売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹

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第5騎士団

第5騎士団(3)

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 ユリウスは、アルミンや他の使用人たちに頼んで、食事のときは皿洗いなどの裏方の仕事に回ることにした。それで逃げ切れるだろうと思っていたのだが。働きはじめて一週間が経った頃、仕事の合間に従僕長の執務室に呼ばれた。
 もしかしたら、勝手に仕事を代わってもらったのがよくなかったのだろうかとびくびくしながら部屋を訪ねたところ、話はその件ではなかった。

「騎士団長が君と話がしたいそうなので、今日の夕食後に団長の執務室を訪ねるように」

 執務室に入ると挨拶もそこそこに、そう告げられた。
 心の臓が、急速に早鐘を打ちはじめる。

 ……「騎士団長」って……、「副団長」の言い間違いだよね? それか僕の聞き間違い? ……え? ってことは、ライニ様に見つかったってこと!?

「えっと……、騎士団長ではなく副団長ですよね?」

 かなり動揺していたが。それを訊ねる冷静さは持ち合わせていた。

「いや。騎士団長だ」

 従僕長の神経質そうな顔は、冗談を言っているようには見えない。いや、でも、そんなことあるわけないし――。

「騎士団長ではなく、″副”団長ですよね?」

 騎士団長に呼び出される理由に皆目見当がつかないユリウスは、『副』を強調して同じことを訊ねた。
 これにはさすがに、従僕長がムッとした顔をした。

騎士・・団長だ!」

 意趣返しとばかりに、『騎士』を強調して同じ答えを返される。
 百歩譲って騎士団長の呼び出しだとして。

「騎士団長が、僕なんかにいったいどんなお話があるのでしょうか……」
「私が知るわけないだろう!? それを聞くために君が呼ばれたんだから!」
「そ、そうですよね……。とりあえず、夕食後に執務室に伺うことにします」

 ユリウスは一礼し、従僕長の部屋を後にした。

 使用人の夕食は、兵士たちが食事を終えた後になる。スープの具や肉は残っていないので、野菜の皮や葉や雑穀をスープの残り汁に入れて煮込み、粥にして食べる。
 都にいたときに比べたらかなりの粗末な食事だが、それでも夕食は座って食べられるだけマシだった。朝と昼は、給仕の合間にパンを食べられる日はいいほうで、兵士たちの残した干し肉やチーズを齧って済ませる日も多い。もちろん、座って食べる暇などない。
 夕食を食べ終えるとアルミンが、「お皿は僕が洗っておくよ」と言ってくれたので、お願いすることにし、騎士団長の執務室へと向かった。

 石造りの城は、昼と夜でまったく異なる表情を見せる。昼間はせわしなく人が行き来する通路も、夜になると静寂に包まれ、冷たい石の壁が一層重々しく、圧迫感を感じる。
 最低限、歩くのに支障がない程度に、ぽつぽつと壁に燭台が燈されている。その明かりを頼りに、フード付きのマントを頭からすっぽり被って、壁づたいにこそこそと速足で移動した。
 途中でライニ様と鉢合わせしたらどうしようと思うと、気が気でなかった。幸いにも誰にも出くわさずに、騎士団長の執務室に辿り着いた。
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