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2章 ヒーロー活劇を望む復讐者
蜘蛛の脚 4
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「よせ」
「怪我人は寝ていればいい」
「打撲だ」
さっきまで血だらけになっていたケイは何事もなかったように平然と立っている。彼はあたしから白い刀を静かに奪い取る。
「これを託す。それがカゲヒサの願い」
刀を携えたケイはゆっくりと後退してあたしから離れていく。
「しかし、ルリには託せない」
「託す?そんなおもちゃを?」
「これは1部だ。あと一つ」
何よ、また意味のない説明するつもり?
「辿る必要があるからだ」
「あのね、頭が吹き飛んだ説明は要らないの。わかる?あんたは個性的で自己流の喋りを貫きたいだろうけれど」
「ルリには無理だ」
私は首を横に振る。話は聞かない、話すのは意味不明な薄っぺらな内容。
「そう、なら勝手に判断すればいい。どっちにしてもそのおもちゃを受け取らないわよ。誰かから託されるのはごめんよ。他人の責任をあたしに押し付けないで」
「ねぇ、瑠璃」
あたしの喋りは早口になっていた。それは激情の表れであり、清音の呼びかけはそれを鎮める為のものだった。そのせいであたしの矛先は清音に向けられる。
「自分で決められない奴が口をはさまないで。あんたはあたしたちの後ろからついてきただけで何もできていないじゃない」
「それは」
「やめろ。キヨネは巻き込まれてただけだ」
「だから何よ。自分で判断できないことに変わりないのよ」
「私は、ただ」
清音は否定しようとした。意思はあるのだと表明しようとした。
その機会が潰されたのは空気が震えるような咆哮があたしたちを包んだからだ。
「今度は、何?」
鬼、人間もどき。また違う怪物が襲ってくる。その恐怖に清音は怯えて肩を震わす。
あたしはあの咆哮を知っている。
光弥を縛っていた白糸を切る。
「まだ聞きたいことがあるのよ」
解説役として光弥を選んだけれど、身体を束縛した上に手は傷だらけ。素直に従うのはあり得なかった。
その心配とは裏腹にこくり、と頷いた光弥は立ち上がる。
光弥にはあたしに対する恐怖心が芽生えていた。それは力の差があるのだと理解し、抵抗・拒否といった行動の選択を自ら放棄していた。
あたしと光弥は図書室から出て、廊下側窓へと移動する。
2階から見える校庭の中心に鎮座するのは背中から足の脚を生やした男。カンダタだ。
「あれは?」
カンダタを指して尋ねる。
「型の崩壊。さっき言った副作用だよ。なんていうのかな、死んだ人に使う言葉じゃないけど黒蝶による病気って例えばいいかな」
「あれが病気?」
「ゾンビだって同じようなもんだろ」
世間のルールやコミュニケーションに問題があるくせにそういう知識はあるわけね。その脳細胞を別のところで活用できないのかしら。
「そのゾンビ病原体を消す方法はないの?」
「消すのはカンダタ?それとも蝶男?」
窓向こうの雨にさらされたカンダタをもう一度見る。あたしが知りたい真実はまだ残っていた。
あたしの手首に巻かれた白糸。今ならはっきりと見える。
巻いた覚えのない白糸は窓を越えて宵闇の雨でも白く光り、校庭のカンダタに続いていた。
いつ巻いたか、なぜカンダタに繋がっているのか、それを光弥に聞いても答えは出ない。多分、これはあたしが導き出さなといけない。そんな気がする。
「蝶男」
あたしは一言、それだけ言う。光弥は目を丸くしてあたしを見る。
「何よ」
「まさか、カンダタを助けるつもり?」
月と雨の静寂の中でカンダタの声が上がる。背中の裂け目を広げて生えたのは虫の脚。これで6本になった。
「怪我人は寝ていればいい」
「打撲だ」
さっきまで血だらけになっていたケイは何事もなかったように平然と立っている。彼はあたしから白い刀を静かに奪い取る。
「これを託す。それがカゲヒサの願い」
刀を携えたケイはゆっくりと後退してあたしから離れていく。
「しかし、ルリには託せない」
「託す?そんなおもちゃを?」
「これは1部だ。あと一つ」
何よ、また意味のない説明するつもり?
「辿る必要があるからだ」
「あのね、頭が吹き飛んだ説明は要らないの。わかる?あんたは個性的で自己流の喋りを貫きたいだろうけれど」
「ルリには無理だ」
私は首を横に振る。話は聞かない、話すのは意味不明な薄っぺらな内容。
「そう、なら勝手に判断すればいい。どっちにしてもそのおもちゃを受け取らないわよ。誰かから託されるのはごめんよ。他人の責任をあたしに押し付けないで」
「ねぇ、瑠璃」
あたしの喋りは早口になっていた。それは激情の表れであり、清音の呼びかけはそれを鎮める為のものだった。そのせいであたしの矛先は清音に向けられる。
「自分で決められない奴が口をはさまないで。あんたはあたしたちの後ろからついてきただけで何もできていないじゃない」
「それは」
「やめろ。キヨネは巻き込まれてただけだ」
「だから何よ。自分で判断できないことに変わりないのよ」
「私は、ただ」
清音は否定しようとした。意思はあるのだと表明しようとした。
その機会が潰されたのは空気が震えるような咆哮があたしたちを包んだからだ。
「今度は、何?」
鬼、人間もどき。また違う怪物が襲ってくる。その恐怖に清音は怯えて肩を震わす。
あたしはあの咆哮を知っている。
光弥を縛っていた白糸を切る。
「まだ聞きたいことがあるのよ」
解説役として光弥を選んだけれど、身体を束縛した上に手は傷だらけ。素直に従うのはあり得なかった。
その心配とは裏腹にこくり、と頷いた光弥は立ち上がる。
光弥にはあたしに対する恐怖心が芽生えていた。それは力の差があるのだと理解し、抵抗・拒否といった行動の選択を自ら放棄していた。
あたしと光弥は図書室から出て、廊下側窓へと移動する。
2階から見える校庭の中心に鎮座するのは背中から足の脚を生やした男。カンダタだ。
「あれは?」
カンダタを指して尋ねる。
「型の崩壊。さっき言った副作用だよ。なんていうのかな、死んだ人に使う言葉じゃないけど黒蝶による病気って例えばいいかな」
「あれが病気?」
「ゾンビだって同じようなもんだろ」
世間のルールやコミュニケーションに問題があるくせにそういう知識はあるわけね。その脳細胞を別のところで活用できないのかしら。
「そのゾンビ病原体を消す方法はないの?」
「消すのはカンダタ?それとも蝶男?」
窓向こうの雨にさらされたカンダタをもう一度見る。あたしが知りたい真実はまだ残っていた。
あたしの手首に巻かれた白糸。今ならはっきりと見える。
巻いた覚えのない白糸は窓を越えて宵闇の雨でも白く光り、校庭のカンダタに続いていた。
いつ巻いたか、なぜカンダタに繋がっているのか、それを光弥に聞いても答えは出ない。多分、これはあたしが導き出さなといけない。そんな気がする。
「蝶男」
あたしは一言、それだけ言う。光弥は目を丸くしてあたしを見る。
「何よ」
「まさか、カンダタを助けるつもり?」
月と雨の静寂の中でカンダタの声が上がる。背中の裂け目を広げて生えたのは虫の脚。これで6本になった。
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