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嵐のあと
嵐のあと(4)
しおりを挟む今回の陰謀で罪人として連行されたのは、ウェルナー辺境伯と第五騎士団の団長、軍営の従僕長、そしてケースダルム王国からの使者だ。
副団長と騎士の多くが護送のために都に行くことになったので、現在、城の警備は辺境伯軍が担っている。
フリッツをはじめとした陰謀に加担した兵は、ラインハルトが言っていたように、人質を取られて辺境伯の指示に従っていただけということで、牢に入れられることもなく、事情だけ聞かれて翌日から部隊に戻ったそうだ。
人質として地下牢に捕えられていた彼らの家族も、解放されている。
フリッツにも、これまでのことを謝罪された。
以前、騎士団長に呼び出されたあと、城内で酔っぱらた兵士に襲われかけたことがあったが、あれも、フリッツのことを信用させるために仕組まれたことだったらしい。
兵士の中では唯一親しくなれた相手だったから、その事実は悲しくもあったけど、人質を取られて言いなりになるしかなかった苦しい立場も理解できる。
ラインハルトも無事だったことだし、恨む気持ちはなかった。ユリウスがフリッツを好きになったのはその気さくな人柄が理由で、フリッツのことは今も好きなままだ。
問題が解決し、城の中に安堵感が漂っているかというと、そうでもない。
使用人たちは皆、次の城主は誰になるのかと噂し、身の振り方を考えている様子だった。
今は、カレンや辺境伯夫人、ウェルナー家の縁者は、見張りをつけて城内の部屋に軟禁されているらしい。
アルミンから真相を聞かされて以来、ユリウスはカレンのことをずっと考えていた。
ラインハルトは以前から第五騎士団への転属を希望していたと言っていた。前の副団長が行方不明になり、転属を希望していた彼が後釜に選ばれたそうだが、だとすると副団長が行方不明になる以前から転属を希望していたことになる。今回の陰謀とは関係ない。
転属の理由として考えられるのは、やはりカレンのことだった。
ラインハルトは、エイギルの結婚式でカレンと出会い、心を奪われたと言っていた。選定の儀に一度も参加していなかったのも、彼女以外、興味がなかったからだろう。
父親のウェルナー辺境伯のことも、謀反を思いとどまるよう最後まで説得しているようだった。たとえ謀反人として父親が処罰されたとしても、それで彼のカレンへの気持ちが揺らぐとは思えなかった。
アルミンは「妾としてどこかの貴族に嫁ぐことができれば、お嬢様にとってはそれが一番よさそうだけど……」と言っていた。ユリウスも同意見だ。選定の儀に参加するよりはそのほうがいいだろうと思う。そして、カレンを幸せにできる相手は、ラインハルトをおいていない。
これまで誰とも結婚せず、選定の儀にも参加して来なかったくらいだから、もしかしたら、一生、正妻は娶らずに、カレンだけを唯一の伴侶とするのかもしれない。
今は父親の謀反を暴いた憎き仇に思えても、いつの日か、彼の深い愛によって彼女の気持ちも解けだしていくことだろう。
今はただ、二人で幸せになってほしいと思う。
ライニ様を、誰よりも幸せにしてあげてほしい。
ラインハルトに剣が振り下ろされる瞬間、彼が無事でいてくれることだけが唯一の願いだった。それさえ叶えば、他には何もいらないと思った。
その唯一の願いが叶ったのだから、ユリウスはそれだけで十分だった。
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