糸と蜘蛛

犬若丸

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2章 ヒーロー活劇を望む復讐者

雨に潜む 8

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    カンダタが問う。
   「断ったらどうする?」
   「そりゃあ、強制連行。悪く思わないでくれよ」
   「お前1人でか?」
   鼻を鳴らして口角を上げる。明らかに人を小馬鹿にした失笑。
   「鬼より容易いだなんて思わないでくれよ。こっちは色んな道具を持って来たからな。罪人1人簡単にねじ伏せられる」
   「調査も1人で平気なわけ?保護者なしだと迷子になるんじゃない?」
   軽く口を滑らせたのであたしもカンダタに合わせた口調で話す。この調子でもう一つ情報を落とさないかと考えた。
   「撤退させたよ。俺が来れば、他のとこに回せるからね」
   「嘘でしょ?頼りないバカ息子に街一つ任せたの?正気じゃないわね」
   「お前ら塊人の人口知らないだろ。塊人1人が何人の魂を管理してると思ってる?街一つの管理はできて当然さ」
   「俺がこんな息子を持ったら何も任せないな」
   カンダタの呟きに光弥は反応してきつく睨む。光弥の地雷を踏んだ、となんとなく悟る。
   「白糸と白鋏が口答えするのは許せる。彼女はそのぐらいの力を持っている。けど、あんたはなんだ?地獄で地べたを這って天を拝むしかできない罪人だろ」
   「俺の魂は虫と変わらない。それがお前らの価値観だ。小さな虫の挑発を聞き流せば良いものをのってきたのはお前だろ」
   光弥の顔に赤く熱がこもり始めた。羞恥心の熱。今更になって口を滑らしたと気付いたらしい。
  カンダタと光弥が睨み合い、ハクは今にも 噛みつきそうな構えをとる。
  あたしの自宅で乱闘は困る。
   「1つだけ答えてくれるなら考えてもいいわよ」
   張り詰めた空気をなくす為、笑顔を作って言う。カンダタも光弥もあたしに視線を向けた。
   「蝶男を知ってる?黒い蝶を飼っている男よ。あなたたちの知り合いでしょ?」
   「そんな男知らない」
   「それは残念」
   乱雑な回答にあたしはわざとらしく、期待はずれの残念そうな目つきをする。
   「でも考えておくわ。これ以上の会話は有意義にはならないよね。光弥も調査で忙しいでしょ」
  「あぁ、そうだな。俺は忙しいんだ。帰らせてもらうよ」
   踵を返す光弥に「さよなら」と笑う。もう二度と会わないことを願って手を振った。光弥が玄関のドアを閉めるまでみせびらかすように。
   「やはり、目的は瑠璃の保管みたいだな」
   カンダタの熱はすでに冷めていた。切り替えが早いわね。
   「カンダタを黙らせるくらいの道具もあるみたいね。1人だけって言っていたけれどあれ本当かしら?」
   「どうだろう。考えていないような馬鹿に見える。それでいて思慮深く馬鹿を演じているようにも見える」
   「大した目利きね」
   「そういう瑠璃はどうなんだ?」
   嫌味と文句ばかりのあたしにカンダタは不満気に聞いてくる。
   「あたしはただの女子高生よ。何も期待しないで」
   「大した度胸を持っているようだな。本当に協力する気か?」
   「あら、あたしは考えるとだけ言ったのよ。欲しかった情報も貰えなかったのに無償で協力するのは嫌よ。待ち合わせ時間も場所も決めていないしね」
   「本当に度胸だけは立派だ」
   「カンダタも虚勢だけはよかったわよ」
   一旦、落ち着いたので時間を確認する。14時17分。最悪だわ。14時を過ぎている。
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