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86.嬉しい……?(1/2)
しおりを挟む大水槽が順路の最後だったので、ショップにはすぐに辿りついた。
店の奥の壁に、いろいろなTシャツが前後ろが見えるように展示されてたので、その下に二人並んで、柄を見上げる。メンズのTシャツは、黒とか紺とかで、カッコいいデザインが多かった。
「黒の、イルカのにしようかな」
瑛士さんが指さしたのは、黒いTシャツで、背中に模様が入ってるタイプ。
月に照らされた暗い海で、イルカが優雅に泳いでる。前は、胸元に小さいイルカがプリントされてるだけ。
イルカも、可愛い柄じゃなくて、すごくカッコいい、綺麗な白っぽいキラキラ光る線で描かれている。
「いいですね、カッコいい。こんなデザインなんですね。もっと、水族館、とか書いてあるのかと……」
「ははっ、そうだね。良かった、こういうので」
確かに良かった。瑛士さんに、可愛いイラストの水族館丸わかりのTシャツとか、ちょっとなんか違いすぎる――と、思いながらも、なんだかそれはそれで可愛かったかも、と思ってると、同じシリーズで、ペンギンのイラストのTシャツが目に入った。
「これも可愛い。瑛士さん、ペンギンは?」
「ペンギンかぁ……可愛いね」
紺の生地に、同じく左胸に小さく二匹のペンギンが居て、背中には少し大きく、二匹のペンギンがたたたっと可愛く走っていた。これも、綺麗な虹色に光る線でえがかれていて、幼い感じではないのだけど。
んー、でもやっぱり瑛士さんはペンギンよりイルカの方がカッコいいかな、と思っていたら、「これ、いいね」と瑛士さんが微笑んだ。
サイズと柄をチェックしながら、棚からペンギンのTシャツを手に取った瑛士さんに、「そっちにするんですか?」と聞いたオレの目の前で、続いてイルカのTシャツも手に取った。
「一緒に着ようよ。おそろいでさ。凛太、このペンギンでいい?」
また、太陽みたいって思う笑顔でオレを見下ろす瑛士さんに、どうしてか言葉が出なくて、辛うじて頷く。
「凛太、おそろい、嫌?」
「え?」
「嫌だったら言っていいよ」
「え、ちが、くて……」
違う。言葉がすぐに出なかったけど――――嫌とかじゃない。
「……おそろいとか……初めてだなぁ、と思って」
言葉に出していくと、多分オレ、今のこの気持ちが何かが、分かってくる。
考えながら話すオレを、瑛士さんは微笑んで見つめて、待ってくれている。
「――――嬉しい……のかな……」
言いながら、おそろいが嬉しいとか、オレ、思う気持ちあるんだろうか、となんだか自分で不思議になる。
また変な言い方してるよね、と思った時、瑛士さんが、オレの頭に手を置いて、くしゃくしゃと撫でた。
「疑問形なの、可愛いけど―――嫌じゃないなら、着てみよ?」
瑛士さんは、クスクス笑う。
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