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大きな戦いに挑もう
襲われて逃げよう
しおりを挟む『──殺せぇえええ!』
俺を見た途端、何やらハッとした表情をして叫ぶ偉そうな奴ら。
先ほどの『複合詩篇』とやらから考えてみると、他の詩もあるはずだ。
そして俺を見て気づけること……【導士】の存在が彼らにとって、何かしらの影響を及ぼすのかもしれないな。
まあ、【導士】が人に干渉することはその身を以って知っているので、不思議はない。
あれからインフォメーションは何も連絡してくれないので、答えは分からないけどな。
「俺が何をしたっていうんだか……仕方ないな、まったく──“六元解放”」
元素魔法によって生み出された六つの珠。
それぞれが属性魔法の概念のようなモノであり、魔力を流すだけで魔法発動の準備を終えることができる。
「火、水──“盲目乃霧”」
組み合わせることで、異なる属性の魔法を発動させることができる。
赤色と青色の珠を混ぜると、色彩ではありえない透明度の低い白い珠が生みだされた。
元素魔法は召喚者の一人が持っていたチート魔法スキル、複合属性にも対応している。
火と水が合わさり蒸気となり、それが霧となることで可能となった霧魔法が発動した。
発動したのは視界を奪う魔力の霧。
だがこれは、風魔法を使えばあっさりと吹き払えるようなものでしかない。
「風魔法を使え!」
誰かがそう言うと、優秀な魔法使いが風魔法を発動した。
どこからか吹き始める風……そして、その対の方向へ風が吹いて相殺していく。
「“追風”。そして“風操作”」
緑色の珠に魔力を籠めることで、まず一時的に風をぶつかり合わせる。
そしてその一瞬の時間で相手側の魔力に干渉し、魔法の操作権を奪い取った。
俺の周りを取り囲んでいた者たちは、その風が届けた霧の中へ包まれていく。
魔力で生みだされた霧なので、物理法則を無視して霧の形を維持し続ける。
どれだけ優秀な奴らでも──状態異常としての盲目状態にならずとも、普通に視界を奪われることになる。
「まずはこれをどうにかするしかないみたいだな……よし、逃げるか──“飛翔”」
空間魔法で逃げようと一瞬考えたが、それではダメだと幸運スキルが告げるので風魔法による脱出を選ぶ。
ちょうど操作していた風もあるので、奪い返されるまでは移動速度も尋常じゃないうえに妨害されずに逃げ出せた。
──というか、最初は争っていたんだから俺を求めずに戦争を続ければいいのにな。
◆ □ ◆ □ ◆
「……なるほど、そういうことだったのか」
改めて[メニュー]を操作し、[ヘルプ]機能から必要な情報を探してみた。
そしていつの間にか開示されていた情報の中に、詩戦システムが搭載されていた。
参加者は例の詩篇に組み込まれた奴ら。
そして、彼らはそれぞれの詩篇に従い。他の奴らを倒すことを目的としているようだ。
倒せば報酬がどこからともなく現れ、得ることができる。
強力な武具やスキル、金銀財宝など……場合によっては相手そのものだったりな。
倒した相手が強ければ強いほど、背負った詩篇の難易度が高ければ高いほど……報酬がレアなものになるらしい。
「そして俺を倒すと、俺の実力に関係なく最上級の報酬が得られると……【導士】って、見つけたらラッキーなツチノコかよ」
さすがにそのレア度に関する理由までは記載されていなかったが、狙われる理由はしっかりした。
要するに──知っている強者と戦うより、見つけた雑魚を協力して倒して山分けしたほうがいいと考えたわけだな。
「認識するとそれが分かるようになると。顔だけ隠しても、なぜか分かってしまうシステム……だけど、対策はある」
暗黒魔法──【魔王】の持つ固有魔法。
偶然【勇者】と魔王城以外で遭遇した際、バレないように用意された魔法らしい。
「──“暗黒幻闇”」
通常の闇魔法“幻闇”の場合、闇を生むことでそれを幻覚として操ることができる。
一方こちらの暗黒魔法は、世界をも欺く強力な幻覚を生み出せるのだ。
それを自身に纏わせる。
姿は面倒臭いのでそのままだが、見た瞬間に俺が【導士】だという知覚は機能せず、認識することができなくなった。
なお、【勇者】や【聖女】、あとはレアな看破系のスキルを持っている連中などには通用しないので、そうなったら物理的にどうにかするしかない──消えるか、消すかだな。
「さてさて、これから何をしようか……さっきので結構なスキルを視られたな」
常時発動のスキルだけでも、優秀な奴らはレアなスキルを所有している。
今の俺は寝ていなくても、睡眠に関するスキルを起動できる……コピーもすぐだ。
「──“存在分身”」
得られたスキルの一つ、“存在分身”。
分身が実行した経験が、本体に還元されるという便利なスキル……思わず最初にコピーしてしまった。
「俺の場合、並速思考もあるから何十倍も効率よくできるな」
「けどまあ、面倒臭いよな。分身の俺はどうやら維持費が掛かるみたいだぞ」
コピーに必要な熟練度を消化するにはちょうどいいが、先ほどの奴らを観察するには耐久度が足りない。
──存在を隠せるようになったし、接触は自分でやるしかないな。
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