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3章 死神が誘う遊園地
夢楽土会 2
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瑠璃は橙色の煮付けをスプーンで掬うとパンに乗せるとそれを頬張る。
「あんな理想妄想詰め込んだもの何がいいのかしらね」
食事の時だけ幸せそうである。今も皮肉を言うわりには頬張った口の端が上がっている。
「いい映画だ」
兎も角、自分が良いと思ったものを批判されては朝食で舌鼓を打つ瑠璃に批判したくなる。
「リアルじゃない」
瑠璃は一掃する。
「記憶障害がある人がとんとん拍子で幸せになれるはずがないもの」
「捻くれた性格直したほうがいいぞ」
彼女は恋愛で幸せになった2人が気に入らないのだろう。カンダタが窘めるも捻くれた発言は止まなかった。
「そもそも、記憶障害の女が毎回同じ男の夢を見て、惹かれるっていうのが有り得ないのよ。ファンタジーだわ」
瑠璃の言い分を聞いているとにやけた笑みがこぼれそうになる。
つまらない映画だというなら忘れてしまうのが得というものだ。つまらない映画の一部を覚えているのは心象的に残っているのだろう。それを認めないあたり、瑠璃の捻くれた部分がよくわかる。
夢といえば、カンダタも夢を見た。夢というよりは記憶と言えるだろう。あれは自身が死んだ時の記憶が蘇ったのだ。蝶男の姿が浮かぶ。
項の小さな痛みが鈍痛に変わった。針くらいの痛みなら耐えられるが、唐突な激痛に顔を顰める。
「なぁ、死人は生きた夢を見ると思うか?」
痛みを堪え、尋ねて見る。
あの夢は目を瞑ったら見たものであり、見たくて見たものではなかった。
食欲や睡眠欲は生者の特権ならば、夢は生と死のどちらにあるのか。カンダタが見た夢は死者の追想そうなのか、生前のカンダタが命に執着していた習慣なのか。
「SF小説のタイトルみたいな質問ね」
用途がつかめない問いだったので瑠璃には答えようがない。
「光弥はまだ寝ているの?」
呆れた顔で鑑賞室を見る。
瑠璃の学生生活は忙しいものになっていた。体育祭と期末試験と目紛しく行事が続いた。体育祭では愚痴を吐き続け、試験期間では勉強漬けの毎日だった。
その間、カンダタと光弥は何をしていたかというと映画を見ていた。瑠璃が机にかぶりついていた時、浪人と変わらない2人は液晶テレビにかぶりついていた。
現代と日常を学ぶには映画が効率良かったので光弥と共に鑑賞してみるとその魅力に心を奪われてしまった。そして、カンダタよりも映画に取り憑かれたのは光弥だった。
カンダタと光弥では趣向が違い、光弥は「ミスト」「ムカデ人間」を好んだ。瑠璃からは映画の趣味が悪いと言われ、カンダタも同意する。
「あいつ、何しにきてるのかしら」
そもそも、光弥はハザマから送り込まれた使者であり、その目的は瑠璃の魂抽出である。自分の役割を忘れて映画三昧なのだ。遊んでいるようにしか見えない。
「そのほうがいいんじゃないか。殺される心配がないんだ」
「家に居座らなければ最高なんだけど」
台詞の棘はカンダタにも向けられていた。何もせず、映画三昧の暮らしをしているのはカンダタも同じだ。
「学校は?今日も試験とかか?」
どことなく心地が悪くなったので話題を変える。
「今日は一学期最終日よ。明日から夏休み」
蜜柑の煮付けを塗った食パンを食べ終えるとテレビを消して立ち上がる。
「映画もいいけれど、騒がないでよね。近所トラブルは嫌よ」
「騒いでも気付きようがないさ」
映画は黙って見るものだが、大声で笑ったとしても泣いても騒いでも亡霊の声は誰にも聞こえない。
それもそうねと呟いて瑠璃は自室に戻る。
「あんな理想妄想詰め込んだもの何がいいのかしらね」
食事の時だけ幸せそうである。今も皮肉を言うわりには頬張った口の端が上がっている。
「いい映画だ」
兎も角、自分が良いと思ったものを批判されては朝食で舌鼓を打つ瑠璃に批判したくなる。
「リアルじゃない」
瑠璃は一掃する。
「記憶障害がある人がとんとん拍子で幸せになれるはずがないもの」
「捻くれた性格直したほうがいいぞ」
彼女は恋愛で幸せになった2人が気に入らないのだろう。カンダタが窘めるも捻くれた発言は止まなかった。
「そもそも、記憶障害の女が毎回同じ男の夢を見て、惹かれるっていうのが有り得ないのよ。ファンタジーだわ」
瑠璃の言い分を聞いているとにやけた笑みがこぼれそうになる。
つまらない映画だというなら忘れてしまうのが得というものだ。つまらない映画の一部を覚えているのは心象的に残っているのだろう。それを認めないあたり、瑠璃の捻くれた部分がよくわかる。
夢といえば、カンダタも夢を見た。夢というよりは記憶と言えるだろう。あれは自身が死んだ時の記憶が蘇ったのだ。蝶男の姿が浮かぶ。
項の小さな痛みが鈍痛に変わった。針くらいの痛みなら耐えられるが、唐突な激痛に顔を顰める。
「なぁ、死人は生きた夢を見ると思うか?」
痛みを堪え、尋ねて見る。
あの夢は目を瞑ったら見たものであり、見たくて見たものではなかった。
食欲や睡眠欲は生者の特権ならば、夢は生と死のどちらにあるのか。カンダタが見た夢は死者の追想そうなのか、生前のカンダタが命に執着していた習慣なのか。
「SF小説のタイトルみたいな質問ね」
用途がつかめない問いだったので瑠璃には答えようがない。
「光弥はまだ寝ているの?」
呆れた顔で鑑賞室を見る。
瑠璃の学生生活は忙しいものになっていた。体育祭と期末試験と目紛しく行事が続いた。体育祭では愚痴を吐き続け、試験期間では勉強漬けの毎日だった。
その間、カンダタと光弥は何をしていたかというと映画を見ていた。瑠璃が机にかぶりついていた時、浪人と変わらない2人は液晶テレビにかぶりついていた。
現代と日常を学ぶには映画が効率良かったので光弥と共に鑑賞してみるとその魅力に心を奪われてしまった。そして、カンダタよりも映画に取り憑かれたのは光弥だった。
カンダタと光弥では趣向が違い、光弥は「ミスト」「ムカデ人間」を好んだ。瑠璃からは映画の趣味が悪いと言われ、カンダタも同意する。
「あいつ、何しにきてるのかしら」
そもそも、光弥はハザマから送り込まれた使者であり、その目的は瑠璃の魂抽出である。自分の役割を忘れて映画三昧なのだ。遊んでいるようにしか見えない。
「そのほうがいいんじゃないか。殺される心配がないんだ」
「家に居座らなければ最高なんだけど」
台詞の棘はカンダタにも向けられていた。何もせず、映画三昧の暮らしをしているのはカンダタも同じだ。
「学校は?今日も試験とかか?」
どことなく心地が悪くなったので話題を変える。
「今日は一学期最終日よ。明日から夏休み」
蜜柑の煮付けを塗った食パンを食べ終えるとテレビを消して立ち上がる。
「映画もいいけれど、騒がないでよね。近所トラブルは嫌よ」
「騒いでも気付きようがないさ」
映画は黙って見るものだが、大声で笑ったとしても泣いても騒いでも亡霊の声は誰にも聞こえない。
それもそうねと呟いて瑠璃は自室に戻る。
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