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従僕を解雇されました
従僕を解雇されました(3)
しおりを挟む翌日になってトマスから聞いたところによると、第五騎士団の副団長が少し前から行方不明になっていたらしい。その穴を埋めるためにラインハルトが昇格し、急遽、辞令が出されたようだった。昇格の話をしたときの彼の浮かない表情も、この件が影響していたのかもしれない。
一晩寝ずに考え、ユリウスは「都に残ります」と返事をした。
ラインハルトは「そうか」と言ったきりしばらく何も言わなかった。
「都に帰って来たときは、顔を見に行く」
言葉を選ぶようにそう言ってくれたが、目を合わせることもないそのそっけなさから、エイギルの家に顔を出すついでにユリウスの顔も見るという意味だろうと解釈した。
ユリウスがラインハルトの従兄の義弟でなければ、彼との縁はここで切れてしまっていたような。そんな寂しさを覚えた。
ただ、自分がどうしたいかは、既に心が決まっている。
ラインハルトが北方へと旅立ったのは、それから五日後のことだ。
出立の日。ユリウスはワーグナー夫妻と共に家の門まで見送りに出た。
彼は、黒毛馬のニゲルだけ連れていた。白毛のアルバはユリウスが譲り受けることになっている。
エイギルの家にも厩舎がある。そこで飼ったらいいと言われて、ユリウスにとっても馬が必要だったため、ありがたく頂戴することにした。
ラインハルトがギルベルトとエレナに抱擁するのを見たのは初めてだった。彼の両親はすでに亡くなっており、二人は親代わりのような存在だったのだろう。
最後にユリウスにハグをすると、額にキスをしてくれた。別れを惜しんでいると勘違いしてしまいそうな、強すぎる抱擁と優しいキスだった。
いつものようにラインハルトがユリウスの頭をくしゃりと一撫でし、体を離した瞬間――、必死に堪えていたものが零れ落ちそうになった。
でも、泣いたら気持ちを悟られてしまう。
だから必死に無表情を保ち、無事を祈っていることだけ伝えて、ラインハルトを送り出した。
ユリウスが食いしばっていた歯を緩め、自分に泣くことを許したのは、嗚咽が聞こえないくらい彼の後ろ姿が遠ざかってからだ。
「何か理由があるのです。でなければ。ライニ様がユーリ様を傍に置きたがらないはずがありません」
エレナはそう言って、慰めてくれた。
そんなふうに言ってくれるということは、エレナはまだ、ラインハルトの婿入りの噂を知らないのだろう。王弟という微妙な立場にある主が、強力な後ろ盾と美しい伴侶を同時に得られるのだ。きっとその噂は、親代わりの二人にとって、嬉しい噂に違いない。
ラインハルトとの縁が切れれば、ワーグナー夫妻との縁も切れる。そのこともまた、無性に寂しかった。
嗚咽が落ち着いたところで目元を拭い、ユリウスは顔を上げた。
「じゃあ、僕もそろそろ姉様のところに行きます。二人ともお元気で」
これからは息子のところに身を寄せ、商売の手伝いをするという二人に挨拶をし、ユリウスも白馬を連れて、主のいなくなった家を後にした。
その足で姉の家を訪ねたのは、これからそこで暮らすためではない。
エイギルに頼みたいことがあったのと、姉の家族に別れの挨拶をするためだった。
姉には、本当のことを言えば猛反対されることがわかっているので、故郷に帰ることにしたと嘘をついた。故郷の両親には、これからしようと思っていることを正直に手紙に書いて、昨日のうちに送っている。
手紙が着くころにはユリウスは目的の場所に着いているはずだから、今さら反対しても無駄だと諦めてくれるだろう。
姉の家に一泊し、翌朝、エイギルやローザや子供たちに別れの挨拶をすると、ユリウスはアルバに跨り、一人で都を出た。
目指すは、ウェルナー辺境伯領。
従僕として必要とされないなら、せめて騎士団の使用人として、ラインハルトの近くで働き、彼が生涯の伴侶を得て幸せになった姿を見届けようと心に決めていた。
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