糸と蜘蛛

犬若丸

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3章 死神が誘う遊園地

夏と夢と信仰と補習 19

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   毎秒に増えるハートを眺めていると画面の端からパク君が現れ、弾んだリズムとメロディーを奏でられる。
   「やあ☆もうすぐキャッスルタウンでパレードが始まるよ☆」
   パク君の背後にマップが表示されて、パレードの出発地点とルートのマーカーが記される。出発地点と現在地が近い。
   行ってみようかと迷う。パレードの写真をSNSにあげればもっとたくさんのハートが貰えるかもしれない。
   でも、と躊躇ってしまうのは人の多さ。パク君のお知らせアラームを鳴らして間もないうちに1人の群勢ができていた。
   それぞれ行くところが違っていた園内の客人たちが1つの群になっている。人々の群勢は大河になって、パレードに胸を膨らませながら流れていく。
   人が多いからやっぱりやめようかな。
   フォレストエリアへの道順を確認する。道順を辿っていくとパレートのルートにぶつかるようだ。
   どうしようかな。折角だし様子見だけでもしようかな。少しだけ時間をずらして遠目から見れば人混みに入らずに済むよね。
   遠くから楽しげな音楽の谺が聞こえてきて、すぐに歓声に掻き消される。パレードが始まったみたい。
   歓声と音楽に引き寄せられ、群勢が広がっている。私は大きな群衆の外れに立った。
   パレードの音楽が遠い。
   人と歓声の壁に隔てられたパレードは背を伸ばしても上部の端しか見えない。
   あれは檻?蛇をオマージュしたものかな?
   端っこしか見えないそれはポップにデザインされた檻にビットカラーの蛇が巻きついているようだった。檻の中は真っ暗で様子が見えない。
   影に覆われた檻の中でゆらゆらと垂れているシルエットが薄っすらと浮かぶ。
   音楽が盛り上がるのに合わせてダンサーも跳ねて、それに呼応して歓声が大反響する。
  歓喜の輪から外れる私はパレードが作る一体感に馴染めなかった。やっぱり、迂回していこう。
   キャッスルタウンからフォレストエリアまではさほど離れていない。
   距離と比べて到着する時間が遅くなってしまったのは私が撮影ポイントを探し、撮る際のアングルを思案して、時間の経過を忘れていたからだ。
   思案して工夫すればするほどハートの数が多い。いつの間にか他人の目も気にならなくなった。
   フォレストエリアに来てみるとキャッスルタウンと違う雰囲気に思わず吐息を漏らす。木々と草花が囲む自然の中に黄色いレンガの歩道が伸びて森の奥に続いている。
   ケルト音楽の物静かで穏やかな弦楽器とピアノ。それに合わせて歌うかのように小鳥たちが囀る。
   キャッスルタウンでは期待させるワクワク感があった。フォレストエリアでは安息させる穏やかな空気が漂っている。木漏れ日の下で幹と寄り添ってしまえば眠れそう。
   歩道から外れ、草花の中に踏み入る。草花に足跡が残る。一般的なレジャー施設なら注意されるだろうけど夢の中なら何でも許してくれる。
   パク君のポーズとアングルに長考して、数枚撮影。その中で一番だと思った写真を投稿する。
   短時間のうちにアカウントのフォロワー数が一万を超え、ハートの数もそれ以上に増えた。私は満足して鼻歌を歌いながらレンガの道に戻った。
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