10 / 147
10
しおりを挟む
「小雪、我が藤堂家が別に大河内家と縁を結ぶ必要はない。現に向こうから是非にと小雪を望まれただけだ。私は小雪のことを大事にしてくれる伴侶と幸せな人生を送ってほしいと思って、…あの男なら任せてもいいかと思っていたのだが少し違ったようだ。
このことを踏まえて小雪に聞きたい。
ーー小雪は大河内亮真と夫婦になりたいか?ーー 」
「私は…私は、…亮真様をお慕いしています。亮真様と婚約者になってからずっと亮真様に見合う女性になりたいと努力してまいりました。それは、亮真様の婚約者としての務め…いいえ、亮真様に少しでも好意を向けていただきたいからです。それに…いつも無口な方ですがそれでもお会いすると何気ないやさしさを感じてしまうのです。それが…それがとても嬉しくて… 」
「そうか…。」
折角お兄様のおかげで楽しい時間を過ごしておりましたのに、こんな話になってしまって申し訳なく思ってしまいました。
◇◇◇◇
それから数日後、亮真様の使いの方がお手紙を持っていらっしゃいました。
『君の誕生日の日に予約していた店から請求が来ないので不思議に思っていたが、問いただせば君自身が支払ってしまったというではないか。今度埋め合わせをさせてくれ。』
期待してはいけないとわかっておりましたのに、もしかしたらまた以前のようにお茶にでも誘っていただけるのかもと愚かにも思ってしまった自分が嫌になってしまうのでした。
◇◇◇◇
あれからまた月日は流れ、暖かな日が続いております。
桜の花も満開を迎え、藤堂家の敷地の桜も見事に花を咲かせております。
「お兄様、よろしければお花見に一緒に行ってはいただけませんか?」
快諾してくれたお兄様が、では今から行こうとおっしゃるので慌てて身支度を整えます。
「きれいだなぁ小雪。いつまででも眺めていられる気がする。」
「ええ、とてもきれいですね。お兄様。」
桜を一望できる丘までやってきた私たちは、そこでお茶を飲みながらゆっくりと桜を眺めることにいたしました。
『ああ、とても幸せだ。愛しい君とこうして素晴らしい桜を眺めることができるなんて。結婚式が待ちきれないよ。そうしたら君とこうしていつでも一緒にいられる。』
『まあ、あなたったら大げさね。ふふふっ。』
少し離れた席に座る男女の会話が聞こえてまいります。
「羨ましいですわ…」
「小雪…」
思わずぽつりと零れ落ちた私の言葉にお兄様は眉根をキュッと寄せられておりました。
亮真様はこの満開の桜をどこかで愛でておいでなのでしょうか。
少しは私と一緒に桜を見たいと思ってくれているといいのですが。
出来ればあなたと一緒に見たかったと言ったら亮真様はどのような顔をなさるのでしょうか。
また、忙しいと断られるのでしょうか。それとも返事すら頂けないのでしょうか。
美しい桜を前になぜか気持ちは塞いでいくのでした。
「そういえば小雪、知り合いに小鳥に興味はないか聞かれていたんだった。帰りに見に行ってみようか?」
「小鳥ですか?」
「ああ、なんでも妹さんが嫁ぎ先へ持って行きたかったらしいが、何かの理由で実家に置いていくことになったらしい。そいつは残された小鳥達を持て余していてね。小雪にどうかと聞いてきたんだが。」
「ぜひ見に伺わせてください。」
桜を見に行ったその日、思わず鳥かごに住むかわいい二羽の小鳥が我が家にやって参りました。
このことを踏まえて小雪に聞きたい。
ーー小雪は大河内亮真と夫婦になりたいか?ーー 」
「私は…私は、…亮真様をお慕いしています。亮真様と婚約者になってからずっと亮真様に見合う女性になりたいと努力してまいりました。それは、亮真様の婚約者としての務め…いいえ、亮真様に少しでも好意を向けていただきたいからです。それに…いつも無口な方ですがそれでもお会いすると何気ないやさしさを感じてしまうのです。それが…それがとても嬉しくて… 」
「そうか…。」
折角お兄様のおかげで楽しい時間を過ごしておりましたのに、こんな話になってしまって申し訳なく思ってしまいました。
◇◇◇◇
それから数日後、亮真様の使いの方がお手紙を持っていらっしゃいました。
『君の誕生日の日に予約していた店から請求が来ないので不思議に思っていたが、問いただせば君自身が支払ってしまったというではないか。今度埋め合わせをさせてくれ。』
期待してはいけないとわかっておりましたのに、もしかしたらまた以前のようにお茶にでも誘っていただけるのかもと愚かにも思ってしまった自分が嫌になってしまうのでした。
◇◇◇◇
あれからまた月日は流れ、暖かな日が続いております。
桜の花も満開を迎え、藤堂家の敷地の桜も見事に花を咲かせております。
「お兄様、よろしければお花見に一緒に行ってはいただけませんか?」
快諾してくれたお兄様が、では今から行こうとおっしゃるので慌てて身支度を整えます。
「きれいだなぁ小雪。いつまででも眺めていられる気がする。」
「ええ、とてもきれいですね。お兄様。」
桜を一望できる丘までやってきた私たちは、そこでお茶を飲みながらゆっくりと桜を眺めることにいたしました。
『ああ、とても幸せだ。愛しい君とこうして素晴らしい桜を眺めることができるなんて。結婚式が待ちきれないよ。そうしたら君とこうしていつでも一緒にいられる。』
『まあ、あなたったら大げさね。ふふふっ。』
少し離れた席に座る男女の会話が聞こえてまいります。
「羨ましいですわ…」
「小雪…」
思わずぽつりと零れ落ちた私の言葉にお兄様は眉根をキュッと寄せられておりました。
亮真様はこの満開の桜をどこかで愛でておいでなのでしょうか。
少しは私と一緒に桜を見たいと思ってくれているといいのですが。
出来ればあなたと一緒に見たかったと言ったら亮真様はどのような顔をなさるのでしょうか。
また、忙しいと断られるのでしょうか。それとも返事すら頂けないのでしょうか。
美しい桜を前になぜか気持ちは塞いでいくのでした。
「そういえば小雪、知り合いに小鳥に興味はないか聞かれていたんだった。帰りに見に行ってみようか?」
「小鳥ですか?」
「ああ、なんでも妹さんが嫁ぎ先へ持って行きたかったらしいが、何かの理由で実家に置いていくことになったらしい。そいつは残された小鳥達を持て余していてね。小雪にどうかと聞いてきたんだが。」
「ぜひ見に伺わせてください。」
桜を見に行ったその日、思わず鳥かごに住むかわいい二羽の小鳥が我が家にやって参りました。
1,299
あなたにおすすめの小説
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
邪魔者は消えますので、どうぞお幸せに 婚約者は私の死をお望みです
ごろごろみかん。
恋愛
旧題:ゼラニウムの花束をあなたに
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました
戻る場所がなくなったようなので別人として生きます
しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。
子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。
しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。
そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。
見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。
でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。
リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。
ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。
ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。
対面した婚約者は、
「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」
……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。
「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」
今の私はあなたを愛していません。
気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。
☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。
☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる