見捨てられたのは私

梅雨の人

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明日は亮真様のお誕生日でございます。 

信じられませんけれども約一年ほど亮真様とまともに顔を合わせることも出来ておりません。 

はしたないとは思いますけれども幾度も都合を窺わせていただいておりましたが無駄に終わっておりました。

亮真様が私のような不出来な婚約者を恥じて避けてらっしゃるのか、本当に忙しくしていらっしゃるだけなのか、それともほかの理由がおありになるのか。一年も経ってしまった今ではもう深く考えることをあきらめてしまいました。 


―――あとひと月で結婚式ですのに。 

顔も合わせぬまま着々と準備は進められておりますけれども。 

私一人であちらに嫁ぐ身としては、今は不安で仕方ありません。きちんと向こうの御家族に受け入れていただけるだろうかと眠れぬ夜を過ごしております。 


毎年亮真さまはお誕生日の日には身内の方とご友人を誘っておられます。 

私も婚約者になってからは毎年屋敷にお呼ばれされておりますので、今年も招待状を頂きました。 

ずっと亮真様とお話しする機会がなかったので、亮真様の好みが以前と同じかどうか存じ上げませんので、あちらの使用人の方にお願いして亮真様の好みなどをこっそりと確認していただきました。 

 

後日、亮真様は老舗の竹光屋さんの万年筆を好んで使っているようだと教えていただきました。 

竹光屋さんの万年筆は繊細なつくりえすが持ちがよく機能性も優れている為すぐに品切れになってしまうようです。 

急いで竹光屋さんに問い合わせてみますと案の定品切れで、万年筆が届いたのは亮真様の誕生日前日でございました。 

亮真様にお気に召して頂けると良いのですが。 


◇◇◇◇
 

そして今日は亮真様のお誕生日でございます。 

 

招待状に書かれていたのは午後3時からとなっておりましたので、何かお手伝いが出来るかもと少し早めに伺いました。 

屋敷の前に車を止めてもらって玄関先に伺うと、外にまでにぎやかな声が聞こえてきます。 

時間を確認しましたが、指定された15時にもなっておりません。 

呼び鈴を鳴らししばらく扉の外で待っておりますとお義母様が玄関先に出迎えにきてくださいました。 


「ご無沙汰しております。本日は亮真さまのお祝いに呼んでいただきありがとうございます。お義母様お元気でいらしたでしょうか。」 
 

当たり障りのない挨拶を申し上げましたが、お義母様は無言のまま挨拶の為頭を下げた私を見下ろしております。


「あの?お義母様? 」

何か粗相をしてしまったのかしらと不安がよぎりますが、特に思い当たることもありませんのでお義母さまのお言葉を待ちます。 

「12時からと言っていたのに、何をのんきにこんな時間に…とっくに食事も済ませてしまって今は皆さんで歓談をしながらゆっくりしているところなの。 
小雪さん、あなた…亮真の婚約者なのにこんなに遅れてくるなんて…」 

「12時からでございますか?でも頂いたこちらの招待状には15時からと「あらあ小雪さん。なかなかいらっしゃらないから心配して使いを寄越そうかと思っておりましたのよ。ねえ、お義母様?」 

「ええ、そうね。琴葉さんの言うとおりだわ。とにかくお入りなさい。亮真は二階のシガールームにいるわ。」 

そういうと、お義母様は琴葉義姉様と一緒にお茶に向かわれました。 
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