糸と蜘蛛

犬若丸

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3章 死神が誘う遊園地

夏と夢と信仰と補習 18

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   彼女たちは私と変わらない女子高生に見える。着崩した制服、手首にはお揃いのブレスレット。仲がいいんだろうな。
   「もしかしてぬい撮り?」
   SNSの画面とパク君で推測したミツハさんの問いにまた曖昧に頷く。
   「可愛いもんね。あたしたちもやる?」
   「いいね。色違いを2つ用意して、花壇の中において、お城を拝見してみない?」
   「いいね!」
   「仲がいいんだね」
   楽しそうな2人の会話が羨ましくなって思わず、口を挟んでしまった。
   純粋な憧れと捉えた2人は嫌な顔を少しも見せてない。
   「高校時代からの付き合いだもんね」
   「一緒にいるのが楽しくて、ね」
   お互いに顔を合わせて笑い合う。私はどことなくかかる引っかかる物言いに疑問が浮かぶ。でも、すぐに消した。
   言葉なんてものは書くよりも喋るほうが間違いやすい。会話は瞬発力が必須だから。
   「ぬい撮りをするならあっちの噴水が人気あるよ」
   指を差して私に教えると2人は専門店が並ぶ通りに向かう。きっと写真に収めるぬいぐるみを探しに行ったんだ。
   再びぬいぐるみを見つめ、教えてもらった噴水に行く。
   せっかく教えてもらったから一枚だけ投稿してみようかな。
   噴水周辺まで来てみるとタイミングが良かったのか、周りには人らしき影はなかった。気恥ずかしさがほんの少しだけ紛れた。
   人が来ないうちに済ませようと私は噴水の縁にぬいぐるみを置く。
   立派なお城を背景にして、アングルのこのぐらいでいいかな。
   カメラを起動させてシャッターボタンを押す。
   これまでの動作を数分のうちに終わらせて、何事もないように縁に腰掛け、ぬいぐるみを膝の上に乗せる。
   誰も見ていないかと周囲を確認する。影一つもない。安息の息を吐いて端末と向き合う。
   あのSNSを開いてみる。登録していないのにすでに私のアカウントがある。
   早速、撮った写真を投稿する。
   数秒後に他者からの視線があるわけでもないのに見られている感覚に陥って画面を閉じる。でも反応が欲しくて再び画面を開く。0と表示されたハートの数に幻滅する。
   人々の声が聞こえてきて顔を上げるといつの間にか噴水周辺に人が集まっていた。
   イベントやダンスショーがあるわけでもない。自然な足取りでここに来ていたようだった。
   私は画面に目を戻す。どういうわけか0だったハートの数が50にまで跳ね上がっていた。
   コメントも多い。返事をしようかと迷う。
   せっかくの好意を無下にしたくない。
   一人ひとりのコメントにお礼の返事をする。
   画面と見つめ合い、口を閉ざす。はたからしてみれば物静かな少女。けど、内側は高鳴る心臓に喜び、綻びそうな口端を必死に抑えていた。
   コメントを返す。増えるフォロワーとハートの数。承認欲求が満たされる。
   楽しい、かも。
   そんなコメントの中で「一枚だけ?」「もっと見たいです」といった声がいくつかあった。
   心の中にあった不信不満は綺麗に拭われて、欲求心が高鳴る。
   期待されている。求められている。増える数がそれを証明している。写真をあげてもっと高揚を味わいたい。
   立ち上がると端末のマップを起動する。
   色んなエリアに行ってみよう。私が惹かれた風景にぬいぐるみを置いて、写真を載せる。そしてまたハートを貰う。
   先ずは、フォレストエリアに行ってみよう。
   なんて心地良い夢なんだろう。
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