催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

文字の大きさ
59 / 135
外国へ遊びに行こう

眠らせよう

しおりを挟む


 王城の中庭は平地に整備されており、武器や魔法などの戦闘訓練にうってつけの場所である……俺としては、その用途ではなく昼寝スポットとしての良さを語りたいが、今は止めておこう。

 中庭は兵士たちが使っていたのだが、面倒な事情を簡潔に説明したらあっさりと貸してもらえた。

 ただし、とてつもない同情の視線が居た堪れない俺への思いを伝えてくれたよ。

「ルールはどうする? 参ったって言った方が負けにするか」

「へっ、それでいい。異世界人の力がどれほどのものか……見せてもらうぞ」

 兵士、メイド様、国王が観ている中、俺たちの闘いが始まろうとしている。
 互いに模擬戦用の武器を握り締め、不殺という暗黙の縛りの中闘志をぶつけ合う。

「ところで、どうしてそこまでして闘おうとするんだ? 女だから、なんてつまらない理由じゃないんだが、わざわざ異世界人と闘おうとする理由が分からない」

「理由? んなもん、テメェにはどうでもいいことだろ。……まあ、オレに勝ったら教えてやってもいいぞ」

「そうか。なら、やる理由が一つ増えたな」

 強い意志の下に、覚悟を決めた。
 この大衆の中で、行うことにほんの少しだけ緊張をして汗が流れてくる。

 誤魔化すように強く武器を握り直そうとするが、汗のせいか少し滑ってしまう。

「では、二人共準備はいいな?」

「ああ」
「早くしろよ」

「…………では、」

 娘からの評判が悪い父親が、それでもどうにか威厳を保とうと開始を告げようとする。
 大きく息を吸い、俺たちの闘いを──


「始め」
「──参った!」


 告げ終える前に、降参を宣言した。
 これにて、一件落着だ。





 となれば、俺も気分よく昼寝の続きができたかもしれない。

『イム様、次はお願いしますね(ニコリ)』

 メイド様からありがたいお言葉を受け、俺のやる気は非常にがった。

「……ハァ、面倒臭い」

「くっ、この……」

「どうして俺が、わざわざここまでしないといけないんだか」

「ふざけんじゃねぇっ!」

 姫としての威厳がゼロの発言ではあるが、この状況を分かりやすく伝えてくれている。
 そもそも、俺に勝つことは今のユウキでも難しくなっているのが実情だ。

 異世界転移者クラスメイトのスキルの、メリットとなる部分だけを取り入れたステータスだぞ?
 自他ともに認める、チートな能力さ。

「少なくとも、俺はこの世界へ来たばかりの勇者様程度には闘えるぞ。俺に勝てない今のお前じゃ、相手もしてもらえねぇよ」

「まだ……やれるっ!」

 まあ、ユウキのことだ。
 来た女性は必ず相手をするだろうし、闘いもしてくれるだろう。

 赤髪の王女、なんていかにもアイツのハーレムに加わりそうだしな。

「嗚呼……面倒臭い」

 弓ではなく剣で相手をしている時点で、彼女にとって舐められていると思えるだろう。

 実際、俺の武器なんてなんでも構わない。
 そのことを知っているのは俺の部下だけだし、今回の闘いでメイド様が気づくだろうが今は関係ないからな。

 最近手に入れた聖気運用系のスキルを用いて、拳にオーラ的なモノを纏わせる。

「その光、聖気だよな?」

「説明する義理はないんだが……まあ、正解だ。けど、それがどうした?」

「テメェは聖人か! なんでこんな場所に、テメェみたいな奴がいる!」

「なんでって言われても……派遣されたからに決まってんだろ」

 質問の意図がまったく分からない。
 今では量産されるような聖人で、その気になれば俺でも創りだせる存在だぞ?

「なんで闘わねぇ! 聖人なら、何かできんなら動けよ!」

「……なあ、お前の娘はどいつもこいつもトラブルの種を持ち込まなきゃ気が済まねぇのか? 俺、関係ないだろ」

「その力を隠していたから、その問題が露呈したのだ。私は悪くない」

 怒りながら泣くという器用なことをする第二王女を見ながら、深くため息を吐く。

 聖人、聖人か……この国の誰かが聖人だったってパターンか? 少なくとも、漁った資料に王族の名は載ってなかったぞ。

「聖人は心まで聖人ってか? バカ言え、生きてりゃ欲に塗れるのが人間だろ」

「け、けど……」

「ケドもセロもレロもねぇ、俺は無理にこの世界へ呼ばれたんだ。何一つ、この世界のためにやることなんてねぇんだよ」

 まあ、生きるために必要なことであればやるんだけどさ。

 国王はそれが分かっているからこそ、しっかりとしたデメリットがほとんど存在しないメリットを提示する。

 俺もそれをメリットと認識して、だからこそこの国のため人働く。
 ギブ&テイクもできないで、正義論だけを理由に働くのはユウキみたい主人公だけだ。

「終わりにするぞ」

「うぐっ」

「『眠れ』」

 ギリギリまで抵抗を続けていたが、直接剣の腹の部分で叩いてそこから魔力を流した。
 そこから精神へ干渉させ、意識を強制的に遮断……はい、これで終了だ。

「なあ、国王。コイツも固有スキルで云々とか問題があるのか?」

「……いや、固有に関わらず希少なスキルを持ってはいない」

「それであの戦闘力か。力に傲った奴より、やっぱりああいう奴の方が面倒臭い。──次からはこういうことがないよう、ちゃんと父親としての義務を果たせよ」

「あ、ああ……善処する」

 隣で一礼をするメイド様に手を振って、俺はアシが待機している場所へ向かう。
 ……これ、どうせ面倒なパターンになるのが確定なんだよ。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...