「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」

星井 悠里

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83.とりとめもなく。

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「この空気感、久しぶりだな」

 雅彦さんが楽しそうに笑う。

「そういえば、昔の瑛士も、ここに座りたがったの、思い出した」

 そうだっけ? なんて瑛士さんは笑ってるけど。

 今オレ、瑛士さんの子供の頃と、今のオレ、一緒に並べられたような。そう考えると、ちょっと自分で笑ってしまう。そういえばオレ、昔もここに座ったような。あれれ。成長してない? 
 でも、久しぶりだし。やっぱりここがいいなと、思ってしまう。
  
 イルカショーがまだ始まらないから、レインコートのフードはかぶってないので、席の後ろの人達や周囲の人達から、顔は見えてるわけで――空いてるど真ん中の席に座ってる、瑛士さんたちはやっぱり目につくらしく、視線が飛んできてる。芸能人、とかいう言葉が聞こえてくるのは、きっとこの二人のことなんだろうなと思いつつ。

 オレは、目立つのは苦手。人の視線、あんまり向けられたくない。
 だから、この二人みたいに、いつも視線を集めてる人達って、どんな気持ちなのかなぁと思う。

 見られるの好きじゃないから余計、人の視線に敏感というか。隣にいる瑛士さんたちへの視線も気になっちゃうのだけど、瑛士さんたちって動じない。あんなにあからさまな視線をなげられててもへっちゃらというか。うーん。なんというか。カッコイイ……。

 一応オレも、他人の容姿の優劣くらいは分かる。世間から見て良い方なのかくらいの認識は持ってはいる。……持ってはいるけど、でも、ちょっと目鼻口の形や配置が違うだけで、基本的な作りとしては、人類皆ほぼ同じ、なんて思うレベルで興味なくて、むしろ大事なのは中身だよね、みたいなこと、思ってたのに。

 なのに、瑛士さんて。見つめてるとほんと、感心するくらい綺麗というか。

 しかもとっても、謎なのが。
 最初見た時も整ってるなぁとか、イケメンさんだなぁとか思ったけど。
 なんだか一緒に居れば居るほど、よけいに、キラキラして見えてくる、というか。

 なんだろうな。
 見慣れていくんじゃなくて、ますます眩しい? 
 よく分からないけど、とにかく、すごいなって思う。

 人の容姿に全く興味がなかったオレですらこんな風なんだから。
 もともとカッコいいとかに惹かれる人達にとったら、もっとなんだろうなぁ……。

 とか、なんだかとりとめもなく、いろいろ考えていたら。
 「こんにちはー」と言いながら、ステージに二人の人が出てきて、イルカのトレーナーさんだと自己紹介をしている。それが終わると、奥の水槽との扉が開いて、こちらの水槽に入ってきたイルカが、水槽の中を泳ぎ出した。
 
「あ」

 イルカ、めっちゃくちゃ、速い。

 わー、目の前で見るの、すっごい久しぶり。
 ここ、ほんと近い。こんなに近くで見れるなら、全然びしょぬれになってもいいかも。なんて思う。

「すっごい嬉しそう」

 隣の瑛士さんに笑われて、なんだか喜んでいるのがバレバレすぎて、ちょっと恥ずかしい気持ちもあるけど、もう嘘ついてもしょうがないので、はい、と頷くと。

「今までで一番、嬉しい顔かも」

 瑛士さんは楽しそうに笑う。オレ、瑛士さん、雅彦さん、と並んでいるので、瑛士さんの方を見ると雅彦さんの顔も見えるのだけれど。雅彦さんも、かなり楽しそうな顔で、速いイルカを目で追っている。

「雅彦さんも瑛士さんも、楽しそうですね」

 ふふ、と笑いながら言うと、瑛士さんは、ん、と一回黙ってから、ははっと笑った。

「オレは、凛太がすっごいワクワクした顔してるから余計。凛太が楽しそうだと、オレも楽しい」

 またそういう……なんだかとっても、嬉しく感じるようなことを、さらさらっと言う。
 モテるのって、こういうとこだと思うんだけどなあ。瑛士さん。

 CEOになってから余計に、とは言ってたけど、それってむしろ結婚を見越したお誘いが増えたってだけで、もっと前から、瑛士さんを好きな人なんて、絶対たくさん居たんだろうし。
 そういえば、昔は遊んでたとか、言ってたな。あ、そういえば。お互い割り切った人としか会ってない、とかも言ってたっけ。眠れなかったりして最近ご無沙汰とかも……。ふむ。

 最近、オレと一緒によく寝てる、ような気がするから。そしたら、会うのとかも再開するのかな……。


「――――……」

 んー。
 ……まあ……あるよね。きっと。
 αはそういう欲、強いって、聞くし。

 外向けに婚約とかしたとしても……割り切った人、とかなら、秘密でいけるのかもだし。

 あるよねぇ……と思いながらも、なぜか。

 なんだか、急に、みぞおちの辺りが……??





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