俺を注意してくる生徒会長の鼻を明かしてやりたかっただけなのに

たけむら

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第10話

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「あのさ」
「なんだよ、数学の宿題なら自分でやれよ」
「いや、それはどうでもよ…くはないんだけどさ」
「じゃあ、忘れ物でもしたのか」
「いや、忘れ物はたぶんしてな…してないはず…なんだけど…」
「じゃあ何だよ」
「え、ていうか、俺が治孝に助けを求めるのって、宿題か忘れ物のことだと思われてるの?」
「ああ」
「まじ?」
「まじ」
「…まじのまじ?」
「うん」
「ええ…泣いちゃうんだけど」
「泣くな。宿題忘れたんだったら手を動かせ、落第生」
「…ひえっ」

今日も朝から会長の寒いギャグを飛ばされたらかなわないので、護衛代わりに嫌がる悪友を引き連れて少し早めに学校へとやってきた。昨日家の前に張り込んでいたので、ちょっとやそっと家を出る時間を早くしても変わらないんじゃないかとも思ったのだが、どうやら会長にそこまでの根性はなかったらしい。散々かわいいとか好きとかのたまっておいて所詮その程度なのだ。しかも、あの人は一応生徒会長だし、朝にも挨拶活動があるはずだし、そうでなくても全校生徒に目を光らせているわけで、俺如きに構っている暇はないのだ。そんなことは当然わかっていたはずだったのだが、ちょっとだけ拍子抜けしてしまう。

「治孝、これわかんない」
「どれだよ」
「(1)だけど」
「1問目だぞ」
「…昨日、教科書忘れたからここの部分の授業聞いてなかった」
「声かけろよ」
「…だって気まずかったし、治孝が目を合わせてくんなかったし」
「…はあ」

正直に助けを求めたら、今度は隣の優等生が頭を抱えた。いくら昨日習ったばかりと思われる範囲の一番最初でつまづいているからって、そんなにでかいため息をつかなくたっていいじゃないか。バカの自覚はあるけれど、こっちだって米粒くらいのなけなしのプライドがあるわけで、それをため息なんてつかれてしまうとちょぴっとは傷つく。まあ授業を聞いていなかったのは、自業自得だけど。

「お前ってさ、鏡とか見ないタイプだろ」
「何、いきなり藪から棒に」
「寝癖がついてても直してこねえし、顔になんかくっついててもそのまま登校してくるし」
「ねえ、なんでそんな死体撃ちしてくるの」

勉強ができないことに加えて、生活習慣のことまで注意され始めたら、かなわない。先ほどのため息で、HPが赤ゲージになっていたところに、はかいこうせんを撃ち始められても困る。確かに鏡はあんまり見ないタイプだけど、それは朝が弱いからであって、決して身なりに気をつかっていないとかそういうわけじゃない。しかも、昨日の朝なんて、もうどっと疲れていて、自分でもよくぞ学校に間に合ったと褒め称える記念式典のひとつやふたつくらい開いて、歩行者天国を開催して、ついでに記念日を制定してもよかったくらいだったのに。

なんで昨日は朝起きられないほど疲れていたのかは、俺ではなく、今頃全校生徒に挨拶をしているであろうあの人に聞いてほしい。昨日の朝起きられなくて、体の節々が痛んでいて、おまけに寝癖だか米粒だかが付いていたのは全部会長の責任だ。でも、昨日の朝になっていきなり治孝が寝癖にブチ切れるようになったとは考えづらい。一体何がどうなっているのだろうか。

「…バーカ」
「なっ、そんな子に育てた覚えはありませんっ」
「はあ?」
「もう俺は悲しいよ。丹精込めて育てた治孝がこんな口を聞くようになっちゃって」
「お前みたいな奴に育てられてたまるか」
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