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2章 ヒーロー活劇を望む復讐者
時計草 10
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「ふざ、ふ、ふざけんなあ!みか、みかた、てぇいったのにいい!」
すみれ先輩の激痛に身悶える蔦の束は鞭の武器へと変貌する。
数本の蔦が絡み合った松葉色の太い鞭は理不尽と痛みに対する怒りとなってケイを襲う。
正面からなぎ払ってくる蔦を躱すのは容易かった。しかし、ケイは自分の身よりも私を優先させた。
しがみつく私を強く振り払い、押し倒す。腰を床に打ちつけるも蔦の猛威は晒されず、代わりにケイだけがすみれ先輩の一振りをその身に受
ける。
転ぶ私の真上で松葉色の鞭が宙を切り、ケイを連れ去る。白い刀は手元から離れて、高らかと飛ぶと蔦の畝る波の中に落ちる。
「ケイ!ケイ!」
私は起き上がり、ケイが飛ばされた方向を向く。それほど遠くまで行っていない。
波に呑まれそうになっている小さな猫に駆け寄ると傷が痛まないようゆっくりと抱き上げる。
蔦の一撃は黒猫のケイには重すぎた。血は流れてなく、外見の傷は見当たらない。
それは外見での話で、打撲痕は毛で隠されているだけにすぎない。ケイは固く瞳を閉じて呼びかけても反応がなかった。
私のせいだ。私がケイの邪魔をしなければこんなことにはならなかった。
「ねええき、きよねええ」
振り返ってみればすみれ先輩が私の背後にいた。
束になった蔦によって持ち上げられたすみれ先輩は高さ5mから私を見おろす。
「み、み、みか、かた、かた、ていった、じゃなああい、ねぇええ!」
彼女の発言も支離滅裂なものになっていた。死人みたく白くなった肌に緑色の筋が浮き、虚ろな目は上下左右にぐるぐると回るも一度たりとも私に焦点を合わせてくれなかった。
「わわたしわぁあ!わる、わるくぅなああいのおおねぇええ!」
高く居座っていたすみれ先輩は私に近づこうと蔦の茎を低くさせて、白と緑の腕を伸ばしてくる。
私はケイを強く抱きしめて身を丸くさせた。
無力な私にできるのはこれだけだった。恐怖に身凍らせて自身の死を悟り、惨めに震える。
来るべきではなかった。ケイの足を引っ張るとはわかっていた。それでも、何もできない自分が許せなかった。
「わああるうううくなあああ」
上げた両手は私を抱きしめるものではなく、潰す為のもの。すみれ先輩は私に対する優しさを忘れてしまった。
化け物となった亡霊と黒猫。死の誘いと生の執着。対照的な2人の間に割って落ちたのは黒い影の赤眼の男だった。
「昨晩とは比べ物にならないくらいに静かね」
瑠璃が言う。嬉しいわけでもなく怒りがあるわけでもない。そこにある事実を淡々と告げる。
殺された40人ほどの遺体は影すらない。学校の静寂は当然のものであるのにそれを異質だと肌で感じていた。
夜に侵食された学校は静かな混沌が息を潜め、カンダタたちの首元を狙う。そのわずかな息遣いがよく聞こえてくるようだった。
瑠璃はそれを知ってか知らずか、堂々と背筋を伸ばして廊下の真ん中を歩く。
「演劇部員の死体はどこにあるのかしらね」
これもまた心配しているわけでもなく、怖いもの見たさの興味とも違う。
瑠璃たちが見つけたのは赤一面に染まった桜尾 すみれの遺体だけだ。
放送室ではプラネタリウムの手がかりはなかった。なら、どこにあるのだろうかと校内を探し回る。
すみれ先輩の激痛に身悶える蔦の束は鞭の武器へと変貌する。
数本の蔦が絡み合った松葉色の太い鞭は理不尽と痛みに対する怒りとなってケイを襲う。
正面からなぎ払ってくる蔦を躱すのは容易かった。しかし、ケイは自分の身よりも私を優先させた。
しがみつく私を強く振り払い、押し倒す。腰を床に打ちつけるも蔦の猛威は晒されず、代わりにケイだけがすみれ先輩の一振りをその身に受
ける。
転ぶ私の真上で松葉色の鞭が宙を切り、ケイを連れ去る。白い刀は手元から離れて、高らかと飛ぶと蔦の畝る波の中に落ちる。
「ケイ!ケイ!」
私は起き上がり、ケイが飛ばされた方向を向く。それほど遠くまで行っていない。
波に呑まれそうになっている小さな猫に駆け寄ると傷が痛まないようゆっくりと抱き上げる。
蔦の一撃は黒猫のケイには重すぎた。血は流れてなく、外見の傷は見当たらない。
それは外見での話で、打撲痕は毛で隠されているだけにすぎない。ケイは固く瞳を閉じて呼びかけても反応がなかった。
私のせいだ。私がケイの邪魔をしなければこんなことにはならなかった。
「ねええき、きよねええ」
振り返ってみればすみれ先輩が私の背後にいた。
束になった蔦によって持ち上げられたすみれ先輩は高さ5mから私を見おろす。
「み、み、みか、かた、かた、ていった、じゃなああい、ねぇええ!」
彼女の発言も支離滅裂なものになっていた。死人みたく白くなった肌に緑色の筋が浮き、虚ろな目は上下左右にぐるぐると回るも一度たりとも私に焦点を合わせてくれなかった。
「わわたしわぁあ!わる、わるくぅなああいのおおねぇええ!」
高く居座っていたすみれ先輩は私に近づこうと蔦の茎を低くさせて、白と緑の腕を伸ばしてくる。
私はケイを強く抱きしめて身を丸くさせた。
無力な私にできるのはこれだけだった。恐怖に身凍らせて自身の死を悟り、惨めに震える。
来るべきではなかった。ケイの足を引っ張るとはわかっていた。それでも、何もできない自分が許せなかった。
「わああるうううくなあああ」
上げた両手は私を抱きしめるものではなく、潰す為のもの。すみれ先輩は私に対する優しさを忘れてしまった。
化け物となった亡霊と黒猫。死の誘いと生の執着。対照的な2人の間に割って落ちたのは黒い影の赤眼の男だった。
「昨晩とは比べ物にならないくらいに静かね」
瑠璃が言う。嬉しいわけでもなく怒りがあるわけでもない。そこにある事実を淡々と告げる。
殺された40人ほどの遺体は影すらない。学校の静寂は当然のものであるのにそれを異質だと肌で感じていた。
夜に侵食された学校は静かな混沌が息を潜め、カンダタたちの首元を狙う。そのわずかな息遣いがよく聞こえてくるようだった。
瑠璃はそれを知ってか知らずか、堂々と背筋を伸ばして廊下の真ん中を歩く。
「演劇部員の死体はどこにあるのかしらね」
これもまた心配しているわけでもなく、怖いもの見たさの興味とも違う。
瑠璃たちが見つけたのは赤一面に染まった桜尾 すみれの遺体だけだ。
放送室ではプラネタリウムの手がかりはなかった。なら、どこにあるのだろうかと校内を探し回る。
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