催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

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外国へ遊びに行こう

第二王女に絡まれよう

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「問題は、第二王女──ミネルバだ」

 深刻そうな表情で、王は告げてくる。

「第二王女って言うと、たしか……」

「戦闘好き、と纏めるのが最適でしょう」

「いや、いいの? そんな扱いで」

「メイドの秘密です」

 ……まあ、面倒だから問わないけど。
 異世界だろうと、結局子供のことで親は苦悩するんだな。

「私もそう思う」

 親公認の戦闘好きってことですか。
 そりゃあなんとも、会いたくないお方だ。

「それで、俺にどうしろと? もしかして、また別の国に行けってか?」

「いや、そうではない。フレイアと違い、アヤツは周りの者を拒んでいるわけではないのだ。むしろ巻き込み、闘わせようとする」

「……近づかない方が、よさそうだな」

「そう言わないでください。王とて、他人をコケにするためだけに生きているのではございませんので」

 ひどい言われようをされている王様については、とりあえずスルーの方向で。
 今は……話を聞くことにしよう。

「実はな、突然言い出したのだ──『異世界人と闘わせろ』と。止めようとしたのだが、誰に似たのか頑固で……」

「もう帰るぞ」

「そうはさせんと言っているだろう」

「──イム様?」

 あの頃からかなりのスキルを蓄えたわけだが、まったく勝ち目が見えないのもアレだ。
 大人しく両手を上げて降参し、引き続き面倒な話に耳を傾ける。

「私は何度も忠告した。アイツは面倒臭がりと語るが、実際には割と働く勤勉者……だがそれは、異世界において行うことが当然なことだけであって戦闘は論外だと」

「……やけに細かく把握してるな。そこまで知ってもらえているとは驚きだよ」

「私の調査がありましたので」

 ああ、それでバレバレなのか。
 そこまでプロファイリングが済んでると、否定のしようがないな。

 日本文化がこの世界では異質な時もある。
 俺としては割かしどうでもいいんだが、メイド様の目からは何か意味のあることとして捉えられたようだな。

 まあ、考え方の違いってのは、ある意味重要だってこともあるからだ。

「で、その第二王女は諦めなかったと。話の流れでなんとなく分かったぞ」

「……だから、闘ってやってはくれないだろうか? 一度負ければ、アイツも──」


「おい、クソ親父! 異世界人はどこだ!」


 ドアを開く轟音と、国王を呼ぶ怒声が部屋の中に木霊する。
 埃が立ち上る中、ズンズンと煙の中からこちらへ進み出る影が一つ。

「み、ミネルバ……」

「おう、クソ親父。わざわざ連れてきてくれたようだな……異世界人をよぉ!」

 現れた者こそが、先ほどからウワサの第二王女だそうで。
 第三王女が青色系女子なら、第二王女は赤色系女子であった。

 燃えるような赤色のドレス、それと同じ髪と瞳の色をしている。
 そしてその目は──こちらへ向いていた。

「なあ、異世界人……イムって言ったか?」

「ええ、そうですね。私がこの国へ派遣された異世界人。イム・トショクと申す──」

「つまんねぇ御託は要らねぇよ。それよりイムって言ったか……俺と闘え」

 なんとも、戦闘好きなお姫様で。
 第三王女とは別ベクトルで、さらに言えばより面倒そうだ、

「お断りします」

「そうか。なら、中庭に……って、ハ?」

「やる理由もありませんし、異世界人がこちらの姫様を傷付けるというのも、他聞に憚りますし……」

「ふざけんなよっ!」

 なんだか、王様がビクッと怯えている気がするんだが……娘には弱いんだろうか。
 一方の第二王女は俺の首元を掴みかかり、持ち上げて揺さぶる。

「負けると? この俺が、負けるとでも!?」

「ハァ……メンドくさ。いいか、そもそも俺は自分で闘う気も、お前みたいな根性論だけ動くような脳筋相手に手札を切る気もない。アイツは……第三王女は俺に利益をもたらしてくれたから、俺も動いたんだ。だが、お前が何をしてくれる? 何もしないだろう」

「ハァ!? なんで俺がそんなこと──」

「イイってイイって。憂さなら迷宮でも行って晴らしてきてくれ。俺はこの国に派遣されただけの遣いっぱしり。別に、お前と闘ってもなんの益も無いんだ」

 と、ここまで俺側の意見を言っていたが、結局のところ意味は無いだろう。

「……イムよ、頼む」

「ハァ……だから権力は嫌なんだ。その代わり、しばらくは休日を貰うからな」

「…………分かった」

 正当な要求をしているだけだってのに、どうしてそんな苦渋を飲んだ顔をしているかが謎だよ。

 さて、せっかく了承を得たので、クルリと第二王女の方を向き──

「そんなわけだ。第二王女様と闘うってことになった。よかったな、やりたかったことができてよ」

「チッ、異世界人ってのはこんなヤツばっかりなのかよ」

「そんなはずないだろう。俺みたいな面倒臭がりも言えば、お前が本当に闘いたいだろうまさに勇者っぽいヤツもいる。この国はハズレを引いたからな。当たりに会いたきゃ別の国まで外交でもするんだな」

 今は大迷宮を攻略してるんだっけか?
 ユウキたちが攻略を終えたら、諸国巡りからの世直しが始まるだろう。

 その前に会っておけば、この姫様も大人しくなるかもしれない。

「俺だって、できればしてたよ。けどなあ、クソ親父がそれを許さねぇからお前で我慢しようとしてるんだよ」

「…………まあ、休日がかかってるからやりはするがな。ほら、中庭に行くぞ」

「俺に命令するな!」

 第二王女と中庭に向かう。
 メイド様と国王もまた、その後に続いて観戦をしようとしている。

 やれやれ、面倒事になってきたな。

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