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87.嬉しい……?(2/2)
しおりを挟むん? 嫌じゃないならって瑛士さん言ってる。あ、それはすぐに否定したい。
「嫌なんかじゃないですよ」
そう言ったら、瑛士さんは「良かった」と微笑む。
「オレ達が、おそろいで帰ったら、じいちゃん笑うかな?」
「えーと……笑う、かもですね」
「凛太、着替える必要ないもんね。絶対笑うね」
瑛士さんと顔を見合わせて、クスクス笑い合う。瑛士さんは笑いを少し収めながら「あ、そうだ」とオレを見つめた。
「今のうちに、じいちゃんへのお礼も、何か選んじゃおうか。何か買ってあげたい気がする」
「あ、賛成です――何がいいですか? どんなのが好き、とか」
「とりあえず、お菓子とか飾るものかな。見てみよ」
なるほど、と頷いて、少し瑛士さんと離れて色々見てまわる。
やっぱり小さい子向けの可愛いものが多くて、ここに雅彦さんが好きなものあるかなぁとウロウロしていると、お茶のおともに良さそうな和菓子を発見。くらげやペンギンやあざらしたちが、大福とか練り切りになってて、めちゃくちゃ可愛いし、とってもおいしそうに見える。
「瑛士さん、可愛すぎるもの発見したんですけど」
「ん、待って、そっち行くね」
通路の向こう側に居た瑛士さんを呼ぶと、隣に来た瑛士さんが見本を見て、「ほんとだ」と笑う。
「ペンギン、凛太に似てるし、喜ぶよ、きっと」
「……オレ、そんなにペンギンに似てますか?」
「うん。可愛いとこね」
……よく分かんないけど。とにかく瑛士さんは楽しそうなので、それ以上否定もしないでいると、瑛士さんが見本の下の売り物の箱に手を伸ばした。咄嗟に「あ」と声を出したオレを、瑛士さんはふと見下ろして、ん? と首を傾げた。
「あの……オレが買ってもいいですか? 今日は、父のお金じゃなくて、バイトしたお金を持ってきたので」
「――――うん。いいよ。っていうか、じいちゃん、凛太からって言ったら喜ぶと思う」
くす、と瑛士さんが笑って、そう言ってくれる。なんだかそんな風に言われると、逆に少し自分のこだわりがおかしく感じて、少し俯した。
「でも結局、学費とか払ってもらってるし、こうして区切っても意味ないですし、気持ち的な話なんですけど」
変に拘りすぎてるよな、オレ。
そう思いながら苦笑したオレに、瑛士さんはすぐに「そんなことないよ」と微笑んでくれた。
「少なくともそのお金は、凛太が稼いだお金なんでしょ? だから、意味はあるよ」
「……はい。そう、思ってはいます」
「ていうか、凛太のそういう風に考える感じも、オレは好きだし――これは凛太がじいちゃんに買ってあげてね」
「……はい」
頷いて、その箱を受け取る。なんだか、とても大事に思えて、きゅ、と箱を持つ手に力が入った。
「ていうか、凛太、もうすぐその世話には、ならなくなるから。凛太、オレのになるし」
「――」
なんだか言葉が出なくて、瑛士さんを見つめ返したまま、少しだけ頷くと、瑛士さんはニッと楽しそうに笑ってくれた。
オレの、なんか、ささやかな抵抗みたいな、くだらないこだわりを、瑛士さんは笑わないんだと思うと、なんだかすごく嬉しいし。
――なんか、心の中が、ぽかぽかあったかい気がする。
よく分からない感覚に少し固まってたオレを、瑛士さんが振り返った。
「もう一つ、何にしよっか。凛太も探して?」
そんな風に言いながら見つめてくる瑛士さんの優しい瞳に、オレは頷きながら一緒に歩き出す。少し進んで、置物のところで、カッコいいイルカの置物を見つけた。ちょうど空中にジャンプしてるみたいな姿。キラキラ輝いてるクリスタルのイルカの背に青い石が埋め込まれていて、すごく綺麗だった。結構いいお値段ではあるのだけど、雅彦さんのお家に置くには、安っぽいって、なるんだろうか……? と悩んでいるオレの手元を、ふと瑛士さんが覗き込む。
「あ、いいね、これ。カッコイイし、綺麗」
「そうなんですけど……雅彦さんのお家に合いますか?」
「平気平気。オレの子供の頃のお土産とか、置いてる棚もあるし。あんまりじいちゃん、気にしないし。思い出とかの方が大事な人だし。これにしよ。綺麗だし」
「はい……なんか、ほんとに、雅彦さんって、素敵ですよね」
「んー? ……まあ。そうだね」
思い切り頷くのは照れ臭いのか、ふ、と目を細めた瑛士さんが少しだけ頷く。でも、なんだかとても嬉しそうで……また少し可愛く見えてしまう。
「よし、買いに行こ――あ、凛太にあげるおみやげは、あとでゆっくり選ぼうね?」
「オレのおみやげですか?」
一緒に来てるのに、と思ったら「おみやげってより、記念か」と言い直して微笑む瑛士さんは、オレの前をレジに向かって歩き出す。うしろについて歩きながら、考える。
記念、かぁ。オレにくれるの?? むしろ……連れてきてもらったオレが瑛士さんにあげたいけど。この感じだと絶対くれてしまいそうだから、そうすると、交換こみたいになっちゃうな……交換こで、おみやげかぁ。
あんまり買ったことないな――――なんかそれもちょっと……ていうか、すごく、嬉しいかもしれない。
Tシャツのおそろいも、さっき 話していた時よりも、なんだか考えれば考えるほど、嬉しい気がしてきてるし。
ふふ、と顔が綻ぶ。
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