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大きな戦いに挑もう
覚醒後を見守ろう
しおりを挟む「……結果は上々、いいスキルだな」
サリスは現在も多対一の圧倒的ピンチの中で、戦闘を行っている。
人形を準備していても、修復や生成を行わない限り数は着々と減っていく。
さすがにそこまでのサービスをしてやるのはどうかということで、自分でやらせることにしている……という建前で何もせずのんびりとする時間を確保している。
「いやー、便利だな。サリスとの関係、ここで終わるのが実に残念だよ」
まあ、その気になれば従魔たちを呼び出すことができるけどな。
今は彼女以外いないので、必然的に頼りたくなる……長い物には巻かれたいわけだ。
「相手が一般人が相手なら、最初から人形で殲滅できたのにな……そこのお前は、どう思うんだ?」
「──よく気づいたな」
独り言を呟くのはいつものことだが、今回は特別に話し相手がいた。
もっとも、俺が招いたわけでもなく勝手に近づいてきたわけだが。
「俺の領域に入ると、すぐに分かるんだよ。別に戦う気がないみたいだから無視したが、どうする……約束を果たそうか?」
「止めておこう。あそこで欲に眩んだバカどもと違い、絶対に戦ってはいけない相手ぐらい弁えている。どうか、生かしてはもらえないだろうか?」
「……殺すのも面倒だし、別に構わないぞ。ただ──そこのイスとテーブルよりこっちに来たらアウトにするからな」
「了解した」
暗殺者のような恰好をした男だが、邪魔をしないというので話し相手にしておく。
……あっ、今さら思い出したがさっき俺を暗殺しようとしたやつじゃないか。
「まっ、別にいっか。別にいいぞ、また隙を伺って殺そうとしても……なあ?」
「心が広いんだな、兄さん。そういや、人形がどうとか言ってなかったか? あれって、どういうことだ?」
「ああ……そういえば、そんなことを言ってたかな? 暇だし、話してやるよ」
「助かるよ」
そうこう言っている間も、サリスと人形たちは戦い──擦り減っていく人形。
さっさと説明しないと、実例を見せることもできなくなりそうだな。
「あの『軍雄人形』は、要するに【英雄】と戦えるレベルのスペックを誇っている人形なわけだ。俺が経験した戦闘データも入っているから、軽く指示を出すだけで勝手に戦うこともできる」
「ふーん、便利なんだな」
「そうそう、たとえば今もやっぱり殺そうとしてくる相手とかのデータもあるぞ。異常に多かったからな」
「……あっ、やっぱり?」
分身がもっとも恐れていた相手、それこそが目の前に居る【暗殺勇者】である。
分身がかなり狙われたこともその理由、数人ほど殺されているわけだし。
「さすがに【勇者】みたいに単独でも戦えるような輩はともかく、【英雄】ぐらいの奴が相手ならそれなりに戦えるぞ」
ちなみに【勇者】は数人単位の強化しかない代わりに、本人も超強化されている。
対して【英雄】は本人の強化度が【勇者】より低い代わりに、対象人数が多い。
現在は【勇者】がたくさんいるので、さらなる調整が行えている。
……ということを口にするつもりはないのだが、人形はそれだけの価値を秘めている。
「少しずつ破壊できているみたいだけど、減れば減るほど一つずつに精密な操作を行えるようになる……あんな風にな」
「なるほどねぇ、たしかに面倒臭そうだ」
人形の操作は魔力なので、相手はそれが尽きるのを待っているだろうが……その瞬間が訪れることは無い。
俺の与えた指輪の効果は、思考の整理と共に魔力の自然回復を高めるというものだ。
人形の操作を練習させるために仕込んだものだが……うん、異様なほど活躍している。
しかしそれに性能のリソースを注いでいるため、それ以外の効果など存在しない。
今もなお戦い続けていられるのは、彼女の才と諦めない精神によるものだろう。
「そして何より、少しずつ慣れている。アイツの一番凄いと思ったところは、人形の操作能力じゃない……道具だと認識した物を操ることができる、その適性だ」
「その言い方って……おいおい、まさか」
「そういうこと。ほら、始まるぞ……最高に最悪な能力の使い方が」
本来は開花しなかっただろうに、俺との出会いでそれは目覚めてしまった。
なんて前振りはともかく……派手な演出もなく、戦いは終幕を迎える。
◆ □ ◆ □ ◆
「お疲れ様、その様子からして……がっぽり儲けたみたいだな」
「こ、こんなに……ほ、本当に大丈夫なんでしょうか?」
「さて、俺は初めてだからな。一番強いヤツが総取りするってのは……どうだ?」
「ああ、昔は割とあったらしいぞ。今は適正者が居ないらしいが、【覇王】なんかは普通に闘って勝てるわけないらしいし」
いかにもな職業名だし、本当だろう。
今回はサリスが【覇王】の代わりに、大量の勝利報酬を得ただけだ。
「……イムさん、この人はいいんですか?」
「敵対しないみたいだし、別にいいだろう。だろう?」
「ああ、しないしない。それより、イム……だっけ? この娘、どうにかできない? さすがにこれは……俺も不味いからさ」
「ん? ああ……面倒だし、自分でどうにかしてくれよ。そうしたら、俺は何もしないで見逃がすからさ」
サリスが行ったのは、全『英傑』たちに対してハッキングを掛けるというもの。
方法は至ってシンプル──魔力の糸で干渉する、ただそれだけ。
初めは抵抗されるのだが、触れているだけで彼女の能力が作用して少しずつ抵抗の無効化を学び……成功する。
──彼女こそが、【道具英雄】に目覚めた最強の道具使いであった。
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