74 / 135
外国へ遊びに行こう
打ちのめそう
しおりを挟む再び起き上がる四天王たち。
何が起こったのか分からない観客たちは、その勇姿に歓喜し叫んでいる。
『…………』
だが、当の本人たちは違った。
顔面真っ青、意識蒼白……血の気が失せるとはこのことである。
「どうした? 客どもはお前たちの戦いを楽しみにしているぞ。早く構えろよ、そして俺も楽しませてくれよ」
「く、クソ野郎が……」
「そんなに褒めないでくれ。照れてうっかりもう一本──射っちゃった」
『ッ……!』
回復した体に向けて、さらに『青の矢』を射る──それにより、肉体はほぼ完璧に活性化を終えただろう四天王たち。
ボロボロだった体も完全に治り、二本目の効果で魔力も少し回復していると思う。
ふらふらと立ち上がる四人。
だが、先ほども挙げた通り本人たちに俺との戦いに燃やす闘志はない。
「ふわーはっはっはっは! 見ていろ、哀れな愚民共! この俺が、貴様らの大好きな四天王を捻り潰すその瞬間を!」
『そんなはずがあるか! 我らを守護してくださる四天王様が、貴様のような下等な異世界人に負けるはずがなかろう!』
おっと、イイ返事をしてくれる魔族だ。
代わりに血の気が失せる、というより魂が消えているとも思えるほどに真っ青で真っ白な四天王の姿が映るが……魔王が何もしていないので、問題ないだろう。
「そうかそうか、貴様らの想いがはたしてこいつらに届くかな? 当然、俺は届かない方に賭けているが」
『四天王様! どうかソイツを、二度とそんなことが言えないように叩きのめしてください! 我ら魔族の底力、その証明を!』
『…………』
無理無理、本人たち死んだ目をしてる。
一部はもう死んでいるが……それ以上にもう、彼らは心が折れていた。
「けど、だからと言ってそれで終わらせるわけにはいかないからな──“瞬間装着”」
弓を仕舞い、異なる武器を使用する。
磨き上げられ、鍛え上げられた──拳。
ボクシングのような構えを取り、四天王たちに向けて叫ぶ。
「お前たちが魔王様の命を果たせない、残念な奴らなことはよく分かった! だが、俺の話が上手くいけば、俺とお前たちはこれから仲間となる! ……もう分かったようだな。俺が鍛えてやるってことだよ!!」
ズシンと足踏みをすると、四天王と俺を結ぶ地面が勢いよく裂け始める。
治った体を動かして回避する四天王に、観客たちは騒ぎだす。
「やはり動けるではないか……魔族の民よ、貴様らが崇める四天王は、どうやら俺の想定以上にやるようだな」
『そうだ! お前なんかすぐに敗れる!』
「ふははははっ! そうかそうか、それは楽しみなことだ」
俺のテンションが高い理由? 催眠でそうしてるってだけだよ。
精神を操作すれば人格に歪みが出る、俺はそれを応用しているだけだ。
──だからこそ、拳を交わして熱くなるという熱血物みたいな展開に持ち込める。
「なあ、ドラゴン。俺は間違ったことを言っているか? 魔王様を守るために、俺より強くはなりたくはないのか?」
「そ、それは……」
「なあ、ウルフ。このまま人族に魔族が蹂躙されていいのか? ここで頭を下げようと、俺より強くなるべきだろ?」
「ぐっ……」
まず二人、武闘派タイプの奴らにそう尋ねてみる。
この際、精神魔法や交渉スキルを使って精神に揺さぶりをかけておく。
まあ、魔王の加護的なナニカがあることは確認しているので意味は無いだろうけど。
「タナトス、魔王様は好きだろ? このままだと、いつか勇者が来るぞ? 守るためには力がいるんじゃないのか?」
「うぅ……」
「オーガ、魔力を底上げすることもいちおうできるぞ? それに、その不完全なアンデッド共を改良することもできる? 自分で戦いたくないなら、それなりの貢献をしろよ」
「む、無理ですよ!」
ようやくまともに返事をしてくれる奴が現れたが、やはりこちらの二人も乗り気ではないようだ。
しかし、あまり暴力的な交渉をすると魔王に怒られるし……何よりこっちでのんびりするときに反感を買いそうである。
「仕方ない……少しレベルを下げるか。魔王様、一つよろしいでしょうか!」
「なんだ?」
「私の勝ちでよろしいでしょうか!」
「……そう、だな」
では、と俺の勝利宣言をしようとしたところで──
『待ってください!』
四人の配下たちはいっせいに立ち上がり、俺にファイティングポーズを向けた。
「まだ、まだやれます!」
「だから、そこで見ていてくれよ!」
「……頑張る!」
「が、頑張ってください!」
一人だけ三人に向けて言っている気もするが、全員がやる気に火が点いたようで何よりだと感心する。
俺の手駒は、はたして自身の意思でここまでやってくれるだろうか?
催眠で仮初の忠誠は得ているが……心の底から俺に尽くそうと思う奴なんて、一人もいないんじゃないか?
「……無駄な思考だな。おらぁ、それなら俺に勝てよ! やれるもんならなぁ!」
かくして、俺たちの戦いはまだまだこれからだ! 的な感じに纏まった。
結局のところ、拳術だけで四天王を打ちのめして俺の勝利となる。
──だが、観客たちからの印象がまともになっていたので、良かったとも言えよう。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~
エース皇命
ファンタジー
学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。
そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。
「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」
なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。
これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。
※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる