糸と蜘蛛

犬若丸

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3章 死神が誘う遊園地

遊園地 9

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   飲食店は各エリアごとに配置されていて、食事とカフェを楽しむ喫茶店がいくつもあった。
   昼時と設定されているこの時間帯はどの店も混雑していた。屋内のカウンター席はもちろんのこと、日傘を差したラウンジでさえ人によってうめられている。
   あたしはラウンジに座る客たちを物色する。
   メニュー表を眺める老婆が1体のマネキンに話かけている。あの人がいいわね。
   あたしは大股で夫婦を装う老婆に近寄る。そして、持っていたメニュー表を一言の断りもなく奪い取る。
   「老いぼれがが食べれるものなんてないわよ」
   若者から老人に対しての横暴に老婆は目を丸くさせるもすぐに笑顔を浮かべる。
   「こんにちは。いい天気ね」
   老婆はあたしに好意を示して、あたしは老婆に悪寒を覚えた。
   「メニュー借りるわ」
   「えぇ、どうぞ」
   借りたメニューを見る。焼肉定食にお蕎麦セット。ラウンジのカフェに合わないメニューばかりね。
   その中でハクは唐揚げが気になるみたいだった。
   老婆を一瞥すると彼女は向かいのマネキンと談笑している。あたしはメニューを閉じて老婆に返す。
   「メニューありがとう」
   「どういたしまして」
   「尋ねてもいい?」
   「何かしら?」
   「その、マネキンじゃなくて、旦那、さん?」
   相手が男性かさえ、判断出来ない。憶測だけで当てる。
   老婆から否定的な反応は返ってこない。そのまま続ける。
   「いつから一緒なの?出会ったのは園内のどこ?」
   「おばあさんの惚気話を聞きたいの?照れちゃうわ」
   恥ずかしそうにそれでいて嬉しそうにするから、質問を間違えたと後悔する。
   「やだ、あなたったら。面白いんだから」
   老婆が声を弾ませた。マネキンに向かって満開の笑顔を見せて2人の世界に入る。
   口のないマネキンが冗談でも言ったのかしら。
   マネキンを指摘しようとしたけれどやめた。マネキンを人間だと意識しているのならいくら言っても受け入れてはくれない。
   あたしは踵を返してカンダタたちの元へと戻る。
   「光弥の言っていた通りね。あいつら不快感がなくなってる」
   「見ていて異様だな。顔もない人形に対して疑問視していない」
   ラウンジの光景にカンダタが畏怖を込めて言った。
   子供のマネキンにお粥を食べさせている両親。口のない顔にスプーンを押し付けて「口周りが汚れちゃったね」と母親がおかしそうに、父親は「仕方がない子だな」と笑いながら顔を拭く。
   歪で幸福なテーブル席がいくつも点在している。マネキンの光景を不思議に思わないらしい。
   「そっちは?何か掴めた?」
   あたしの問いに2人は首を振る。
   「プログラムされたやつって思考がバグるから会話が成立しないんだよな」
   言い訳がましい光弥の弁解にあたしは溜息を吐く。
   手掛かりがあるかもしれないと飲食店に来たのに収穫なしだなんて。
   あたしたちの間で沈黙が降りた。口が閉じた3人の思考は次の手がかりになるものを探す。
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