「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」

星井 悠里

文字の大きさ
92 / 142

92.ぽかぽか

しおりを挟む


「なんか、少しムッとしてる?」
「――――」

 ……言えないと思ってたのに、バレてる……。

「凛太?」 
 クスクス笑いながら面白そうに名を呼んで、瑛士さんがオレを覗き込んでくる。こういう時の瑛士さんは……うん。なんかすごく楽しそう。
 ちょっと顔を逸らしてから、オレは、小さくため息。

「瑛士さんみたいな人は、手放しでほめちゃだめだと、ほんと思います……。立ってるだけでも好かれそうですし。モテちゃいますよ、必要以上に」

 そう言ったオレに、少し考えるそぶりをしながら、ふーん、と楽しそうな瑛士さん。

「――オレ、こんな風に手放しでは褒めないよ。可愛いとかも、本当に凛太にしか言ってないって言ったでしょ」

 じゃあ何でオレには言うんだろ。それが言葉に出る前に、そっか、と止まる。
 そういう対象にはならないって思ってるから言うのかって――前、同じこと考えたっけ、と思っているオレに、瑛士さんはふんわりと微笑む。

「凛太に言ってるのは、凛太に好かれるのは何も問題ないからだし」
「……それって、オレ、何て答えれば正解ですか……?」

 嬉しい気がしてしまうけど、喜んでいいのか。もう全然、どう対応していいのか分からないので、直で聞いてみた。すると、瑛士さん、ふ、と笑い出したと思ったら、ぽんぽん、とまた頭を撫でてきた。

「前も言った気がするけど……オレ、最初は、ちゃんと細かく契約を決めて、お互いに必要以上には踏み込まないってことにしようと思ってたのにさ。もう今、全然違うことしてるよね。自分でも最初は少し不思議だったけど。でも、オレ、これでいいと思ってるんだよね」

 そんな風に言う瑛士さんの言葉は、柔らかくて、優しくて。
 だから、特に何も、言い返そうとは思わない。

「凛太も、嫌じゃないでしょ? オレと居るの」
「――はい」

 この聞き方も。自信ある人でないと、聞けないと思う。
 ――瑛士さんと居るのが、嫌な訳ないし。一緒に居る時のオレの態度を見て、嫌そうなんて絶対思わないだろうから聞いてるのだろうとも思うけど。でも、オレは瑛士さんに「オレと居るの嫌じゃないでしょ?」なんて聞けないもんなぁ……。
 でもそれも、自意識過剰とか、そんなんじゃなくて。過去生きてきた中で瑛士さんと居たくない人なんていなかったんだろうなぁ、なんて思ってしまうけど。嫌われることとかあるかな。嫉妬される、とかならあるかもしれないけど、でも色々、上すぎて、嫉妬する対象にすらならないような気もするし。

 と、その時。震動音が響いて、瑛士さんがスマホを取り出した。番号を見て少し不思議そうにしながらも「ちょっと待っててね」とオレに言ってから、電話に出た。少し聞いて、「あぁ」と笑顔になった。

「連絡ありがとうございます。……はい。じゃあ今日取りに行きます。何時までですか? ――はい。分かりました」

 なんだか、嬉しそうな声。
 外、海がキラキラしていて、すごく綺麗な景色を見ながら、瑛士さんの声をなんとなく聞いてる。今日何かを取りに行くのか。じゃあ早く帰る感じかな?

 瑛士さんが電話を終えたので視線を向けたら、すごく嬉しそうな顔でオレを見つめ返してくる。

「凛太、帰りに寄りたいところがあるんだけどいい?」
「はい。早く帰った方がいいですか?」
「いや。ここが閉まってからでも間に合うから。一緒に、ついてきて――凛太にあげるものだから」
「え? オレですか?」

 意外なセリフに聞き返すと、瑛士さんはニコニコ笑って頷いた。

「チョーカーがね。特注してたの、出来上がったって」
「――あ、チョーカーですか」
「うん。やっと」

 オレのチョーカーで、あんなに嬉しそうな顔、してくれてたんだ。なんだか心の中、ほっこりする。

 ありがとうございます、と頷くオレに、うん、と頷いてから、んー、と考える瑛士さん。

「――凛太のフェロモンが漏れにくいとは言っても、竜くんには分かるんだし、やっぱり心配だからさ、早くプレゼントしたかったんだよね。つけた方がいいよ、Ωのチョーカーは」
「はい」

 ……まあ、フェロモン、感じ取れる人が居ないって言われてたからなぁ。とも思うのだけれど、心配そうな顔をしてる瑛士さんには、何も言い返す言葉も浮かばない。

「――――でも、あれだよね……」

 ふと口調の変わったことを不思議に思うと、オレをまっすぐ見つめて、瑛士さんはちょっと面白くなそう。

「凛太のフェロモン。オレが感じないっていうのは、なんか……面白くない」
「……え?」
「だって、相性がいいからって分かるなら、オレも分かりたいじゃん?」
「――――はあ……」

 …………???
 「面白くない」の??

「……なんだか、そこはちょっとなぁ……」

 んー……と眉を寄せて、ちょっと口をとがらせてる感じ。
 ……よく分かんないけど。

 ――なんか、可愛い。

 ぷ、と笑ってしまったオレに、瑛士さんが、あっ、と驚いたみたいな顔をして、「何笑ってんの、凛太」とちょっと照れた感じ。

「え、だって……なんか、瑛士さんが可愛くて」
「可愛くないから」

 クスクス笑うの止められず、ツッコまれても笑っていると。ふ、と微笑んで息をついた瑛士さん。
 ふと、瑛士さんの腕が伸びてきて、オレの頬に触れた。


「ヒートが来たら、分かるかな」

 じっと見つめられて、そんな風に言われる。もう笑える雰囲気、ではなかった。

「で、も、ヒートの時に分かったら……まずい、ですよね?」
「んー……いや。別にオレ的には、まずくないけど……」

 考えながらそう言った瑛士さんは、オレの頬を親指で撫でてから、そっと手を離した。


「竜くんだけが分かるとか……んー。なんだかな……」
「――――……」


 瑛士さんの言葉。
 ……なんか、返事に困る。

 ちょっとおもしろくなさそうに、外の景色に目を向ける瑛士さん。
 その視線を追って、オレも、海を見る。

 やたらキラキラして見えて。

「――ほんと、綺麗ですね」

 そう言ったら。瑛士さんも、景色を見たままで。

「うん」

 おだやかな、優しい声。
 なんか、心の中。ぽかぽかする。
 





(2025/4/5)
しおりを挟む
感想 129

あなたにおすすめの小説

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

学内一のイケメンアルファとグループワークで一緒になったら溺愛されて嫁認定されました

こたま
BL
大学生の大野夏樹(なつき)は無自覚可愛い系オメガである。最近流行りのアクティブラーニング型講義でランダムに組まされたグループワーク。学内一のイケメンで優良物件と有名なアルファの金沢颯介(そうすけ)と一緒のグループになったら…。アルファ×オメガの溺愛BLです。

帝に囲われていることなど知らない俺は今日も一人草を刈る。

志子
BL
ノリと勢いで書いたBL転生中華ファンタジー。 美形×平凡。 乱文失礼します。誤字脱字あったらすみません。 崖から落ちて顔に大傷を負い高熱で三日三晩魘された俺は前世を思い出した。どうやら農村の子どもに転生したようだ。 転生小説のようにチート能力で無双したり、前世の知識を使ってバンバン改革を起こしたり……なんてことはない。 そんな平々凡々の俺は今、帝の花園と呼ばれる後宮で下っ端として働いてる。 え? 男の俺が後宮に? って思ったろ? 実はこの後宮、ちょーーと変わっていて…‥。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

処理中です...