見捨てられたのは私

梅雨の人

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「俺に任せて君はついて来てくれ。」 

聞きなれない男性の声が聞こえたと思ったら、あっという間に妙子さまの旦那様は背の高い男性に運ばれて行きます。 

呆然としている私を振り向いたその男性は早くあなたも一緒に来るんだと再び告げ私を待っていてくださいます。 

這う這うの体でどうにかその男性に遅れないように歩き続けておりますと、休憩所で待たせておいた運転手が血相を変えてかけてまいりました。 

ずぶ濡れの状態で休憩室に到着した私は、すぐに妙子さまの旦那様とその男性ともに車に乗りお医者様のもとへ急ぎました。 

体が冷えすぎたのでしょう。妙子さまの旦那様の体が震えております。今の私のように。 

視界がだんだんぼやけて頭がぼうっとしております。頭の奥がズキンズキンと鈍い痛みを訴えて背中がぞわっと冷える感覚に冷や汗が出てきました。 


妙子様、どうか妙子さまの旦那様をお救いください 

徐々に視界がぼやけて猛烈な眠気に襲われたわたくしはそのまま意識を手放しておりました。 

◇◇◇◇

おでこにひやりと冷たいものを置いてくださっている方がおります。その気持ちよさに誘われるように意識が戻りました。 

ゆっくり目を開けますと、先ほど私と妙子さまの旦那様を助けてくださった男性が私の横に座っておられました。 


「ああ、よかった目が覚めたね。気分はどう?すぐに医師を呼んでもらおう。おい、君、医師を呼んできてくれ。」 

「あの、私は一体…」 

「ああ、びっくりしたよ。ここについたとたん、君はいきなり意識を失って倒れたんだ。すごい熱があるじゃないか。君の抱えていた男性と同様に真っ青になって熱も引かないし心配したよ。今日はこの医院は人手が足りないといっていたから君の看病を俺がかってでたんだ。といっても頭に乗せる氷水を冷たいのに取り換えることくらいしかできていなかったんだが。あと、きみのところの運転手に君のことをご家族に伝えてもらうように頼んだから、今は何も考えずにここでゆっくりしたらいい。」 


「そこまで初対面の方にご迷惑をおかけするのは気が引けてしまいますので…。」 

「…初対面ねぇ。まあいいか。気にしなくていい。それよりも、君の名前を教えてもらってもいいだろうか。先ほど君の名前を聞き忘れていたからな。」 

「わたくしでございますか?」 

「ああ、私は一宮東吾だ。」 

「大河内…大河内小雪と申します。改めてこのたびは助けていただいてありがとうございました。」 

「気にすることはないさ。ああ、でも驚いたよ。あんなところで君のような美しい女性がびしょ濡れでさ。あの雨の中息を切らして大の男を引きずっていたんだ。俺でなくても何事かと思うぞ?」 

「それで、妙子さまの旦那様は…?」 

「ああ、君の夫君ではかったのか。まだ熱でうなされているが時期に目が覚めるだろう。」 

「よかった…。あの方は私の亡くなった大切な親友の旦那様なのです。ちょうどお墓参りに伺って倒れられているのを目にしましたもので無我夢中で…。」 

急にその時の自分の姿を思い浮かべて恥ずかしくなってしまいました。 

一宮様はそんな私を笑うことなどせずにじっと私のことを見つめておられました。 

これが私と一宮東吾さまの出会いでございました。 

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