糸と蜘蛛

犬若丸

文字の大きさ
155 / 644
2章 ヒーロー活劇を望む復讐者

蜘蛛の脚 5

しおりを挟む
   皆は咆哮と表現していたけれど、あたしからしてみれば悲鳴だ。
   「助けるわけじゃない。あいつに言えていない文句があるだけよ」
   「それだけ?」
   「あら、あたしは周りが思っている以上に我が儘なのよ。言わずじまいでモヤモヤを残すのは性に合わないの」
   私と光弥は図書室に戻る。呼吸をひとつ置いて、ハク、清音、ケイ、光弥の順で見渡す。
   ハクは心配そうにあたしを伺い、清音はケイの袖を掴む。そのケイはあたしに警戒しながらあたしの言葉を待つ。
   「なんだかあたしが悪人みたいね。あたしよりも酷い虐殺者が校内にいるのよ」
   「まだなっていないだけだ」
   ケイのそれはあたしに対して?あたしが虐殺者になると考えているのかしら。まぁ、その時はその時ね。
   「なら、この舞台のタイトルは虐殺者VS虐殺者候補ってところかしら。もっと良いタイトルがあるなら教えて」
   「もしかして、すみれ先輩を殺すの?」
   「茶番劇を終わらせるのよ。つまらない舞台を壊す。それが唯一の脱出口よ」
   「あと30分で生徒玄関が開くはずよ。私たちが動かなくても」
   「仲良しな先輩後輩の図は捨てたら?見苦しいわよ。これは生存者のいない舞台なの。クライマックスは校庭の怪物に食われる。誰もいなくなりました、おしまい。これがシナリオよ。バットエンドは鑑賞するだけならありだけれど、体験するのはごめんだわ。あたしはあたしのエンドを取りに行く。皆はどうなの?」
   最初に答えを出したのはハク。それはあたしを守る決意か、単なる同意か区別がつかない。ハクはあたしの背中にピッタリとくっついて味方になると囁いてくれているみたいだった。
   次はケイ。
   「責務がある。ルリを見極める」
   「ご勝手にどうぞ。でも、刀はいらないわ」
   「なら、私も」
   清音がケイに倣う。結局、自分の意思で決めないのね。あたしには関係ないか。
   「俺も」
   そして光弥。
   「知りたいこと、たくさんあるから」
    あたしは白鋏を取り出して、刃の先端を光弥の頬に押し当てる。光弥は逃げずに押し当てられた頰から赤い一線を流す。
   白鋏とあたしを交互に動かす瞳は震えていて額から伝う汗は 冷たいものだった。
   「監視しているから」
   「もちろん。君に刺されるのはこりごりだよ」
   全員一致したところでちょっとした作戦を話し合った。
   活路として有効的なのは機械室にある魂のエネルギー供給を止めること。光弥曰く、それができればプラネタリウムが停止するらしい。
   4カ所の供給源を回るよりも1カ所のプラネタリウムを破壊できれば楽だけれど、光弥でもその場所を把握していないようだった。全く、役に立たないわね。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...