糸と蜘蛛

犬若丸

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2章 ヒーロー活劇を望む復讐者

望まぬ再会 3

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   昼休みの食堂は人が多くて、空いてる席は少ない。いつもなら外の学校裏に行って昼食をとっているけれど、雨が降ると食堂で食べるしかない。
   意外にも空席はすぐに見つかった。
   それもそのはず。連日続く怪事件に学食もお通夜みたいに暗くなっていて、生徒たちは会話をしないですぐに席から離れる。
   今朝、遺体で発見されたのは2人。クラスメイトの山崎 千秋と2年生の馬場 鈴。これで死人の数は6人になったわね。
   プラスチックのフォークでレタスを刺して口に運ぶ。隣のハクは嬉しそうにチキンを食べる。
   怪事件によって放課後の部活動は休止になったのにカウンセリングは先生との挨拶だけすると言っていた。変な話よね。部活は禁止でカウンセリングはやるんだから。
   そういった点は坂本も疑問視していたようだった。それでも時間は取らせないと相手に説得でもされたのかしらね。放課後は残るように言われた。
   おかしなところはあるけれど、それよりもフルーツサンドね。
   空になってミックスサラダの容器をビニール袋に戻して待ちに待ったサンドを手に取る。
   あたしがフルーツサンドを称賛したいのはこの見た目。白いパンと白いクリームに挟まれても輝きを失わない色とりどりのフルーツ。赤い苺に緑のキウイ、白の桃。シルクのクリームの中にばら撒かれたフルーツの宝石。この不規則さも美しい。
   ひと口、三角の天辺を口に入れる。口内で最初に現れたのは甘く歯応えのある桃。シャキシャキと噛むと閉じ込められていた甘い幸福が広がる。2口目、今度は苺の酸っぱさ。酸味の少ない甘いだけの苺が人気だけれど、フルーツサンドで使われるべきなのは酸味のある苺だと考えている。
   甘いクリームに甘い桃。そこに甘い苺が加わるとどうなるか。それは甘ったるいだけの不出来なフルートサンドになるだけ。甘くない酸味のあるキウイと苺があってこそフルーツサンドのバランスが取れる。
   そして、あたしが売店のフルーツサンドを贔屓する理由。それはクリームが主張しすぎないこと。このフルーツサンドにはこのクリームが合う。
   滑らかで舌触りの良いクリーム。ほんのりとした控えめな甘み。だからこそ様々なフルーツを生かせる。これほどの果実がありながら味の喧嘩をしないのは白いクリームが優しく包み込んでいるからね。
   1口2口3口と食べ続けても飽きずに美味しく食べれる。むしろ、楽しくなってくる。なぜなら1口目と2口目は違う味になるのだから。
   甘い桃が来たかと思えば、次に来るのはぶつぶつした酸っぱいキウイ。この感覚はプレゼントを貰う子供の気持ちに似ている。リボンのついた箱の中に何が入っているのかな。赤い苺かな、緑のキウイかな。こうしたワクワクした感情はフルーツサンドにしか生み出せない。
   高揚した感情を落ち着かせるため紙パックのストレートティーを飲む。フルーツサンドが2切れあったのに、もう1切れの半分しかない。
   なぜ、人は食べるほどにカロリーを吸収してしまうのかしら。それさえなければフルーツサンド2つ3つとも変えたのに。
   最後のフルーツサンドを惜しむ。次はいつ店頭に並ぶかしら。
   カウンセリングやカンダタのことも忘れていつ並ぶかわからないフルーツサンドに思いを馳せているとチャイムが鳴った。
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