見捨てられたのは私

梅雨の人

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あれから一宮様に屋敷に使いを出して頂きました。すぐに亮真様がいらっしゃってくれるのではと期待してしまいましたが、次の日になってようやく屋敷から迎えがよこされて屋敷に帰りました。 


数日後、妙子さまの旦那様がわざわざ私を訪ねて屋敷にいらっしゃいました。 

役者にしても一躍大人気になりそうなほど美丈夫な妙子さまの旦那様の突然の来訪に屋敷中の女性の使用人たちは色めきだっておりました。 
 

「その、この前は恥ずかしいところを見せてしまったね。申し訳ない。私を助けてくれて本当にありがとう。夢の中で妙子に叱られたよ。私の後を追ってきたら許しませんからねっ。てさ。」 


泣き笑いの表情でそうおっしゃる妙子さまの旦那様は、これを、と言って何かを差し出してきました。差し出されたのは私達がまだ幼かった時に一緒に買い物に出かけた時に妙子様が購入したガラスでできた繊細なつくりをした置物でした。 

女の子二人が手をつないで楽し気に寄り添う可愛らしいもので、ずっと私達も仲の良いお友達でいましょうねと言って笑いあったのを想いだしてしまいました。 

「ああ、やっぱりこれだけはあなたに持っていてもらえたらと思って持参したけれど、うん。これでよかったんだろうな。妙子がね、よくこの置物を眺めては小雪さんの話を楽しそうにしていたんだ。」
 

うんうん、と満足そうな顔をした妙子さまの旦那様は少し吹っ切れた表情をされておられました。二人でしばらく妙子さまの思い出話をしながらお互いの瞳からは涙が流れておりました。


その夜月明かりに照らされたそのがガラス細工を眺めていると突然亮真様が私の部屋に入ってこられました。 

 

「ものすごい美丈夫が堂々と君に会いに来たんだって?」と突然亮真様に言われてしまった私は亮真様のおっしゃられた意味を理解するまで少し時間がかかってしまいました。 
 

「…そんなにその男からもらったガラス細工が大切なのか?」 

そうつぶやかれた旦那様は静かに私に近づかれます。そして突然ガラス細工をつかむとガタンッと無造作に倒されてから部屋を出ていかれました。 

「どうして…亮真様。どうして…」 

ガラス細工は幸いにも頑丈だったようで少し傷が入っただけで砕けることはありませんでした。 
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