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大きな戦いに挑もう
一つに纏めよう
しおりを挟む短刀は無事に届いた……というか、便利なスキルのことを思い出したのだ。
それはクラスメイトが持っていた、異空間収納というスキル。
実はこれ、分身と共有されていた。
勝手にお土産を放り込んでいた分身によって分かったのだが、そういう部分も試しておく必要がありそうだ。
「けどまあ、還元だけはちゃんと自分でやらねばならないんだよな……」
一度サリスから離れ、再び分身たちをその身に戻してスキルを獲得していく。
これを持っていたヤツも、かなり豊富なスキルを持っていたらしい。
遭遇した分身体が死にかけながら、どうにか情報収集に成功した。
話はできなかったようなので、さすがに空間系に関する能力は分からなかったがな。
「さて、やっておくか──『最適化』」
膨大に増えたスキルを、かつて習得した合成スキルを用いることでもっともよい形へ纏め上げるというものだ。
かつては相応に時間が掛かったのだが、今では平速思考スキルを使うことでより簡単に作れるようになった。
纏め方が良ければ、出来上がるスキルも強いスキルになる……要するに当たりだな。
何か統一した感じで合成すると、いい感じになるらしい。
「完成っと……【英勇再現】か。あくまでメインのスキルだけを纏めたみたいだな」
ちなみに唯一スキルの数は、すでに五個を超えている。
さすがに十個とか、いかにも主人公っぽい数では無いんだよなー。
「あとはここでスキルを得たら、自動的に合成しておくようにしておいて……これで良しにするか」
本当は分身体がスキルを得た瞬間に還元したいが、そこら辺はもう少し成長しないと共有できないらしい。
勇者のスキルでブーストが掛かっていたとしても、【勇者】の補正が無いのであんまり多くはないんだよな。
「さて、帰るとしよう……分身たち、楽がしたいならもう少し頼むぞ」
「あいあい」「了解っと」「よくもまあ、殺されかけた記憶を見てそんな簡単にいえるよな」「だって俺だぞ?」「気にすると思うのか?」「「「「「たしかに!!」」」」」
「……ほら、どんどん行ってこい。俺はアイツを育てるのに忙しいんだ」
「「「「「あいよー……面倒だな」」」」」
異口同音にそう告げてから、彼らは戦場へ赴く……便利なスキルが増えたから、生存率は上がるだろうな。
◆ □ ◆ □ ◆
「──急に成長したな、もうできたのか」
「えっ? これって、イムさんの魔道具のお陰じゃないんですか?」
「それもあるんだろうが……たぶん、お前の力の影響だろうな」
人形、そして傀儡君である英雄を完璧に操作する様子を見て、そんなことを考える。
これまでのことから考えて、能力が道具に関するものだということは分かっていた。
だがコイツの能力はその上、道具の性能を限界まで引き出すモノなのかもしれない。
「けど、【英雄】はそのまんまだな……何か切っ掛けでも必要なのか? なら、強引に覚醒させるか」
「あ、あんまり受け入れたくはないんですけど……拒否って、できますか?」
「……いやまあ、二つ選択肢があるからどっちがいいか選んでほしいだけだ」
俺としては一択だったんだが、嫌がるヤツに強要してもイイ結果が出ないことは理解しているので選ばせる。
人ってのはそれを自分で選んだって記憶があれば、大抵のことには耐えられるからな。
「一つはお前の予想通り、死線の果てに覚醒するという英雄譚の王道だ。俺が用意する相手に命懸けの戦いをしてもらって、覚醒を促す方法だ……時間は掛かるかもしれないが、安全に覚醒できるだろうな」
「うぅ……他の方法は?」
「俺の力でまた強引に促す。死ぬことは無いが、何がどうなるかまったく予想が付かないのが問題だな。ただ、体に傷とかはできないしわりとすぐに終わると思うぞ」
「──では、二つ目をお願いします」
その解答の速さに感嘆の息を漏らす。
どちらでも俺は構わなかったのだが、説明してもなお後者を選ぶ確率は低いんだろうなと思っていた。
「ふーん、じゃあ始めるぞ」
「へっ? もっとこう、何か訊いてくるものなんじゃありませんか?」
「……無駄だろ、時間の」
隠さない本音を告げ、準備を始める。
相手をぶっ壊してもいいならすぐにできるのだが、俺とてそこまで処理を面倒臭がるほど日本人の義理人情を忘れてはいない。
しっかりと精神のバックアップぐらい、予め取っておくつもりだ。
それがあればたとえ二、三回精神崩壊しても収拾はつくだろう。
「あ、あの……今、何かとんでもないこととか考えてませんでしたか?」
「気のせいだ」
「で、でも……その──」
「勘違いだ。ほら、準備も済んだからさっさと始めるぞ……ちょうどいいスキルがさっき手に入ったから試してみよう」
実験ですか!? という声が聞こえたような気がしないでもないが……まあ、どうでもいいので無視をしておく。
「何をするか言うから、絶対に心に刻んでおけ。お前は向き合う、自身の根源と。そして決める、己の在り方を。『英雄』としてどんな【英雄】になりたいのか……文字通り、命懸けでな──『眠れ・覚醒篇』」
先ほど作った暗示を使い、必要な能力を一気に作動させて強制的に眠らせる。
そして、サリスは長い夢を見る……俺もまた、布団に入るんだけどな。
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