俺嫌な奴になります。

コトナガレ ガク

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クイオトコ

第八十八話 会議は始まらず

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 その会議室には、20人ほどの人間達の熱気で包まれていた。
 教室のように前に向かって縦2列で並べられた長机に着く男達の面は厳めしく、数名混じる女性達の顔も決してたおやかで無い。所轄署の動員できるだけの刑事がここに集められている。
 滾る熱気に水を差すように会議室後方のドアから入る。
 誰だ此奴? 一瞬で静まり返る会議室。仲良しグループに一人見知らぬ者が混じったような目が一斉に向けられる。
 俺は仲良しグループに入るつもりは無い。無言のままに俺は机と机の間の中央の通路を進み適当に空いている席を探す。
右最前列が空いているか。
カツンかつんと革靴の音を響かせ進む俺の前に中年の男が立ち塞がる。
「おいおい、悪いがここは部外者立ち入り禁止だぜ、坊や」
 40代だろうか、長年刑事を務めた職業病かその顔は正義の味方と言うよりヤクザと言った方が納得する。
「俺が迷い込んだ迷子に見えるか。
 俺は果無警部だ。ここの捜査責任者に話は通っているはずだ」
 ここは最近ワイドショーを賑やかす「全裸男、路上放置事件」の捜査本部。これが魔絡みの事件なのかどうか、見極める為に俺は派遣されてきた。これが魔絡みの事件なら退魔官としての権限を最大限に発揮するが、普通の猟奇事件ならフェードアウト。
この時点では退魔官は秘し、表の官職警部を名乗る。
「ああっこんな若造が俺より階級が上だと、おまえキャリアか」
 まあこの人の気持ちも分かる。何年も積み上げてきたものをテスト点が良いだけの息子の年齢にも等しい若造が軽々と飛び越えていく。
 世の不条理。だがな、それが世の仕組みであり制度であり法で保証されている。
 納得がいかないなら、スーツを脱ぎ捨てヒャッハーするか、政治家にでもなって世の仕組みを変えるしか無い。
「そういうお前は名乗らないのか?
 その口の利き方、俺より階級は上なんだろうな」
 ここで下手に出て敬意を払って媚びを売って仲良くなった空気を作り出していく方法もあり、長い目で見ればその方がうまくいくのだろ。
 だが、俺は長い目で見る気はなく短期間での結果のみを求める。よって俺は階級という下は上に絶対服従、長い目で見れば不満がたまり歪に成るが、短期間ならこれほど効率的なものはない制度を利用する。
「おー怖い怖い。キャリア坊やが凄んじゃって。
 階級だけで命令出来ると思うなよ」
「年上と言うだけで偉いと思うなよ。
 警部という階級の権限を味わってみるか?」
 ここで引くわけには行かない。
 別に階級を振りかざして威張りたいわけじゃ無い。
 俺に本当に実力があれば、マンガでよく出てくるへらへら昼行灯を装う切れ者を演じても良いのだが、俺にそんな力は無い。俺のような力不足の若造の余所者でも命令を聞かせる為に、俺には警部という階級が与えられている。その与えられた力を使いこなせないようでは、この先退魔官などと言う嫌われ者などやっていけない。
「おー怖い怖い、ジョーク軽い冗談ですよ」
男は笑顔を浮かべると媚びを売るように俺に道を空ける為横に避ける。どんな組織でもいる上に逆らうことを生き甲斐にするタイプかと思ったが、見誤ったか?
俺は空けられた道を進み出す。
さっと出される足、柔道と実戦経験からか絶妙のタイミング、気を抜いていたら転ばされていたかも知れない。
俺は足を引いて足払いを掛けてきた足を逆に払う。
「うおっと」
 蹌踉ける中年の胸倉を掴んでぐっと引き寄せる。
「酒の飲み過ぎか? それとも捜査の疲れか? 捜査の足を引っ張るようなら家に帰れ、田口巡査部長」
「俺の名を!?」
 この男無頼を気取っているようでいて、ここまで出世したことはあって用心深い。一度としてなも階級も名乗らなかった。
 だがな敵が多い我が人生、捜査主任を含めた主要メンバーくらいの顔くらいは事前に調べておくくらいはする。人生何で躓くか分からないからな。
「勉強しか能の無い坊や何でね。予習はしてくるさ。
 当然、復習も忘れないぜ」
 恫喝と共に一睨みすると俺は田口を突き放すと席に着いた。
 ちっまだここに来た目的を何一つ果たさないうちにこれか。好かれようとは思ってなかったが、余計な労力を消費する。
 階級が絶対の組織だからもう少しやりやすいかと思っていたのに、つくづく俺はこの仕事には向いていない。
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