見捨てられたのは私

梅雨の人

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大勢の招待客の方々を目の前にお兄様と東吾様にはさまれるように立ち並び記念式典が粛々と過ぎてゆきます。 

ふと視線が気になってそちらの方向に目を向けますと、吸い込まれるように一点に目が行ってしまいます。そこには一番後ろの隅の方に佇む亮真様が立っておりました。 

このようにたくさん人がいる中でお互いの視線が絡み合っているのが分かります。 

大河内の家を逃げるように出てきたあの日以来初めて目にする亮真様は、心なしかお痩せになられております。 

私と目が合って一瞬不安な表情をされた亮真様を見てももう心を動かされることはありませんでした。そんな私自身に安堵いたします。 

思いつめたような表情の亮真様に、以前のように溌溂とされた表情に戻られますように、あなた様も幸せになりますようにと願いを込め、せめてもと笑顔を手向けさせて頂きます。 

すると亮真様の口元が、「幸せに」と告げてくださった気が致しました。 

頷いた私に亮真様は安堵の表情を向けてこられているのを見て、お別れもまともに出来ませんでしたが、ようやくこれで亮真様ときちんとお別れすることが出来たように思えました。 

 
◇◇◇◇
 

「それで、小雪。誰に笑顔を向けていたんだ?」 

完成式典がつつがなく終了し、帰路に就いた私に東吾様が詰め寄って参りました。 

笑顔ですのに目が笑っておられない東吾様に、先ほどの亮真様とのやり取りをありのままに説明させて頂きます。 

 
「そうか…馬鹿だよなああいつも。まあそのおかげで小雪が今ここにいるわけだし…」 

一人でぶつぶつつぶやく東吾様がようやく納得されたのかこちらを振り向かれました。 

「小雪、今更だが俺と夫婦になって後悔はないか?」 

「東吾様、絶対に後悔などございません。幸せなだけでございます。東吾様の妻となれたことを後悔する日など絶対に訪れませんよ。」 

多少強くそう言った私を珍しく気弱になられている東吾様は抱きしめてくださいます。 

「男の焼きもちは醜いか?」 

「いいえ、焼きもちを焼いてくれてとても幸せ者でございます、東吾様。」 

「そうか?」 

「ええ、東吾さまだから嬉しいのですよ?だって東吾様は私の旦那様なのですから。」 

「そうか、そうだよな!」 

機嫌を直された東吾様がゆっくりと顔を近づけてこられたのでゆっくりと瞳を閉じます。 

愛する人の口づけに心からの幸せを今日も感じることのできた一日でございました。 
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