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クイオトコ
第八十七話 クイ男
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大人になっても冒険心を忘れない。
そんな風に思って輝いて社会人の一歩を踏み出したの今は昔。
今ではすっかりくたびれてしまった中年。
今日も休日だというのに呼び出されてみれば、身に覚えの無いクレームで上司にネチネチと叱られつつ処理をする。
帰路につけばもう当たりは真っ赤に染まりかけて、休日の終わりを感じさせる。
せめてもの楽しみと帰路途中にあるコンビニに寄っておでんとビールを買う。
俺は一体何の為に生きているんだろう。この歳になっても独身、誰にでも出来るくだらない仕事で人生をすり減らせていく。
はあ~と深い溜息と共に、何の気まぐれか、ふと横を見ると塀と塀に挟まれた僅か70cmにも満たない脇道が伸びているのが目に入った。
何年も通った道だがこんな道があることを今初めて気付いた。
この道を抜けると何処にいけるんだ?
目を凝らしても夕暮れ時だからか先が曲がっているのか、抜けた先は見えなかった。この道の先は未知。
「未知」
この歳になってまさかこんな言葉を呟くとは。
「よし」
どうせアパートに帰っても誰かが待っているわけで無い。何もするのも自由。今から明日会社に出勤するまでの俺の許された自由なる時間。家に帰ってテレビを見ながらビールと思ったが、なら未知に挑むのもいい。
いやきっと、いい。
俺は狭い道に入り込んだ。
「はっはっ」
心が躍ってくるのが分かる。心がむくむくと若返っていくのを感じる。
体を僅かに傾かせ、一張羅を壁に擦らないように気をつけて若干横歩きに近い。幼少期よくこういった道を走り抜けては服をどこかに引っ掻いては母に叱られたっけ。
人は猫。猫と同じく人は通れる道、それが狭ければ狭いほど惹かれてしまう。
壁と壁に挟まれた細い路地。どれほど歩いたのか、一時間のようにも数分のようにも時間の間隔が溶けていく感覚が心地よい、絶対に時計は見ないぞ。
「ふっふ~ん、ぎょっ」
俺はまだまだやれるそんな心が湧き上がり顔を見上げて歩けば、視線の先、口からぶっといクイの先端を出す裸の男と目が合った。
腰が抜けそうになる。
裸の男はヤモリのような格好で両手両足を押しつけて壁と壁の間に張り付いている。そこまではまだいい、合った目が腐った魚の目のように濁っているのもまだいい。ここまでなら、変態に遭遇したでまだ済ませられる。
何で引き裂かれるほど開かれた口から先が鋭利に削られ、腕ほどのぶっといクイが飛び出ている?
そのクイは一方は口から出ているが、その後端は尻から出ている。
つまり尻から内臓を通って口からクイが出ている、この男は櫛を刺された焼き魚のようになっているのに、なんで生きている?
いやそれとも死んでいるのか?
あのぬめっとした白蝋のような肌の白さ、もう死んでいるのか? 死んで壁と壁の間に張り付いているのか? それなら警察に連絡を・・・。
「うぎゃーーーっ」
クイ男のめがぎょろっと動いて、俺を睨み付ける。そして俺目掛けて、かさかさと手足を動かして向かって来る。
一目散という言葉通り。俺はもう逃げ出した。走って逃げ出した。
走って、走って、走って、走って行く。
とっくに入り込んだ分は走り込んだはずなのに、出口が見えてこない。
「へあ!?」
なんでなんでなんで、出口が見えてこない。壁と壁に挟まれた細い道は、ぐっと地平線の彼方まで続いているように消失点の向こうまで続いている。
何で何で俺はこんな道に入ってしまったんだ?
冒険心なんて出すんじゃなかった。
童心になんか戻るんじゃ無かった。
アパートで愚痴をグチグチ言ってビールを飲んでいれば良かった。
悔いが次々と浮かび上がって後悔する。
「うわっ」
普段から運動不足が祟ってこんな命が掛かった駆けっこなのに、もう足が上がらなくなり躓いた。
そこからは早い。躓いた勢いを殺せないままに俺は地面に倒れ込んだ。
腕すら着くことが出来ずに、全身で地面にダイブしてしまう衝撃に呼吸が止まる。それでも生きたいという意思、さっきまで死んだような気力の無かった男のどこにというほどの死にたくないという意思が、がばっと上半身を起き上がらせる。
そしてまた目が合った。
俺の前の前にクイ男の目があった。
いつの間にか回り込んでいたクイ男は俺の頭をぐっと掴むと、俺は強引に自分が引き寄せられるのを感じた。
口と口を合わせられた。
相手が男だというのも嫌だが、今はそんな生理的嫌悪感を言っている場合じゃ無い。
口からクイが飛び出ている口とキスをしたんだ、当然俺の口に歯を砕きクイが入り込んでくる。
「がぼがばああ」
歯を折られ砕かれ気絶しそうな痛みが襲い掛かって来るが、気絶しない。死にたくない一心でクイ男の頭を掴み引き離そうとするが、そのゴンッとクイが打ち込まれるのを感じた。
歯を磨り潰し顎が外れクイが喉まで入り込んでくる。
後はもう、ガンガンガンと杭が打ち込まれるたびに食道に入り込み、胃を突き破りクイは俺の体を貫いていく。
あれほど死にたくないと思っていたのに、今は自分が押されるよな精神的苦痛、歯の治療の数十倍の痛み。一刻も早く死にたいと願ってしまう。
「今日のニュースです。
本日夕方頃、いきなり路上で裸の男の遺体が発見されました。一部目撃者の話では男はの口から何か杭のようなもので貫かれたような感じがする・・・・」
ニュースを見ていた俺のスマフォが鳴る。
そんな風に思って輝いて社会人の一歩を踏み出したの今は昔。
今ではすっかりくたびれてしまった中年。
今日も休日だというのに呼び出されてみれば、身に覚えの無いクレームで上司にネチネチと叱られつつ処理をする。
帰路につけばもう当たりは真っ赤に染まりかけて、休日の終わりを感じさせる。
せめてもの楽しみと帰路途中にあるコンビニに寄っておでんとビールを買う。
俺は一体何の為に生きているんだろう。この歳になっても独身、誰にでも出来るくだらない仕事で人生をすり減らせていく。
はあ~と深い溜息と共に、何の気まぐれか、ふと横を見ると塀と塀に挟まれた僅か70cmにも満たない脇道が伸びているのが目に入った。
何年も通った道だがこんな道があることを今初めて気付いた。
この道を抜けると何処にいけるんだ?
目を凝らしても夕暮れ時だからか先が曲がっているのか、抜けた先は見えなかった。この道の先は未知。
「未知」
この歳になってまさかこんな言葉を呟くとは。
「よし」
どうせアパートに帰っても誰かが待っているわけで無い。何もするのも自由。今から明日会社に出勤するまでの俺の許された自由なる時間。家に帰ってテレビを見ながらビールと思ったが、なら未知に挑むのもいい。
いやきっと、いい。
俺は狭い道に入り込んだ。
「はっはっ」
心が躍ってくるのが分かる。心がむくむくと若返っていくのを感じる。
体を僅かに傾かせ、一張羅を壁に擦らないように気をつけて若干横歩きに近い。幼少期よくこういった道を走り抜けては服をどこかに引っ掻いては母に叱られたっけ。
人は猫。猫と同じく人は通れる道、それが狭ければ狭いほど惹かれてしまう。
壁と壁に挟まれた細い路地。どれほど歩いたのか、一時間のようにも数分のようにも時間の間隔が溶けていく感覚が心地よい、絶対に時計は見ないぞ。
「ふっふ~ん、ぎょっ」
俺はまだまだやれるそんな心が湧き上がり顔を見上げて歩けば、視線の先、口からぶっといクイの先端を出す裸の男と目が合った。
腰が抜けそうになる。
裸の男はヤモリのような格好で両手両足を押しつけて壁と壁の間に張り付いている。そこまではまだいい、合った目が腐った魚の目のように濁っているのもまだいい。ここまでなら、変態に遭遇したでまだ済ませられる。
何で引き裂かれるほど開かれた口から先が鋭利に削られ、腕ほどのぶっといクイが飛び出ている?
そのクイは一方は口から出ているが、その後端は尻から出ている。
つまり尻から内臓を通って口からクイが出ている、この男は櫛を刺された焼き魚のようになっているのに、なんで生きている?
いやそれとも死んでいるのか?
あのぬめっとした白蝋のような肌の白さ、もう死んでいるのか? 死んで壁と壁の間に張り付いているのか? それなら警察に連絡を・・・。
「うぎゃーーーっ」
クイ男のめがぎょろっと動いて、俺を睨み付ける。そして俺目掛けて、かさかさと手足を動かして向かって来る。
一目散という言葉通り。俺はもう逃げ出した。走って逃げ出した。
走って、走って、走って、走って行く。
とっくに入り込んだ分は走り込んだはずなのに、出口が見えてこない。
「へあ!?」
なんでなんでなんで、出口が見えてこない。壁と壁に挟まれた細い道は、ぐっと地平線の彼方まで続いているように消失点の向こうまで続いている。
何で何で俺はこんな道に入ってしまったんだ?
冒険心なんて出すんじゃなかった。
童心になんか戻るんじゃ無かった。
アパートで愚痴をグチグチ言ってビールを飲んでいれば良かった。
悔いが次々と浮かび上がって後悔する。
「うわっ」
普段から運動不足が祟ってこんな命が掛かった駆けっこなのに、もう足が上がらなくなり躓いた。
そこからは早い。躓いた勢いを殺せないままに俺は地面に倒れ込んだ。
腕すら着くことが出来ずに、全身で地面にダイブしてしまう衝撃に呼吸が止まる。それでも生きたいという意思、さっきまで死んだような気力の無かった男のどこにというほどの死にたくないという意思が、がばっと上半身を起き上がらせる。
そしてまた目が合った。
俺の前の前にクイ男の目があった。
いつの間にか回り込んでいたクイ男は俺の頭をぐっと掴むと、俺は強引に自分が引き寄せられるのを感じた。
口と口を合わせられた。
相手が男だというのも嫌だが、今はそんな生理的嫌悪感を言っている場合じゃ無い。
口からクイが飛び出ている口とキスをしたんだ、当然俺の口に歯を砕きクイが入り込んでくる。
「がぼがばああ」
歯を折られ砕かれ気絶しそうな痛みが襲い掛かって来るが、気絶しない。死にたくない一心でクイ男の頭を掴み引き離そうとするが、そのゴンッとクイが打ち込まれるのを感じた。
歯を磨り潰し顎が外れクイが喉まで入り込んでくる。
後はもう、ガンガンガンと杭が打ち込まれるたびに食道に入り込み、胃を突き破りクイは俺の体を貫いていく。
あれほど死にたくないと思っていたのに、今は自分が押されるよな精神的苦痛、歯の治療の数十倍の痛み。一刻も早く死にたいと願ってしまう。
「今日のニュースです。
本日夕方頃、いきなり路上で裸の男の遺体が発見されました。一部目撃者の話では男はの口から何か杭のようなもので貫かれたような感じがする・・・・」
ニュースを見ていた俺のスマフォが鳴る。
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