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3章 死神が誘う遊園地
夢みる幸福 17
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家族3人が揃った旅行は一度しかない。それが2泊3日の東京ディズニーリゾート。何も知らずに何も考えなかったあたしは馬鹿な笑顔を浮かべて、ミルクチョコレートのポップコーンを頬張っていた。
思い出す度に幼い自分の首を絞めては幸福だった記憶を消そうとしていた。
何度、首を絞めても幼い記憶が次々と思い出される。幼い思い出が父に会えると歓喜している。
歌と踊りのショーはエッフェル塔前で行われるらしい。愉快で幸福なイベントに誘惑された人々がナイトエリアに訪れて、エッフェル塔の前に集まる。
あたしも同じ場所に向かっていた。人が多いところに行けば父に会える確率も上がると考えた。
パリを連想させる街並みを進みながら周囲を見渡す。どこもかしこも日本人ばかりね。父の姿もない。
エッフェル塔前に来てもその影はなかった。
シャン・ド・マルスらしき公園の芝生に仮設の観覧席が設置されている。観覧席は段数も多い上にいくつも並んでいる。キャストは一人でも座わって楽しめるよう誘導して、人と人の間を詰める。
あたしは誘導に逆らって観覧席を見て回る。父の姿はなかった。
次第に観覧席は埋まり、後は立ってても観たいと要望をする人たちが一番見やすい場所に群がる。そうして密集された所にも父はいなかった。
探しているうちに開始を告げる花火が響き渡った。
落ち着いていたジャズの曲はなくなった。軽快に弾む金楽器と弦楽器のハーモニーに観客は歓声を上げて、ダンサーたちがそれに応えて登場する。
ここにはいないみたいね。
あたしは諦めてショーに背を向ける。人混みの中を掻き分けて人の群れから抜けようとする。
人の流れに逆らって進行するのは困難で、ストレスも溜まる。少ない隙間を探して、そこに無理矢理体をねじ込む動作を繰り返す。
その中で一際目立つ金髪の女性がいた。日本人しかいないこの密集に染めた色をしていない金髪の頭。
あたしは急遽、方向を変えてその人の場所へと向かう。人が壁となって遮られた視界。認識できるのは手入れされた綺麗な金髪だけ。
それだけでもあの人だとわかってしまったのは、未だに未練がある確固な証であった。
「ママ!」
BGMに合わせてダンサーが合いの手と掛け声で歓声を促す。
自分の声さえも聞こえないくらいの雑踏の中、あたしは声を張り上げて主張し、その人の手を掴む。
ショーに心を奪われていた母は掴んだあたしに怪訝な表情をする。
「どちら様?」
嫌味や嫌悪でもなく、純粋な疑問をあたしに投げる。
けれど、目の前にいるのは間違いなく母だ。艶やかな金髪と笑みを繕う表情。深い青色の瞳には感情がなかった。
「誰だ?」
母の隣にいた男が機嫌悪そうにあたしを見る。瞬間、忘れていたはずの顔を思い出す。6年ぶりの父がいた。
あたしは何を喋ればいいのかわからなくなっていた。父もまた同じように言葉を失ってあたしを凝視する。
「まさか、会いにきたのか」
父が声を発する。あたしは罵倒が来るだろうと身を構えた。
「来てくれたのか!」
予想外の反応だった。父は期待以上のものを与えられた子供のような煌めいた瞳で破顔し、あたしの肩を抱く。
「良かった!これでようやく!ようやく!」
これほど喜んだ父の姿をあたしは知らない。思い出さえそんなものはなかった。
ただの再会ではないのは確かで、感動的かどうかはわからない。
そうした家族のひと幕は関係ないと言う風にショーは進行する。
父は興奮した胸に手を当て、口を閉ざして熱を冷ましてからまた喋る。
「積もる話もあるだろう。一先ずここを離れよう」
母と娘の手を取った父は嬉々として人混みを無理矢理押しのけて歩く。あたしは混乱を極めていた。
思い出す度に幼い自分の首を絞めては幸福だった記憶を消そうとしていた。
何度、首を絞めても幼い記憶が次々と思い出される。幼い思い出が父に会えると歓喜している。
歌と踊りのショーはエッフェル塔前で行われるらしい。愉快で幸福なイベントに誘惑された人々がナイトエリアに訪れて、エッフェル塔の前に集まる。
あたしも同じ場所に向かっていた。人が多いところに行けば父に会える確率も上がると考えた。
パリを連想させる街並みを進みながら周囲を見渡す。どこもかしこも日本人ばかりね。父の姿もない。
エッフェル塔前に来てもその影はなかった。
シャン・ド・マルスらしき公園の芝生に仮設の観覧席が設置されている。観覧席は段数も多い上にいくつも並んでいる。キャストは一人でも座わって楽しめるよう誘導して、人と人の間を詰める。
あたしは誘導に逆らって観覧席を見て回る。父の姿はなかった。
次第に観覧席は埋まり、後は立ってても観たいと要望をする人たちが一番見やすい場所に群がる。そうして密集された所にも父はいなかった。
探しているうちに開始を告げる花火が響き渡った。
落ち着いていたジャズの曲はなくなった。軽快に弾む金楽器と弦楽器のハーモニーに観客は歓声を上げて、ダンサーたちがそれに応えて登場する。
ここにはいないみたいね。
あたしは諦めてショーに背を向ける。人混みの中を掻き分けて人の群れから抜けようとする。
人の流れに逆らって進行するのは困難で、ストレスも溜まる。少ない隙間を探して、そこに無理矢理体をねじ込む動作を繰り返す。
その中で一際目立つ金髪の女性がいた。日本人しかいないこの密集に染めた色をしていない金髪の頭。
あたしは急遽、方向を変えてその人の場所へと向かう。人が壁となって遮られた視界。認識できるのは手入れされた綺麗な金髪だけ。
それだけでもあの人だとわかってしまったのは、未だに未練がある確固な証であった。
「ママ!」
BGMに合わせてダンサーが合いの手と掛け声で歓声を促す。
自分の声さえも聞こえないくらいの雑踏の中、あたしは声を張り上げて主張し、その人の手を掴む。
ショーに心を奪われていた母は掴んだあたしに怪訝な表情をする。
「どちら様?」
嫌味や嫌悪でもなく、純粋な疑問をあたしに投げる。
けれど、目の前にいるのは間違いなく母だ。艶やかな金髪と笑みを繕う表情。深い青色の瞳には感情がなかった。
「誰だ?」
母の隣にいた男が機嫌悪そうにあたしを見る。瞬間、忘れていたはずの顔を思い出す。6年ぶりの父がいた。
あたしは何を喋ればいいのかわからなくなっていた。父もまた同じように言葉を失ってあたしを凝視する。
「まさか、会いにきたのか」
父が声を発する。あたしは罵倒が来るだろうと身を構えた。
「来てくれたのか!」
予想外の反応だった。父は期待以上のものを与えられた子供のような煌めいた瞳で破顔し、あたしの肩を抱く。
「良かった!これでようやく!ようやく!」
これほど喜んだ父の姿をあたしは知らない。思い出さえそんなものはなかった。
ただの再会ではないのは確かで、感動的かどうかはわからない。
そうした家族のひと幕は関係ないと言う風にショーは進行する。
父は興奮した胸に手を当て、口を閉ざして熱を冷ましてからまた喋る。
「積もる話もあるだろう。一先ずここを離れよう」
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