69 / 83
はじまりの場所
はじまりの場所(2)
しおりを挟む「え――、えええ!?」
思わず大声を上げた。
「あの頃は……。第一王子……兄上が即位してすぐで宮廷内が荒れていてな。エイギルの父君も謀反の罪を着せられて処刑されたし、元の王妃は側妃だった今の王太后に毒殺されたという噂もあった。俺の身も危ないと思った母上が、病気の静養を表向きの理由にして、俺をこっそり宮廷から逃がしたんだ。王弟であることがわかれば王太后が刺客を送ってくるかもしれないから、エイギルの従者として身を隠していた」
「そ、それって、うちの両親は知っていたんですか?」
ラインハルトは首を横に振った。
「当時知っていたのは、エイギルと、母の侍女だったエレナだけだ。ただ、騎士団に入り都を出ることが許されてから久々にここを再び訪れたときに、イェーガー公にだけはあのときは、地位を隠していてすみませんでしたと謝罪した」
「そう……。だったんですか……」
「エイギルが……、俺が部屋にいると、泣けないからな。たまにエイギルを一人にするために、ここに来ていた。でも、ここにいると、いつもお前が来て……、色々話しかけてくるから、最初は鬱陶しいなと思っていた」
遠くを見つめる横顔が、懐かしそうに切れ長の眸を細める。その眼差しがとても優しかったから、「鬱陶しい」と言われても傷つきはしなかった。
ユリウスも、なんとなく覚えている。
エイギルは人前では気丈に振る舞っていたけど、父を処刑され、無理やり再婚させられた母とも会えず、かなり辛い思いを抱えていたに違いない。
エイギルの元気がない時に庭で取った花を彼の部屋に持って行くと、彼が一人で泣いていることがあった。
そういうとき、子供ながらに声をかけづらくて、いつも馬小屋に来ていた。
母が生きていたときも、そうしていたから。
実の母の顔は覚えていないが、その顔がいつも泣き顔だったことは、なんとなく覚えている。
庭で取った花を持って母の部屋に行くと、「ユーリ、ごめんね」と言って泣きながら抱きしめられていた。母のことで覚えているのは、謝罪の言葉と、ユリウスを抱きしめるとき、いつも母が泣いていたことと、部屋に漂っていた薬草の香りだけだ。
母の部屋に行くと、顔を見られて嬉しい以上に悲しい気持ちになってしまうから、その後はいつも馬小屋に行っていた。
当時の自分は、なぜ馬小屋に行きたくなるのかわかっていなかったけど、ルトが言っていた、『人といるより馬といるほうが気楽でいい』という気持ちに近いものがあったんじゃないかと思う。
だから、エイギルのときも、彼が泣いているところを見ると悲しい気持ちになって、馬に会いにきていた。そしてそこには、いつも先客がいた。
839
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。
オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。
5回も婚約破棄されたんで、もう関わりたくありません
くるむ
BL
進化により男も子を産め、同性婚が当たり前となった世界で、
ノエル・モンゴメリー侯爵令息はルーク・クラーク公爵令息と婚約するが、本命の伯爵令嬢を諦められないからと破棄をされてしまう。その後辛い日々を送り若くして死んでしまうが、なぜかいつも婚約破棄をされる朝に巻き戻ってしまう。しかも5回も。
だが6回目に巻き戻った時、婚約破棄当時ではなく、ルークと婚約する前まで巻き戻っていた。
今度こそ、自分が不幸になる切っ掛けとなるルークに近づかないようにと決意するノエルだが……。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
初夜の翌朝失踪する受けの話
春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…?
タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。
歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け
アルファのアイツが勃起不全だって言ったの誰だよ!?
モト
BL
中学の頃から一緒のアルファが勃起不全だと噂が流れた。おいおい。それって本当かよ。あんな完璧なアルファが勃起不全とかありえねぇって。
平凡モブのオメガが油断して美味しくいただかれる話。ラブコメ。
ムーンライトノベルズにも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる