糸と蜘蛛

犬若丸

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2章 ヒーロー活劇を望む復讐者

時計草 11

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    ここまで来るのに機械室とやらを2ヶ所回ってが、そこもよくわからない管と鉄の箱があるだけで、無機質な空間しかなかった。
   「カウンセリングの教室にもないわね。あと思い当たるのは部活棟かしら」
   独り言を呟く。次の行き先を決めていたのは瑠璃だった。カンダタには校内の地図ができあがっていたが、教室の用途までは把握していなかった。
   北棟から部活棟へと行く道のりの途中、2人の落ち着いた声が響く。 
   「不気味だ。静かすぎる」
   「もしかしたら、相手はあたしたちを待っているのかもね」
   昨晩に起こったことなど忘れてしまったように静かな夜。この静寂が何かの前触れのようにも思えた。
   「カンダタの推理が正しかったとして」
   切り出したのは瑠璃だった。放送室での自身の考えを述べた時、彼女はどことなく悔しく認めているようにも見えた。表情には出さなかったが、そういった類のものを漂わせていた。
   「あたしには影響がないわよね。黒幕の正体なんて誰でも良いもの」
   「わざわざ弁解するとはな。そんなに悔しかったのか」
   「は?なんで?あたしはね、あんたが得意げな顔で推理を披露したって損得もないのよ」
   「そういうことにしておくよ」
   カンダタとしては得意げな顔したつもりはなければ、瑠璃に勝ったと思っていない。カンダタは彼女の自尊心を優先的に考えて発言する。そうした思いやりも瑠璃は気に食わないようで口をへの字に曲げて黙ってしまう。
   それを聞いたのは西棟の廊下を歩いている時だった。
   人らしき声をしていたが、谺になって篭る声は悲鳴なのか怒声なのか区別がつかない。
   「部活棟?いや、体育館かしら」
   体育館は西棟の廊下を真っ直ぐに進んだところに渡り廊下と観音扉がある。
   怪事件が続いた挙句の休校。度胸試しで来る者はいないだろう。考えて思い浮かぶのは蝶男と亡霊の桜尾  すみれ、光弥と清音、ケイ。
   「お誘い、かしら」
   そんな安楽なものではないが、カンダタも同じ考えをしていた。
   呼ばれている。谺した謎の声がこちらにおいでと手招く。
   一切の迷いもなく、瑠璃とカンダタは体育館の観音扉まで歩く。しかしながら、勇敢な姿勢で館内に飛び込む無謀な真似はしなかった。
   2人は気付かないように観音扉の覗き窓から外中の様子を伺う。体育館には目を疑う光景があった。
   木目の床を埋め尽くしていたのは緑の蔦と葉、そして巨大な時計草。広い体育館を埋めてしまうほどの蔦の量。その1本1本が意思を思ったようにまた洗脳されたような整列を作っては渦巻き状の円を作る。
   整いながらも館内を侵食していくが、ある人物を避けていた。蔦の渦に呑まれていない彼女は黒猫を両手に抱えて怯えたように身を小さくさせる。そんな彼女が見上げていたのは巨大な時計草と一体化した桜尾  すみれ。
   「彼女が、桜尾  すみれ?」
    カンダタに疑問符が付いたのはそれが人に見えるものではなかったからだ。
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