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3章 死神が誘う遊園地
痛みの共鳴 4
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再び目蓋を上げると硬い寝台の上で横たわっている。硬い石の感触がする。
視界はそこに広がっているのに意識だけが遠くにいるみたい。
なんとなく寝返りをうつ。狭い寝台では身体の角度を変えただけで転げ落ちた。
腕や膝を強打するも意識はまだ遠い。強打した感覚も朧げではっきりとしない。
「インストールの途中だぞ」
誰かの声がする。とても近くに感じる。
「エマ!」
別の人物が駆け寄ってくる。
「どうなってる!」
「苦情言われても」
誰かの手によって上半身を起こされるも全身の力が抜けて頭が項垂れる。
「目が虚ろだ」
「脳が損傷したかも。話しかけてみて」
2人の声は近くから聞こえた。聞こえるだけで脳が言葉として処理してくれない。
「エマ?」
「え、ま?」
喉と舌が意志と関係なく勝手に復唱する。
「わたしはえま」
刷り込まれたプログラムが機械的な声を出させる。
「そうかそうか」
破顔した顔が大きく頷く。それから「怪我してないか」「会いたかった」などと言葉が並ぶ。
どの言葉にも反応できなかった。朧げな意識はまだ覚醒していない。
「オキテ」
たった3文字の弱々しい声。なのに、どの音よりもはっきりと聞こえ、脳はそれを言葉として捉えた。
顔を上げると白い鬼がこちらを見つめていた。
「エマ?なぜ何も言ってこない?」
虚空を見上げ、いくら話しかけても反応しない。破顔していた父が急に不安になった。
あたしは目線を動かし、目を父と合わせる。
虚ろな瞳は消え、意志が灯った青い瞳で見つめる。
笑顔を向けたわけでもないのに父は安心し、綻びる。
思い違いをしている父の手首に白糸を括りつけた。一瞬の動作に父が怪訝に眉を寄せる。
「ハク!」
あたしからの合図を待っていた白い鬼は怒りの金切り声を上げ、父をビンタする。鬼のビンタは人間のそれとレベルが違う。その上、溜まりに溜まった激情が一気に溢れた。
鬼の腕力は父を壁際まで飛ばす。
父からしてみれば何もない空間から見えない腕が伸びで、何もできないまま飛ばされたように思えるでしょうね。
先程の衝撃で父の手から十手が滑り落ちて、あたしの前で回転する。
あたしは十手を拾った。
朧げな意識が覚醒すると遮断していた痛覚が目覚める。腕と膝が青痣の痛みを訴える。これは寝台から落ちたときにできたもの。そして、こめかみあたりに何かが刺さっている。
異物が頭蓋骨を貫いて侵入しているとたくさんの神経が信号を送り、気が狂いそうになる感覚に顔を歪める。
こめかみに手を当てるとプラグが頭に刺してある。コードに触れただけで内部に侵入したプラグが揺れ、痛みで呻く。
空気を一杯に吸い込み、息を止めた瞬間にプラグを引き抜く。
覚悟を決めて抜いても、激痛は想像以上のもので短い悲鳴が口から溢れた。
頭の穴から止め処なく血が流れては頬を伝い、唇の内部に入る。舌に粘りついて鉄の味がする。激痛は余韻となって残り、あたしの頭を打ち続ける。
痛みに負けるなと歯を食いしばる。奥から歯軋りの音がする。
床を踏み、立ち上がろうとしても膝が勝手に震える。立てないと身体が訴えている。
全身を支配する痛みが、あたしを襲う現実が、無理だと訴える。
だとしても、それが正論だとしても、あたしは立つ。
そうよ。今まずっと2本の脚で立ってきたのよ。母に裏切られても、父に拒絶されても、あたしの脚は立っていた。
視界はそこに広がっているのに意識だけが遠くにいるみたい。
なんとなく寝返りをうつ。狭い寝台では身体の角度を変えただけで転げ落ちた。
腕や膝を強打するも意識はまだ遠い。強打した感覚も朧げではっきりとしない。
「インストールの途中だぞ」
誰かの声がする。とても近くに感じる。
「エマ!」
別の人物が駆け寄ってくる。
「どうなってる!」
「苦情言われても」
誰かの手によって上半身を起こされるも全身の力が抜けて頭が項垂れる。
「目が虚ろだ」
「脳が損傷したかも。話しかけてみて」
2人の声は近くから聞こえた。聞こえるだけで脳が言葉として処理してくれない。
「エマ?」
「え、ま?」
喉と舌が意志と関係なく勝手に復唱する。
「わたしはえま」
刷り込まれたプログラムが機械的な声を出させる。
「そうかそうか」
破顔した顔が大きく頷く。それから「怪我してないか」「会いたかった」などと言葉が並ぶ。
どの言葉にも反応できなかった。朧げな意識はまだ覚醒していない。
「オキテ」
たった3文字の弱々しい声。なのに、どの音よりもはっきりと聞こえ、脳はそれを言葉として捉えた。
顔を上げると白い鬼がこちらを見つめていた。
「エマ?なぜ何も言ってこない?」
虚空を見上げ、いくら話しかけても反応しない。破顔していた父が急に不安になった。
あたしは目線を動かし、目を父と合わせる。
虚ろな瞳は消え、意志が灯った青い瞳で見つめる。
笑顔を向けたわけでもないのに父は安心し、綻びる。
思い違いをしている父の手首に白糸を括りつけた。一瞬の動作に父が怪訝に眉を寄せる。
「ハク!」
あたしからの合図を待っていた白い鬼は怒りの金切り声を上げ、父をビンタする。鬼のビンタは人間のそれとレベルが違う。その上、溜まりに溜まった激情が一気に溢れた。
鬼の腕力は父を壁際まで飛ばす。
父からしてみれば何もない空間から見えない腕が伸びで、何もできないまま飛ばされたように思えるでしょうね。
先程の衝撃で父の手から十手が滑り落ちて、あたしの前で回転する。
あたしは十手を拾った。
朧げな意識が覚醒すると遮断していた痛覚が目覚める。腕と膝が青痣の痛みを訴える。これは寝台から落ちたときにできたもの。そして、こめかみあたりに何かが刺さっている。
異物が頭蓋骨を貫いて侵入しているとたくさんの神経が信号を送り、気が狂いそうになる感覚に顔を歪める。
こめかみに手を当てるとプラグが頭に刺してある。コードに触れただけで内部に侵入したプラグが揺れ、痛みで呻く。
空気を一杯に吸い込み、息を止めた瞬間にプラグを引き抜く。
覚悟を決めて抜いても、激痛は想像以上のもので短い悲鳴が口から溢れた。
頭の穴から止め処なく血が流れては頬を伝い、唇の内部に入る。舌に粘りついて鉄の味がする。激痛は余韻となって残り、あたしの頭を打ち続ける。
痛みに負けるなと歯を食いしばる。奥から歯軋りの音がする。
床を踏み、立ち上がろうとしても膝が勝手に震える。立てないと身体が訴えている。
全身を支配する痛みが、あたしを襲う現実が、無理だと訴える。
だとしても、それが正論だとしても、あたしは立つ。
そうよ。今まずっと2本の脚で立ってきたのよ。母に裏切られても、父に拒絶されても、あたしの脚は立っていた。
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