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2章 ヒーロー活劇を望む復讐者
望まぬ再会 2
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「事件を解決したがっていたわりにはのんびりしているんだな。俺じゃなく、瑠璃のところに行けばいいだろ」
光弥の思惑も分からなくはない。瑠璃と共に行動するカンダタを手中にすれば、彼女も巻き込める、と考えたのだろう。
見当違いだ。カンダタが寝返ったとしても首元に刃物を当てられたとしても、彼女は眉1つ動かさず、冷淡とした表情でカンダタを見捨てる。
そのことを光弥には言わなかった。カンダタは黙って彼の後をついて行く。
どこに行くのかは聞いていない。だが、校内の出入り口から離れて行く。なら、どこかの教室に連れて行こうとしているのか。
カンダタと同じく光弥も学校の外部者だ。どういう理屈か知らないが、物に触れ、人にも認識されているようだ。それならば自由に行き来できないはずだ。そうした事実に光弥は恐れずに我が物顔で闊歩する。その姿に陰る思いが募った。
「俺の記憶を取り戻せると言ったが、どうやって?」
唐突に浮いた不信を落ち着かせようと質問してみる。
「まぁ、見ればわかるさ」
少し間を置いた返答。言葉では表しにくいものなのか、それともカンダタを嵌める嘘か。
「やっぱり、やめておく」
ひとつの教室に着いたところでポツリと呟く。今更になって光弥を疑う。そもそも、信用のできない人物にのこのこついてきたカンダタの失態だ。
記憶の欠如、それはカンダタにとってうまい餌だ。そこに釣られた魚は人間に食われると決まっている。光弥が勧める扉の向こうの教室。そこが魚の調理場なのだ。
「自力で取り戻す」
光弥の有無を行かずにそこから去ろうとした。しかし。
「そう言わずに入っておいで。久しぶりの再会なんだから」
扉の向こうから聞き覚えのある声がした。名はなんと言ったか。声の持ち主に関連する記憶はない。だが、直感した。これは間違いなく生前に会った人の声だ。沸々と湧く憎悪の感情にも覚えがある。
頼んでもいないのに光弥が扉を開ける。断った言い分はなかったことにされて、カンダタもそこから去ろうとしなかった。
扉の向こうの人物。カンダタは声の主に合わなければならなかった。記憶ではなく、感情だけが蘇る。
それは憎悪ばかりで恨む理由も見つからない。
ただ、この憎しみは久しく懐かしい。激情を無理矢理抑えようとするとそれが歪みとなって表情に現れる。再会した仇(かたき)に心臓が高鳴った。
あ、フルーツサンド。今日はこれにしましょう。
売店でフルーツサンドが出ているのは珍しい。これは生徒たちにも人気で品数も少ないからすぐに売れてしまう。
ラッキーね。雨が多くて嫌にもなるけれど、心が晴れやかになっていく。そんな気分だった。
あたしはミックスサラダとサンドを手に取ってカウンターに向かう。
ハクが鼻先であたしの肘を小突くと目線をホットショーケースに向ける。中にあるのは香ばしく揚げられたフライドチキン。
昨日のハクもコンビニのチキンをせがんでいた。この白い鬼は人肉ではなく、鶏肉が好物らしい。
「仕方がないわね」
あたしの昼食と一緒にハクの餌も買ってあげましょうか。
人が並ぶ最後尾に立つと菓子を売る商品が目につく。あたしにとって誘惑が多い商品棚。
昼食はミックスサラダと決めていている。帰宅途中は必ずコンビニに寄ってしまうから。そして、あたしの手にはフルーツサンドがある。もし、ここで菓子を手にしたらカロリーオーバーになるわね。
自分自身を律していても誘惑な品々から目が離せない。目移りしてしまう商品の中で黒糖の饅頭を見つける。
これは昨日、カンダタにあげたものと同じ商品ね。
昨日のカンダタは様子が変だったわね。声をかけても虚ろで、あげた饅頭にも感情のない感想なんか言って、しまいには突然泣き出した。
昨日のことを思い出しながら黒糖の饅頭を見ているとあいつに言いたい文句が湧き上がってきた。
最後にカンダタを見たのは朝のSHRの時。お通夜みたいに暗くなった教室から逃げて行った。そこから姿を見ていない。放課後になれば戻ってくるはず。
あたしはカンダタに文句を言うために黒糖の饅頭を手に取り、レジカウンターへと進む。
光弥の思惑も分からなくはない。瑠璃と共に行動するカンダタを手中にすれば、彼女も巻き込める、と考えたのだろう。
見当違いだ。カンダタが寝返ったとしても首元に刃物を当てられたとしても、彼女は眉1つ動かさず、冷淡とした表情でカンダタを見捨てる。
そのことを光弥には言わなかった。カンダタは黙って彼の後をついて行く。
どこに行くのかは聞いていない。だが、校内の出入り口から離れて行く。なら、どこかの教室に連れて行こうとしているのか。
カンダタと同じく光弥も学校の外部者だ。どういう理屈か知らないが、物に触れ、人にも認識されているようだ。それならば自由に行き来できないはずだ。そうした事実に光弥は恐れずに我が物顔で闊歩する。その姿に陰る思いが募った。
「俺の記憶を取り戻せると言ったが、どうやって?」
唐突に浮いた不信を落ち着かせようと質問してみる。
「まぁ、見ればわかるさ」
少し間を置いた返答。言葉では表しにくいものなのか、それともカンダタを嵌める嘘か。
「やっぱり、やめておく」
ひとつの教室に着いたところでポツリと呟く。今更になって光弥を疑う。そもそも、信用のできない人物にのこのこついてきたカンダタの失態だ。
記憶の欠如、それはカンダタにとってうまい餌だ。そこに釣られた魚は人間に食われると決まっている。光弥が勧める扉の向こうの教室。そこが魚の調理場なのだ。
「自力で取り戻す」
光弥の有無を行かずにそこから去ろうとした。しかし。
「そう言わずに入っておいで。久しぶりの再会なんだから」
扉の向こうから聞き覚えのある声がした。名はなんと言ったか。声の持ち主に関連する記憶はない。だが、直感した。これは間違いなく生前に会った人の声だ。沸々と湧く憎悪の感情にも覚えがある。
頼んでもいないのに光弥が扉を開ける。断った言い分はなかったことにされて、カンダタもそこから去ろうとしなかった。
扉の向こうの人物。カンダタは声の主に合わなければならなかった。記憶ではなく、感情だけが蘇る。
それは憎悪ばかりで恨む理由も見つからない。
ただ、この憎しみは久しく懐かしい。激情を無理矢理抑えようとするとそれが歪みとなって表情に現れる。再会した仇(かたき)に心臓が高鳴った。
あ、フルーツサンド。今日はこれにしましょう。
売店でフルーツサンドが出ているのは珍しい。これは生徒たちにも人気で品数も少ないからすぐに売れてしまう。
ラッキーね。雨が多くて嫌にもなるけれど、心が晴れやかになっていく。そんな気分だった。
あたしはミックスサラダとサンドを手に取ってカウンターに向かう。
ハクが鼻先であたしの肘を小突くと目線をホットショーケースに向ける。中にあるのは香ばしく揚げられたフライドチキン。
昨日のハクもコンビニのチキンをせがんでいた。この白い鬼は人肉ではなく、鶏肉が好物らしい。
「仕方がないわね」
あたしの昼食と一緒にハクの餌も買ってあげましょうか。
人が並ぶ最後尾に立つと菓子を売る商品が目につく。あたしにとって誘惑が多い商品棚。
昼食はミックスサラダと決めていている。帰宅途中は必ずコンビニに寄ってしまうから。そして、あたしの手にはフルーツサンドがある。もし、ここで菓子を手にしたらカロリーオーバーになるわね。
自分自身を律していても誘惑な品々から目が離せない。目移りしてしまう商品の中で黒糖の饅頭を見つける。
これは昨日、カンダタにあげたものと同じ商品ね。
昨日のカンダタは様子が変だったわね。声をかけても虚ろで、あげた饅頭にも感情のない感想なんか言って、しまいには突然泣き出した。
昨日のことを思い出しながら黒糖の饅頭を見ているとあいつに言いたい文句が湧き上がってきた。
最後にカンダタを見たのは朝のSHRの時。お通夜みたいに暗くなった教室から逃げて行った。そこから姿を見ていない。放課後になれば戻ってくるはず。
あたしはカンダタに文句を言うために黒糖の饅頭を手に取り、レジカウンターへと進む。
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