見捨てられたのは私

梅雨の人

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「なあ、小雪、やっぱりこの前の俺たちの結婚1周年記念の間に授かった子だろうな。時期的にもあってるし心当たりがありすぎる。」 

「東吾様ったら…」 

「名前を何にしようか、男でも女の子でもどちらでもいいが、小雪に似ていたら良いな…」 

「私は、東吾様に似ている方がいいと思いますよ?」 

「なんでだ小雪?」 

「それはだって…背も高くがっしりしていて、お顔もとても…」 

「とても…なんだ?小雪?」 

「それはっ、東吾様の意地悪…」 

「聞きたいなあ、その続き。小雪?」 

「あちらこちらの女性が振り返ってぼぅっと東吾様をみつめているではないですか。どこに行っても私が側にいても。いつも、いつも…」 

「なんだ、もしかして焼きもちか小雪?で?俺の容姿は小雪のお眼鏡にかなってるってことでいいんだな?」 

「それは…はい…」 

「それは良かったよ。しかし小雪、小雪だって周囲の視線を惹きつけまくってるんだぞ?俺がどれだけ牽制しても後から後から湧くように。まあ、小雪は絶対に誰にも渡す気はないけど―――っと、石段だぞ、気を付けて小雪。」 

目の前に石段が現れるときゅっと繋いでいる手を繋ぎなおした挙句腰に手を添えて下さる東吾様の過保護ぶりに苦笑致します。 

「東吾様、この石段くらいどうということはございませんよ。」 

「いや、しかし…」 

妊娠は病気ではないのだからずっと部屋にこもっているのも良くないので、適度に体を動かして水分を十分にとるように心がけるようお医者様がおっしゃっておられました。

それからは、こうして東吾様と一緒に庭園を歩くのが日課となっております。 

私を外出させるのは不安だという東吾様の気持ちを汲んで、出来る限り屋敷から出ないようにしておりますが、こうして東吾様がいつもそばにいて下さるので何の苦も感じることはございません。 

つわりで食べることも出来ず寝台の上で横になる日もございますが、東吾様が背中をさすって下さったり、食べやすそうなものを色々用意してくださるのでつつがなく日々を過ごせております。 
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