125 / 644
2章 ヒーロー活劇を望む復讐者
鬼ごっこ 7
しおりを挟む
阿鼻叫喚が混じり合う音響の中、1人の女子生徒が部室から出てきた。放心状態の彼女は暗い静寂の廊下に佇む。右半分は誰かの血で染め上げられて、虚ろな瞳は生気を失っていた。
無機質な瞳がカンダタたちを見つめる。その瞬間、部室の出入り口から飛び出した黒い鬼が彼女を床に押し倒し、喉を引き裂く。
鬼ごっこが始まったのだ。衝撃的な一面を目の当たりにした清音は放心状態となってカンダタの声も届かなかった。そんな彼女の腕を掴み、逃げようとする。 幽体の手では清音の腕をすり抜けるだけだとわかっていても身体と心は反応してしまう。
死者であるカンダタの手は生者の手首を掴んだ。1つの疑問が浮かんだが、考えるのは後にしよう。
「行くぞ」
カンダタは無理矢理、清音の腕を引っ張り、蔦と花が生い茂る緑の床を踏みながら、階段を駆け上がる。同時に食事を終えたを鬼が2人を追いかけて、その勢いは曲がりきれずに渡り廊下の扉に突進する。
演劇部の部室では3体の鬼が放たれていた。鬼が1人を引き千切り、1人を食い殺す。その惨劇から逃れようと我先にと部室を出た生徒たちが渡り廊下を目指して走る。だが、扉の前には既に1体の鬼がいる。
カンダタたちを追ってきたその鬼は自分に向かってくる多くのご馳走に涎を垂らす。前方の鬼と後方の鬼2体。挟み撃ちにされた哀れな演劇部員たちを救う者はいない。
部室棟の1階は鬼達の餌場となり、白と紫の時計草に赤い血だまりが彩られた。
高らかに上がる怒声悲鳴は2階の部屋にまで響いた。吹奏楽部が使うその部室は金管楽器やピアノが人々の叫びを聞いたまま、沈黙を守る。
叫びと重なって聞こえてくるのは清音の嘔吐して胃から外界へと出される吐瀉音と涙混じりの嗚咽の声。
カンダタは清音の背中を優しくさすり、少しでも彼女の気分を和らげようとした。
清音ほどではないがカンダタも頭痛で頭を悩ませていた。こめかみから垂れる血が止まらない。塞ぐ気配もなかった。
「あの放送の子、知人か?」
清音が落ち着いたので切り出してみる。
「カウンセリングで一緒になった先輩です。でも、こんなことをする人じゃ」
涙と吐き気に苦しみながらも清音は答えてくれた。
「知り合ったのは?」
「先週です。とてもいい人で、優しくて」
知り合ってからそれほど経っていない様子だ。なら、隠れた人の本性を見破れなくても仕方がない。
桜尾 すみれは復讐と言っていた。憎悪を持て余していた彼女の前にハザマ側の人物が現れ、彼女に協力したといったところだろうか。謎なのはその人物が誰かということだ。光弥たちは回りくどいやり方はしない。
無機質な瞳がカンダタたちを見つめる。その瞬間、部室の出入り口から飛び出した黒い鬼が彼女を床に押し倒し、喉を引き裂く。
鬼ごっこが始まったのだ。衝撃的な一面を目の当たりにした清音は放心状態となってカンダタの声も届かなかった。そんな彼女の腕を掴み、逃げようとする。 幽体の手では清音の腕をすり抜けるだけだとわかっていても身体と心は反応してしまう。
死者であるカンダタの手は生者の手首を掴んだ。1つの疑問が浮かんだが、考えるのは後にしよう。
「行くぞ」
カンダタは無理矢理、清音の腕を引っ張り、蔦と花が生い茂る緑の床を踏みながら、階段を駆け上がる。同時に食事を終えたを鬼が2人を追いかけて、その勢いは曲がりきれずに渡り廊下の扉に突進する。
演劇部の部室では3体の鬼が放たれていた。鬼が1人を引き千切り、1人を食い殺す。その惨劇から逃れようと我先にと部室を出た生徒たちが渡り廊下を目指して走る。だが、扉の前には既に1体の鬼がいる。
カンダタたちを追ってきたその鬼は自分に向かってくる多くのご馳走に涎を垂らす。前方の鬼と後方の鬼2体。挟み撃ちにされた哀れな演劇部員たちを救う者はいない。
部室棟の1階は鬼達の餌場となり、白と紫の時計草に赤い血だまりが彩られた。
高らかに上がる怒声悲鳴は2階の部屋にまで響いた。吹奏楽部が使うその部室は金管楽器やピアノが人々の叫びを聞いたまま、沈黙を守る。
叫びと重なって聞こえてくるのは清音の嘔吐して胃から外界へと出される吐瀉音と涙混じりの嗚咽の声。
カンダタは清音の背中を優しくさすり、少しでも彼女の気分を和らげようとした。
清音ほどではないがカンダタも頭痛で頭を悩ませていた。こめかみから垂れる血が止まらない。塞ぐ気配もなかった。
「あの放送の子、知人か?」
清音が落ち着いたので切り出してみる。
「カウンセリングで一緒になった先輩です。でも、こんなことをする人じゃ」
涙と吐き気に苦しみながらも清音は答えてくれた。
「知り合ったのは?」
「先週です。とてもいい人で、優しくて」
知り合ってからそれほど経っていない様子だ。なら、隠れた人の本性を見破れなくても仕方がない。
桜尾 すみれは復讐と言っていた。憎悪を持て余していた彼女の前にハザマ側の人物が現れ、彼女に協力したといったところだろうか。謎なのはその人物が誰かということだ。光弥たちは回りくどいやり方はしない。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる