおいといて――。
あっ、きんぴらも作ろう、と思いついて、せっせと下ごしらえをしていると、話を終えたらしい二人が立ち上がった。
「今日のメニューはなんですか?」
楠さんに聞かれて、いったん包丁を置いてから、カウンター越しにメニューを話すと、美味しそうですね、と微笑む。
「瑛士さん、食べる時は食べるけど、適当な時はほんと適当なので――栄養取らせてもらえると助かりますね。でも大変だったら、無理しなくていいんですよ。食事作りは、もちろん契約には入れてないですし」
契約には。ん、まあそうだけど。
――契約。うん。そうだ、契約書も、ちゃんと正式にって言ってたっけ。
「オレも、母親が亡くなってからは、適当だったのですけど……食べてもらえるの楽しいので、大変とかはないです」
そう言うと、楠さんは、ふ、とまっすぐにオレを見つめた。
「――凛太くんが楽しいなら、もちろん、いいんですけど」
くす、と笑う楠さんに、はい、と笑い返すと。
「――なんか京也さん、凛太に優しいね」
「……は?」
すごく嫌そうに、楠さんは瑛士さんを見た。
「その言葉、瑛士さんには言われたくないのと――私は、基本皆に優しく接してますが?」
「そうだけど、なんか――凛太、可愛がってる?」
「ほんと、その言葉、瑛士さんには言われたくないですけど……」
呆れたように息をついて、ちらっとオレを見る。
「まあ……なんとなく、瑛士さんが可愛がる理由、分かりますけど」
そう言う楠さんに、瑛士さんは何でか、ちょっとムッとしてる。
「瑛士さんや楠さんから見たら、オレなんて、すっごく子供ですよね」
まあ年も下だから、仕方ないとは思うのだけど。
ふ、とため息をついてしまった時。楠さんは首を傾げた。
「凛太くんが、子供っぽいから、可愛いって言ってる訳じゃないですよ?」
「――」
「まあ確かに若いなとは思いますけど」
クスクス笑う楠さん。瑛士さんも、オレを見ながら、「子供だからとか、そんなこと思ってたの?」と微笑むと、オレの隣に歩いてきた。
「なんか一生懸命で、それが可愛いし。――いい意味で、すごく、面白いからだよ」
よしよし、と撫でられる。
「撫でられた時の、その顔が、可愛くて」
「……どんな顔してますか?」
「――嬉しそう」
ふふ、と笑う瑛士さん。ええ……そうなの??……オレが固まっていると。
楠さんはため息をっいた。
「ですから、接触禁止です、瑛士さん」
「いいじゃん、頭撫でるくらい」
「後ろから抱き締めるのはやめましょうね」
「というか、寒そうに震えてて、もう小動物みたいだったんだけど。抱き締めるでしょ、可愛くて」
「瑛士さん、可愛い可愛いって、どんだけ言ってるか、自覚ありますか?」
「――まあ少しはあるけど」
「ちょっと一回、拓真さんにも来てもらいましょうね」
「――あいつ、うるさいから、いいよ」
苦笑の瑛士さんに笑いながら、ふと楠さんが瑛士さんを見つめる。
「瑛士さん、とにかく会長と話を早くして頂かないと、式のことなど全部、本格的に進められませんから」
「分かってるけど、忙しいって」
「結婚の話だとは言ったんですか?」
「いや。会う時に話そうと思ってて――だって電話で言ったら、何て言われるか……押しかけてくるよ……」
「結婚と言ったら確かに飛んできそうですけれどね。その方が早くていいかもです。とりあえず、大事なお話だと、もう一度伝えてください」
一つ聞きたくて、その話が終わるのを待っていたら、気付いた瑛士さんに「ん?」と聞かれる。
「会長って、おじいさんなんですか?」
「ああ、そう。オレがCEOって言っても、初だし、経験の浅さは、じいちゃんがフォローってことで決まったから。重要な決定とかは、まだまだ完全にじいちゃんだし。まあ、一線は退いたけど、まだまだ、元気に飛び回ってるよ」
なるほど。
瑛士さん、似てるのかな。
似てたら、超カッコいいおじいちゃんなんだろうなあ。
なんて想像すると、ちょっと会うの楽しみ。
2,117
あなたにおすすめの小説
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました
こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。
志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。
美形×平凡。
乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。
崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。
転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。
そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。
え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる