126 / 644
2章 ヒーロー活劇を望む復讐者
鬼ごっこ 8
しおりを挟む
「天の声はどこから聞こえてくるんだ?」
「天の?えっと、あれはスピーカーで放送室から流れています」
「放送室か。今時間は?」
「16:45です」
そこなら行ったことがある。首吊りがあった部屋だ。
「もしかして、行くつもりですか?」
「脱出するためにも主犯に会わないといけない」
「隠れていたほうが安全です。一緒にいて下さい」
「安全地帯があれば俺もそうしたい」
鬼の習性をカンダタはよく知っている。一時的に身を隠せても貪欲な奴らは必ず餌を見つける。しかも、1つの建物に鬼が3体だ。後の15分。カンダタはともかく清音は生きている。見捨てるわけにはいかない。
鍵をかけた部室の扉が強く3回叩かれた。2人は扉向こうにいるそれを危機かどうかと見定めようとする。
「誰かいるんでしょう!開けてお願い!」
それは生身の人の声であったが、警戒を解くものにはならない。なぜなら、声だけでは判断ができないからだ。
急に外が暗くなり、壁や床に薄気味悪い蔦・花が生えたのだ。人の声をした鬼が現れても不思議ではないのだ。
しかし、清音は違うようで立ち上がると鍵を開ける。
「大丈夫ですか?」
引き戸の向こうにいたのは本物の人間で血塗れになった女子部員が入ってくるとその場に座り込む。
「ありがとう。あなた、演劇部の人じゃないわね。ひとり?」
「え?」
その一言で清音はカンダタを見る。
カンダタと清音たちには境界線がある。それが生と死だ。カンダタたちは同じ地平に立っているが、この線は超えられない。カンダタが清音に触れられたのはどういうわけか境界線がなくなったからだ。
カンダタはそう解釈していた。しかし、逃げてきた女子部員にカンダタは見えていなかった。境界線が消えたというよりは曖昧になっているようだった。そこにあるのか、ないのかさえ朧げだ。
「そうだ、と答えたほうがいい」
清音は現場の理解もできず、戸惑っていたので少しでも混乱を解いておきたかった。
「えっと、そう、そうなんです」
「下の階で起こったことを聞いてもらえないか。あと桜尾 すみれについても」
清音が知り得なかったものを彼女は持っているかもしれない。カンダタは清音に代弁してもらう。清音は彼女を落ち着かせながら起こったことを説明させようと説得する。彼女は震えながらも話してくれた。
一連の怪事件により、3人のOBと敏腕の教師を亡くした演劇部は枕鬱な面持ちになり、また演劇部ばかり死んでいく現場に恐怖し、練習もままならなかった。
そこに心配して相談に乗ってくれたのが赴任したばかりの長野教師だった。心理士として訪れた彼は演劇部に1つの目標を与えた。それがなくなったOBや安斉先生に全国大会の優秀賞を弔いとして捧げてはどうかと言うものだ。今は亡き先輩や教師に最高の作品を最高の仕上がりで優秀賞を。そんな心理士の呼びかけで近頃噂になっている怪事件への恐怖もなくなっていた。
部活動は禁止されているのにも関わらず、部室に集まっていたのはそういった経緯からだった。その最中に起きたのがあの放送だ。放送中、桜尾 すみれに対して嘲りや罵倒をスピーカーに送った。それが本気だと思い知ったのはすぐ後の事だった。
「天の?えっと、あれはスピーカーで放送室から流れています」
「放送室か。今時間は?」
「16:45です」
そこなら行ったことがある。首吊りがあった部屋だ。
「もしかして、行くつもりですか?」
「脱出するためにも主犯に会わないといけない」
「隠れていたほうが安全です。一緒にいて下さい」
「安全地帯があれば俺もそうしたい」
鬼の習性をカンダタはよく知っている。一時的に身を隠せても貪欲な奴らは必ず餌を見つける。しかも、1つの建物に鬼が3体だ。後の15分。カンダタはともかく清音は生きている。見捨てるわけにはいかない。
鍵をかけた部室の扉が強く3回叩かれた。2人は扉向こうにいるそれを危機かどうかと見定めようとする。
「誰かいるんでしょう!開けてお願い!」
それは生身の人の声であったが、警戒を解くものにはならない。なぜなら、声だけでは判断ができないからだ。
急に外が暗くなり、壁や床に薄気味悪い蔦・花が生えたのだ。人の声をした鬼が現れても不思議ではないのだ。
しかし、清音は違うようで立ち上がると鍵を開ける。
「大丈夫ですか?」
引き戸の向こうにいたのは本物の人間で血塗れになった女子部員が入ってくるとその場に座り込む。
「ありがとう。あなた、演劇部の人じゃないわね。ひとり?」
「え?」
その一言で清音はカンダタを見る。
カンダタと清音たちには境界線がある。それが生と死だ。カンダタたちは同じ地平に立っているが、この線は超えられない。カンダタが清音に触れられたのはどういうわけか境界線がなくなったからだ。
カンダタはそう解釈していた。しかし、逃げてきた女子部員にカンダタは見えていなかった。境界線が消えたというよりは曖昧になっているようだった。そこにあるのか、ないのかさえ朧げだ。
「そうだ、と答えたほうがいい」
清音は現場の理解もできず、戸惑っていたので少しでも混乱を解いておきたかった。
「えっと、そう、そうなんです」
「下の階で起こったことを聞いてもらえないか。あと桜尾 すみれについても」
清音が知り得なかったものを彼女は持っているかもしれない。カンダタは清音に代弁してもらう。清音は彼女を落ち着かせながら起こったことを説明させようと説得する。彼女は震えながらも話してくれた。
一連の怪事件により、3人のOBと敏腕の教師を亡くした演劇部は枕鬱な面持ちになり、また演劇部ばかり死んでいく現場に恐怖し、練習もままならなかった。
そこに心配して相談に乗ってくれたのが赴任したばかりの長野教師だった。心理士として訪れた彼は演劇部に1つの目標を与えた。それがなくなったOBや安斉先生に全国大会の優秀賞を弔いとして捧げてはどうかと言うものだ。今は亡き先輩や教師に最高の作品を最高の仕上がりで優秀賞を。そんな心理士の呼びかけで近頃噂になっている怪事件への恐怖もなくなっていた。
部活動は禁止されているのにも関わらず、部室に集まっていたのはそういった経緯からだった。その最中に起きたのがあの放送だ。放送中、桜尾 すみれに対して嘲りや罵倒をスピーカーに送った。それが本気だと思い知ったのはすぐ後の事だった。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
捨てられた者同士でくっ付いたら最高のパートナーになりました。捨てた奴らは今更よりを戻そうなんて言ってきますが絶対にごめんです。
亜綺羅もも
恋愛
アニエル・コールドマン様にはニコライド・ドルトムルという婚約者がいた。
だがある日のこと、ニコライドはレイチェル・ヴァーマイズという女性を連れて、アニエルに婚約破棄を言いわたす。
婚約破棄をされたアニエル。
だが婚約破棄をされたのはアニエルだけではなかった。
ニコライドが連れて来たレイチェルもまた、婚約破棄をしていたのだ。
その相手とはレオニードヴァイオルード。
好青年で素敵な男性だ。
婚約破棄された同士のアニエルとレオニードは仲を深めていき、そしてお互いが最高のパートナーだということに気づいていく。
一方、ニコライドとレイチェルはお互いに気が強く、衝突ばかりする毎日。
元の婚約者の方が自分たちに合っていると思い、よりを戻そうと考えるが……
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる