糸と蜘蛛

犬若丸

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3章 死神が誘う遊園地

遊園地 4

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  水を用意して、ケイと光弥にサプリを渡してあたしは自室に入る。
   あたしはベッドで横になった。快眠を促すサプリだから服用すれば次第に眠くなってくる。
   「文句がある顔ね」
   カンダタの顔は陰りがあって、あたしの選択に不安があるようだった。横で見守るハクも同じ顔をしている。
   「文句はない。そうしたいのならそうすればいい。ただ、瑠璃は生きているから」
   目を瞑っていると身体が沈んでいく感覚がするも眠気まだ来ない。
   「まずは自分の心配をしたら? 今にも爆発しそうよ」
   あたしからの指摘にカンダタは項を擦る。
   カンダタと一体化している黒蝶はコントロールできないと蝶男は話していた。カンダタも自身が抱えている爆弾を持て余している状態だ。
   「俺は、別に。いつでも切り捨てればいい」
   「言われなくてもそうするわ。ご心配なく」
   唇が重くなってきた。思考が鈍くなる。
   「あたしは勝手に捨てる。だからカンダタも」
   鈍間な思考回路。それでも言葉を話す。
   「勝手に決めなさいよ。偽善やあたしに任せずに」
   思考が沼に沈もうとしていた。
   「道標がないのに」
   夢に落ちる間際、カンダタは呟く。
   「何を決めて歩けばいいんだ」
   あたしは微睡む夢の中へと落ちていった。



   目覚める瞬間の感覚に似ている。夢と現実の間に立ち、境界線が曖昧になった感覚。
   足が地につかない。宙に浮いた足で歩行の動作を繰り返す。そうしているうちにアーチ状のゲートが空間に浮かぶ。
   あたしは光を放つゲートを潜った。
   「ようこそ!お越し下さいました!」
   機嫌の良い金楽器の音楽と軽快な声が聴覚を刺激して、脳に伝達する。
   夏に近い晴天が全身に降り注ぎ、心地よい風が肌を撫でる。あたしが潜ったゲートの前ではウェルカムボードを持った若い女性がいた。
   「なんだ、ここは?」
   カンダタが困惑した声を発する。あたしの後ろにはカンダタもハクもいた。
   2人と一匹が見上げていたのは白亜の城。自信に満ちた態度で建っている。その威風はまさに夢の象徴とも言える佇まいだ。
   機嫌の良い音楽、大きな城、あたしたちを歓迎するスタッフ。西洋風の街並みが広がり、その奥では高く昇ったジェットコースターがレーンの上を走り去る。
   まるでそこは遊園地だった。
  「初めてのご来園ですか?」
   目前に立つ若い女性が接客スマイルであたしたちを見つめている。あたしは困惑していた。
「こちらはキャストから放浪者様へのプレゼントです!」
   そういって差し出してきたのはポップコーンと端末。
   「放浪者様?」
   頭が混乱していてもこの状況を飲み込もうと質問する。
   「夢園では現世で彷徨う哀れな魂をそう呼んでおります!放浪者の傷を癒し、居場所となるのがこの夢園です!」
   放浪者、哀れな魂、夢園、居場所。この並びが不吉な響きに聞こえてくる。
   「夢園は5つのエリアに分かれております」
   その後はキャストがエリアや施設とかの案内を話す。何度も復唱し、暗記したような台詞。どうでもいいので聞き流した。
   「なんだかおかしなとこに来たなぁ」
   ひょっこり現れたのは光弥だった。足元にはケイがいる。
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