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第5騎士団
第5騎士団(5)
しおりを挟む「ラインハルト殿下はガイトナー公爵の従兄弟なので、その縁でお会いしたことはありますが、親しいという程では……」
慎重に言葉を選びつつ答えると、団長はあからさまに期待外れだと言わんばかりの表情を浮かべた。
「そうか……。では、副団長の交友関係について詳しくは知らないか?」
「……と仰いますと……?」
「彼はまだ、妻も妾もいないだろう? だが、遊び相手くらいはいたはずだ。どこのご令嬢と懇意にしていたか、知らないか?」
急に心臓が早鐘を打ち、背筋を冷たい汗が伝いはじめた。
質問の真意はわからないが、呼び出しの理由がユリウス自身ではなく、ラインハルトにあることはわかる。
ライニ様に遊び相手……、かつてはいたのだろうか……。
ラインハルトに思い人がいるという話は以前、エイギルとの会話で耳にした。遊び相手となると、それとはまた別の種類の関係性だろう。
ユリウスがラインハルトの元にいた三か月の間、彼は毎日仕事が終わると真っすぐに屋敷に帰って来ていたし、休日もユリウスと出かけることが多かった。ユリウスの発情期中は娼館に泊まっていたのではとトマスは言っていたが、娼婦は遊び相手に入るのだろうか……。
ただ、いずれにせよ――。
「殿下の交友関係については、僕は何も知りません」
そう答えるしかなかった。たとえ知っていたとしも、本人の許可なしに勝手に喋るわけにはいかない。
しかし、これで諦めてくれると思ったのだが。
団長はさらに別の質問を投げかけてくる。
「ならば、副団長の結婚相手について、ガイトナー公爵や姉君から何か聞いていないか?」
思わず視線を泳がせてしまったのがよくなかった。
「何か聞いているのだな? やはりあの噂は本当なのか?」
噂というのは、あれのことだろう。トマスが言っていた、ライニ様がなんとかって辺境伯の娘婿になるという噂。まさか都だけでなく、こんな辺境地にまで伝わっていたとは。
動揺を悟られぬよう、今度はまっすぐに碧眼を見つめ返した。
「いえ……。ガイトナー公爵からも姉からも、何も聞いていません。……あの……なぜそのようなことをお聞きになるのでしょうか?」
答えを探すように、団長が視線を宙にやった。
「それは……第三王弟殿下が近々ご婚約なさるという噂を耳にしてな。それが本当なら、私が一番に祝いの品をお届けしたいのだ」
そう言って、騎士団長は一度言葉を切った。
机の上に組まれていた指が、ゆっくりとほどかれる。
まっすぐに向けられた視線は、値踏みするような鋭さを失い、「使えない奴」とでも言いたげな冷めたものへと変わっていた。
「話は以上だ。今後もし、副団長の婚姻や交友関係について何か聞いたときは、逐一私に報告するように。それから、私がそれを知りたがっていることについては、誰にも他言しないように」
「は、はい。失礼いたします」
ユリウスは立ち上がって深々と頭を下げ、執務室を出た。
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