催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

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 新スキル“存在分身”。
 その一人ひとりが自我を持っているので、独立した行動を取れる。

 暗黒魔法によって【導士】とバレなくなったので、分身がどれだけ姿を現しても狙われることは無くなった。

「あっ、また殺された」

 だがまあ、戦場に雑魚が居れば容赦なく潰すのが基本だと俺でも理解できる。
 分身体は本体よりも魔力の保有量が少ないため、魔法の応用もやれないで殺された。

「へぇ、面白い能力だな」

 ちょうど今回の分身死亡によって、正式な形で(存在分身)スキルを習得したようだ。
 なので新しくスキルを“解晰夢”を使ってコピーして、それを……。

「また殺された……あれ? 分身体はまだ、コピーが変更されてなかったのか?」
「みたいだな。分身体の俺は重ね掛けして分身できないみたいだが、“解晰夢”の書き換えはできるみたいだぞ」

「マジか……これはいいスキルを拾ったな」

 ただし、[称号]はコピーできなかったようで、一度にコピーできる数は減っている。
 それでも数で補えばコピーできる数は増えるので、一つでも充分だ。

「それじゃあ、お前はさっきのスキルをやってくれ。俺は……寝てるからさ」
「マジか。俺にその権利を譲ってくれよ」

「一番魔力量の多いヤツがやらないと、回復が見込めないだろう」
「……仕方ない、今回は諦めてやるよ」

 分身体は仕方なく、ここから去っていく。
 俺は異空間収納スキルから枕と布団を用意して、スッと眠り始める。

 魔物の素材を使った特殊素材なので、ここに居るだけで回復は通常の何十倍もの速度で行われていく……らしい。

「分身に籠める魔力が多ければ多いほど、長生きするからな……『一定量の魔力が溜まるごとに、分身していけ』」

 これで勝手にやってくれるだろう。
 ついでに分身へ暗示という形で指示を刻み込み、行動を定めてくれる。

「さぁて、『おやすみ』……」

 危機的な状況にでもならない限り、俺が起きることはないだろう。
 戦場のど真ん中で眠りにつく……ちょっとロマンがある気がするな。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「あ、あの、お、起きてください!」

「……んぁあ? 誰だ、お前……」

 目を開けた俺の視界にどアップで映りだされるのは、黒髪黒目の少女だ。
 一瞬、同朋だと思ったが……その顔立ちだけは西洋風だった。

「へっ? あっ、わ、わたしは……って、今はそんなこと言っている場合じゃないんですよ! ほ、ほら、早く逃げましょう!」

「逃げる? なんで……ああ」

 分身ができる間のタイミングで起きてしまい、対処できなかったようだ。
 危機感知を寝たいがために付けてなかったので、それに気づけなかった。

「どうして、起こしてくれたんだ?」

「だ、だって……困っている人がいたら、助けるのが普通じゃないですか」

「…………そうか、偉いんだなお前は」

「そ、そんな……わたしは偉くなんてありませんよ。って、だからそんなこと言っている場合じゃありませんよ! ほ、ほら、いろんな人が来ています!」

 ここに居る者たちは、自分と敵対する奴を倒して力を得ようとしている。
 なので、とりあえず知らない奴は殺す……ぐらいの判断で倒しているのだ。

 そんな中、戦場のど真ん中で寝ているバカが一人……うん、間違いなく殺すな。
 起こそうとする目の前の少女が異常なだけで、それが正常な判断だ。

「……ある程度稼いでいるな。とりあえず、俺のどこかに掴まれ」

「えっ? ど、どうしてですか?」

「いいから。早くしないと、俺ともども殺されるんじゃないか?」

「は、はい!」

 ギュッと体ごと抱き着いてくる少女。
 ここは普通、服の端とか手だけとかそういう感じだと思っていたんだが……まさか背中から密着されるとはな。

 年頃の男であれば興奮するんだろうが、催眠があるので冷めた精神を保てている。
 ただ、そうじゃない場合どう反応したのか謎なんだよな……どうなんだろう?

「まあいいか──“空間移動ムーブ”」

「く、空間魔法!?」

「連続して使うから、舌を噛まないようにしろよ──“連続詠唱”、“置換詠唱”」

 二つの詠唱系スキルを行使し、何度も何度も転移して逃げ出す。
 先ほどのように幸運スキルが警戒をしてこないので、安心して使用できる。

 魔法の発動条件を置き換えることで、仕草一つで詠唱を行わずに魔法を使う。
 転移は貴重な魔法、使えば使うほど魔力の消費が激しい。

 だが、回復は済ませてある。
 一定量になったら分身していたが、少しは温存できるペースにしておいたからな。

「……って、やっぱりまだ追ってくるか。便利なスキルがいっぱいだな、おい」

「あ、あの、何か投げる物を持っていませんか? で、できれば固い物を!」

「ん? なら……これを使ってくれ」

「これは……これなら、いけます!」

 俺が渡したアイテム……巨大な金属球を握り締める少女。
 明らかに手で持てるサイズではないが、魔力で張り付けているようだ。

「はぁああああ──“千華繚嵐”!」

 この場に居ることで分かっていたが、この少女も潜在能力は凄まじいようだ。
 ただの金属であったはずなのに、なぜか分身して追ってくる奴らを吹き飛ばしていく。

 ……まあ、とりあえず逃げられればそれでいいか。
 細かい質問はそれからでも構わないし、逃げるが勝ちとはこのことだな。

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