糸と蜘蛛

犬若丸

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2章 ヒーロー活劇を望む復讐者

雨に潜む 9

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   予定としては14時まで掃除をして終わったらお菓子作りが土曜の過ごし方なのに。今日はアップルパイの予定だったのに。水回りの掃除も終わっていない。明日は3日間たまっている課題を消化しないといけないから余裕はない。
   「何もかもあんたたちのせいよ」
   これは八つ当たりになる。1体と1人にしてみれば勝手に怒っているようにしか見えない。ハクたちは呆気にとられた間抜けな顔をしていた。



  あたしが寝ている3日間のうちに様々のことが起こったらしい。
   テレビでは噛み殺された卒業生と教師を報道していて、同じ学校で男子生徒が自殺未遂による意識不明になったものだから報道陣は盛り上がってニュースを流す。
   マスコミがうるさくなっても授業はやる。黒い影と白い影を連れたあたしも例外じゃない。例え、雨が降っていたとしてもね。
   退屈な日本史と雨の湿気に苛立ちながらも黒板の字をノートに写す。気になって視線を後ろに向ける。
   そこはカンダタの特等席になっていて間延びする先生の口調を飽きないで聞いている。隣に立つハクは眠そうに欠伸をする。
   雨風が窓を叩いてもクラスメイトの1人がくしゃみをしてもカンダタの目と耳は白いチョークと教師の声を追う。
   ノートも教科書もないのに理解できているのかしら。
   カンダタがいつの時代の人か推測するのか諦めたけれど、字は読めないんだろうな、と憶測があった。
   大昔の貧乏人は字が読めないのが当たり前だったのよね。カンダタの身なりからして裕福層ではないし、学問に詳しいわけでもない。
   終わりのチャイムが鳴って昼休みを告げる。それと同時にカンダタも教室から出て行く。
    いつもの探検ね。病院の時もそうだったから学校も探索したいんでしょうね。
   「瑠璃、ちょっといいか」
   財布を持って学食へ行こうとしているところだった。坂本が昼休みの教室に顔出してきた。 
   すぐに終わってよね。心中しんちゅう、願いながら賑わう廊下で坂本と向き合う。
   「身体測定。なんだかんだお前だけやっていないからな。5時限目の古典は休んでいいから測ってこい」
   測定結果を記入する用紙を受け取る。
  入学を控えた3月にいじめ問題が報道されたものだから新学期開始日が延期になって授業・行事が遅れている。
   だから身体測定も6月にやることになった。そがあたしが病院で寝ていた先週の話。つまり、あたしだけ身体測定をしていない。
   「古典を休めるなら喜んで」
  身体測定で憂鬱になるのは伸びない身長だけ。それが古典を休める理由になるなら笑みもこぼれる。
  「あと、もう一つ。カウンセリングの件だが」
   「記憶が正しければ断ったはずですよ」
   「しつこいようで悪いが評判が良いみたいでな。もう一度勧めたくなった」
   「それほどあたしの人格を修正したいんですね」
   「否定しているわけじゃない。誰かと時間を共有してほしんだ」
   本気で言っているのかしら。カウンセリングであたしが改心して、友達ができる。想像しただけで鳥肌が立つ。
   坂本は深い溜め息を吐き、妥協案を提案する。
   「カウンセリングを受けてくれれば古典の時間、俺は瑠璃を起こさない。これならどうだ?」 
   先生とは思えない提案ね。でも、悪くない。
   「寝放題になるなら1時間のカウンセリングも安いですね。良い提案とは言えませんけど」
   そうして、昼休みの密かな交渉が交わされて、4時限目の時間に保健室に行く。
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