51 / 83
王弟騎士の思い人
王弟騎士の思い人(5)
しおりを挟む「ユーリ。君に手紙が来てたよ」
昼休憩中に先に休憩に入っていたアルミンにそう言って手紙を手渡されたのは、庭園でラインハルトと遭遇してから一週間ほどのことだった。
早急に故郷に帰らなければいけないことはわかっている。
ラインハルトと遭遇した翌日には見知らぬ騎士から呼び出され、いつ故郷へ帰るのかと問われた。その騎士は、ユリウスが故郷へ帰る際に護衛として送り届ける任務をラインハルトから命じられたという。
一人で帰れると断ったが、任務を果たさねば除隊させられると言われれば、頑なに突っぱねるわけにもいかない。
「では、帰郷の予定が決まったら、お声をかけます」と言って、それまでの間は騎士団の任務に戻ってもらうことにした。
しかし、毎日の忙しさと使用人の仕事量の多さを思うと、かわりの人がいないのに働き出して早々にやめますと言うのは心苦しく、ずるずると予定を先延ばししているうちに1週間が経ってしまった。
「もしかして、都にいい人でもいるのかい?」
手紙を渡すとき、やけに意味深な笑みを浮かべていると思ったら、アルミンはそんなことを考えていたらしい。
「そんなんじゃないよ。同郷の友人が都の貴族の屋敷で働いているんだ」
見慣れた羊皮紙にチラリと視線を落とし、ユリウスはそう返した。
アルミンが仕事に戻ったあと、ユリウスは周りに人がいないのを確認して手紙の封を解いた。案の定、差出人は、いつも陛下への密書の宛て先に使っていた貴族の使用人――すなわち、陛下からのものだった。
陛下には都を経つ前に、第五騎士団の使用人になるためにウェルナー辺境伯に行くつもりであることを知らせていた。今回の手紙はその返事だった。
『親愛なるユーリへ。
変わりなく過ごしているかい?』
同郷の友人を装った手紙は、いつも通りのそんな文面で始まっていた。
ウェルナー辺境伯に行くと聞いて驚いたことや慣れぬ土地で働くことを心配する内容が書かれており、最後にこう書かれていた。
『兵営のようなむさくるしいところで働くことは、君のように育ちのいい人間には無理がある。できれば今すぐそこを離れて、しばらく故郷でのんびり過ごしてくれ。
――君の親友 オズより』
オズというのは、オズヴァルド七世という陛下の名前から一部を取ったものだ。
陛下はユリウスがラインハルトを追ってウェルナー辺境伯領にまで行くとは思っていなかったようだ。そこまでして、ラインハルトの動向を報告する必要はないという意味だろうか……。
ラインハルトだけでなく、フリッツや陛下にまで、「故郷へ帰れ」と言われているという事実に、更に気分が重くなった。
少しでもラインハルトの役に立ちたかったこと、兵士たちの皮膚病を治療し、喜ばれてやりがいを感じていたことまで、「余計なこと」と切り捨てられたように思えてくる。
あの日以来、ラインハルトが食堂にも姿を見せなくなったことも、ユリウスの気持ちに追い打ちをかけていた。
騎士団長のように部屋に食事を運ばせているわけでもないから、もしかしたら別のところで食べているのかもしれない。別のところ――と考えて浮かんでくるのはカレンの顔で、それ以上理由を考えるのはやめた。
近々、お城で舞踏会がある。それに向けて城中の人が忙しくしている時期なので、今辞めるのは忍びない。舞踏会とその後片付けが終わったところで辞めるほうがいいだろう。
急ぎ辞める意志を伝えておかないと、また決心が揺らいでしまいそうな気がした。
808
あなたにおすすめの小説
溺愛アルファの完璧なる巣作り
夕凪
BL
【本編完結済】(番外編SSを追加中です)
ユリウスはその日、騎士団の任務のために赴いた異国の山中で、死にかけの子どもを拾った。
抱き上げて、すぐに気づいた。
これは僕のオメガだ、と。
ユリウスはその子どもを大事に大事に世話した。
やがてようやく死の淵から脱した子どもは、ユリウスの下で成長していくが、その子にはある特殊な事情があって……。
こんなに愛してるのにすれ違うことなんてある?というほどに溺愛するアルファと、愛されていることに気づかない薄幸オメガのお話。(になる予定)
※この作品は完全なるフィクションです。登場する人物名や国名、団体名、宗教等はすべて架空のものであり、実在のものと一切の関係はありません。
話の内容上、宗教的な描写も登場するかと思いますが、繰り返しますがフィクションです。特定の宗教に対して批判や肯定をしているわけではありません。
クラウス×エミールのスピンオフあります。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/504363362/542779091
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
釣った魚、逃した魚
円玉
BL
瘴気や魔獣の発生に対応するため定期的に行われる召喚の儀で、浄化と治癒の力を持つ神子として召喚された三倉貴史。
王の寵愛を受け後宮に迎え入れられたかに見えたが、後宮入りした後は「釣った魚」状態。
王には放置され、妃達には嫌がらせを受け、使用人達にも蔑ろにされる中、何とか穏便に後宮を去ろうとするが放置していながら縛り付けようとする王。
護衛騎士マクミランと共に逃亡計画を練る。
騎士×神子 攻目線
一見、神子が腹黒そうにみえるかもだけど、実際には全く悪くないです。
どうしても文字数が多くなってしまう癖が有るので『一話2500文字以下!』を目標にした練習作として書いてきたもの。
ムーンライト様でもアップしています。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます
まんまる
BL
メルン伯爵家の次男ナーシュは、10歳の時Ωだと分かる。
するとすぐに18歳のタザキル公爵家の嫡男アランから求婚があり、あっという間に婚約が整う。
初めて会った時からお互い惹かれ合っていると思っていた。
しかしアランにはナーシュが知らない愛する人がいて、それを知ったナーシュはアランに離婚を申し出る。
でもナーシュがアランの愛人だと思っていたのは⋯。
執着系α×天然Ω
年の差夫夫のすれ違い(?)からのハッピーエンドのお話です。
Rシーンは※付けます
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる