売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹

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第5騎士団

第5騎士団(2)

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 水瓶みずがめを抱えたまま、咄嗟にユリウスはその場にしゃがみこんだ。

「おい。何でまたあの野郎、副団長のくせに食堂に来てんだ?」
「もしかして、これからもずっと食堂で食う気か?」
「しかも王族だろ? 王族が下々と同じもん食っていいのか?」

 近くにいる辺境伯軍の兵士たちがひそひそと話す声が聞こえてくる。話から察するに、騎士団の副団長が食堂に来るのは珍しいことらしい。
 ユリウスも、まさか王弟殿下が一般の兵たちに混じって食事をするとは思ってもおらず、完全に油断していた。
 そう言えば、全ての料理ができあがったところで、料理長が、兵士たちに出すのよりも豪華な食事を銀製のトレイに載せて、どこかに運んで行ったことを思い出した。きっとあれは騎士団長の分だったのだろう。  
 豪華な食事が一人分しか用意されていなかったことから、ラインハルトが食堂に来る可能性に気づくべきであった。
 
 ここの食堂は、入り口でトレイとカトラリーを取り、奥へ進むと、食堂と厨房の仕切り窓から料理が出てくるので、各自それをトレイに載せてテーブルにつくという流れになっている。
 ラインハルトが慣れた様子でトレイに皿を載せ、ホールを振り返ると、奥の長卓テーブルにいた騎士たちが一斉に腰を上げた。

「ラインハルト殿下。こちらにどうぞ」

 騎士たちのリーダーらしき男が声をかける。
 それに対し、ラインハルトはあからさまに鼻白んだ顔をした。

「いや。そっちがいているから、俺はそこでいい。お前たちはゆっくり食べてくれ」

 にべもなくそう言って、騎士たちの隣の、まばらに辺境伯軍の兵が座っているテーブルの空いている席へと腰を落ち着けた。
 彼に悪気がないことはわかっているが、もう少し空気を読んであげても……、と他人事ながらに思ってしまう。
 肩透かしを食らった騎士たちは全員、どうしたものかと困惑した様子で顔を見合わせているし、ラインハルトと同じテーブルにいる辺境伯軍の兵は、明らかに居心地が悪そうだ。

 声をかけた騎士が着席したのを合図に他の騎士たちも一斉に着席し、食事が再開されたが、彼らの会話はなくなり、辺境伯軍のテーブルも、ラインハルトのほうをチラチラ窺いながらのコソコソ話になった。

「どうしたんだ?」

 頭上から声が聞こえてきて、ユリウスは顔を上げた。

「君は今日来たばかりの新人じゃないか」

 言われて、その人が、昼間、城に到着してすぐに、アルミンが声をかけた兵士だということに気がついた。辺境伯軍の兵士だったのか。

「ちょっと立ちくらみしてしまって……」

 かつての主と顔を合わせたくないので隠れています。とは正直に言えないので、苦し紛れにそう説明する。

「大丈夫か? 医務室に連れて行ってやろうか?」

 昼間アルミンが声をかけたときも、訓練中であるにも関わらず親切に対応してくれたし、かなり面倒見のいい人のようだ。
 目尻が下がり気味の甘い顔立ちと少しくせのある明るいブラウンの髪は、どことなくエイギルを思い出させる。エイギルよりは貫禄があるので、年は20代後半くらいか。体格と容貌からして、もしかしたらアルファかもしれないと思った。

「あ、いえ。しゃがんだらよくなったので大丈夫です。でも念のため、水を配るのは、他の人に代わってもらいます」

 確かアルミンが今は皿洗いをしていたはず。それと代わってもらおうと思い、ユリウスは中腰で顔を隠したまま、厨房へと向かった。

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