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従僕を解雇されました
従僕を解雇されました(7)
しおりを挟む「君、平民のふりして、めちゃくちゃやんごとなきお坊ちゃまじゃないか!」
アルミンの笑い声が一層大きくなる。
それを嗜めるように、従僕長がごほんと咳払いした。
「まぁ。殿下からは今のところ専属の従僕はいらないと言われていますから、ひとまず二人とも、騎士団の従僕として雑用をこなしてもらいます。騎士団が常駐するようになってから、人手不足が続いていますからね。ですが、もし、殿下が専属の従僕がほしいと仰った場合は、一番にイェーガー様を推薦させていただきますよ。今のところ他には適任者はいませんから」
絶対にやめてください、と新人の身で言えるはずもなく。
なんとか回避できないものかと、ユリウスは必死に頭を働かせる。
「でも……。副団長の身の回りの世話は部下がすると聞いたことがあるので……。殿下にも近いうちに、近侍の兵がつくのではないでしょうか……」
「ラインハルト殿下は任務中以外は人を遠ざけておられます。近侍もおりません。そのため、日替わりで従僕を割り当て、洗濯や部屋の掃除をさせております。部屋の掃除の際は、私が立ち会います。お二方にもそのうち順番が回ってきますから、そのときはよろしくお願いしますね」
これ以上、この件に関しての不服申し立ては受け付けません。と言いたげに、従僕長がにっこりと微笑んだ。
部屋を出てからも、ユリウスは、どうにかラインハルトに正体が露見しない方法を考え続けていた。そのため、アルミンにかけられた言葉への反応が遅れた。
「ラインハルト殿下が人を遠ざけているのって、前の副団長が行方不明になっていることと関係があるのかもね」
「……え……?」
「騎士団の人間を信用してないってことじゃない? 君が言っていた刺客とかそういうのが、もしもの話じゃないかもねってこと」
冷や水を浴びせられた気分だった。
行方不明になった前任の副団長。
たまたま枠が空いて、ラインハルトが元々第五騎士団への転属を希望していたため、希望が叶った。ただそれだけの話だと思っていた。
どうして、前任者の二の舞になる可能性に、思い至らなかったのだろう。
『危険を伴うため、一緒に連れて行くことはできない』
ラインハルトは、ユリウスを伴わない理由をそう説明したが、一人で平民街に行くことも、『危ない』と言われていたし、それと大差ない感覚で聞き流していた。
でも、もしかしたら、従僕として傍にいるだけでも危険が伴うほどに、彼の身に危険が迫っているのだろうか……。
「ま、そうは言っても、ラインハルト殿下はエリート揃いの近衛騎士団でも敵う者はいないって話だし。きっと大丈夫だよ」
ユリウスが顔色を失ったからか、アルミンがとりなすように言った。
確かに、剣の腕なら、ラインハルトに敵う者はいないかもしれない。でも、毒なら――……。
ユリウスはふいに、足元の地面が崩れ落ちるような感覚を覚えた。
「……王弟殿下なんだから、そんな危険なところに派遣されるわけないだろ?」
自分に言い聞かせるようにそう返事をしたけど、上滑りした言葉は、一層不安を掻き立てるものでしかなかった。
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